671話
ということで、ニコルが信頼する執事のジェリエルに連れられてコウは貴族街にある裏路地へ訪れた訳なのだが、以前よりもガラの悪そうなゴロツキは見当たらず、何だか裏路地の雰囲気が良くなっている様な気がしないでもなかった。
もしかすると掃除なることをしたため、そのような者達が一掃され、裏路地の雰囲気が良くなったのかもしれない。
ともかく、今のところガラの悪そうなゴロツキなどから絡まれそうな雰囲気はないので、神経を削りながら貴族街の裏路地を歩く必要はないだろうか。
そしてそのまま雰囲気が良くなった貴族街の路地裏を歩き続けると、ジェリエルはそれなりに大きな家の前で足を止めたため、コウも同じ様に立ち止まる。
「ここなのか?」
「えぇコウ様が探されている兄弟の家となります」
ふむ...何というかあの2人が生活するにしては良さげな家に住んでいると思ったが、きっと裏路地の掃除を手伝う代わりにニコルからの配慮として悪くない生活をさせてもらっているのかもしれない。
ということで、コウは早速ではあるが、玄関扉に対してコンコンとノックを複数回行うと、中から聞きえ覚えのある男の声とドスドスとした足音が聞こえてきた。
「おうおう!領主に認められてここらを締めてる狂犬兄弟に用があんのは何処のどいつだぁ!」
そして以前よりも更に気が大きくなったような態度で大きな音と共に扉を開けられたのだが、兄であるバリィは目の前に現れたコウの姿を見た瞬間、思考がフリーズしたのか目の前で固まってしまった。
「おい。人の顔を見るなり固まるな」
「はっ...!まだ何もから勘弁してくれ!」
そのため、コウはバリィの顔の前で手を振りながら声を掛けて何とか意識を元に戻させると、今度はその場で素早く見事な土下座を繰り出してくる。
どうやら以前、教育したことがまだ身に染み付いているらしく、コウの顔を見て反射的に土下座をしてしまったのだろう。
まぁいちいち歯向かってくるよりかは従順な方が個人的には扱いやすいので、ダニィとバリィの2人はこれからも是非このような感じのままでいて欲しいものである。
「兄貴どうしたんだ...って...!!!」
「お前らって変なやつらだな」
そして今度は弟であるダニィが兄のバリィをどうしたのかと心配しつつ、後ろからひょっこりと顔を出してきたのだが、コウの顔を見るや否や兄と同じように滑り込みながら土下座をすぐさま繰り出してくる。
「もう良いから顔を上げろって。お前らをどうこうしに来た訳じゃないんだから」
「「へっ...?じゃあ何でここに?」」
ただ土下座のままでいられても、話したいことも話せないということで、コウは何もしないと言いながら顔を上げる様に促すと、ダニィとバリィの2人は頭の上にクエスチョンマークを浮かべつつ、どうしてここに訪れたのかをハモらせながら聞いてきた。
「お前らに兄弟に頼み事があってな」
「ただの頼み事か...ふぅ...焦るぜ...それだったら何でも俺様達に言ってくれや」
「お前らが前に縄張りとしてた場所の治安が最近悪くてな。面倒だからゴロツキ共へ言うこと聞くように教育して欲しいんだ」
「縄張りにしてたところ...あぁそれくらいなら問題ないぜ」
そのため、コウの話を2人は聞くと、自身達が以前縄張りとしていた場所というのはしっかりと記憶に残っているようで、ゴロツキ共へ言うことを聞くように再教育して欲しいと伝えると、それくらいであれば特に問題ないとのこと。
「なら話は早いな。今から行くから付いてきてくれ」
「すぐに準備するぜ!ダニィはここで待ってな!」
「兄貴の帰りを待ってるっす!」
ということで、今度は兄であるバリィに出掛ける準備をすぐにさせると、コウは治安が悪くなってしまっている場所へ引き連れて向かうこととするのであった...。
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