637話
(なんか強そうな人だな)
こちらに傭兵のような男が近づくにつれて詳しい見た目が分かってきたのだが、年齢としては大体40代ぐらいで、白髪混じりな短髪の頭を片手でぽりぽりと掻きながら気怠げそうな雰囲気を醸し出していた。
ただそんな男は決して隙を見せているわけでも無いようで、もう片方の手は必ず腰に添えてある無骨な剣の柄頭部分に置いていたりする。
(なんでこんな崩壊した街にいるんだ...?いやまぁ俺もそう思われてるかもしれないけども...)
それにしても何故、こんな崩壊した街に目の前の男が彷徨いているのかさっぱり分からないが、自身も相手からは同じようなことを思われているかもしれない。
「あー...坊主。お前はこの街の生き残りか?」
そしてそんな男に近づいていくと、コウは声を掛けられることとなるのだが、どうやらこの崩壊してしまった街の生き残りだと思われているようだ。
まぁ確かにこんなところで子供のような見た目をしたコウが彷徨いていれば、そう思われても仕方ない。
「生き残り?よく分からんけど違うぞ。ただの冒険者だ」
「坊主がか?本当に冒険者なのか?」
「本当だって...ほらこれがギルドカード」
そのため、コウは自身が冒険者だと身分を明かすと、目の前の男は疑いの眼差しでこちらに視線を向けてきたため、その疑念を晴らそうと、収納の指輪からギルドカードを取り出して見せつけていく。
「コウって名前なのか...ってBランクだぁ!?冒険者ギルドも人手不足なのかねぇ...」
そんな目の前の男に自身のギルドカードを見せつけると、驚きの表情を浮かべていたのだが、そういった反応は何とも久しぶりのような気がしないでもない。
「おっさんは何処の誰なんだ?」
「俺か?俺はドールって名前でコウと同じ冒険者だな」
そして今度はコウが質問を返すと、どうやら自身と同じく冒険者のようで、名前はドールというらしい。
「ふぅん...何でドールさんはここにいるんだ?」
「そりゃこの街のことを調査して欲しいってお偉いさんから指名依頼を受けたからな」
それにしても何故こんな崩壊した街へドールは何しに来たのかを聞いてみると、どこぞのお偉いさんからこの街について調べて欲しいと指名依頼を受けたからとのこと。
しかし指名依頼を受けているということはAランク以上の冒険者ということになるため、それなりに実力があるのが何となくではあるが分かる。
「調査して街が崩壊した原因は何か分かったのか?」
「そうさなぁ...ここから近くの街に避難して来た人達に話を聞いたがどうやら魔族が現れたみたいだな」
また調査結果についてはどうやら近くの街へ逃げた者が多くいたようで、話を聞いてみると、魔族が突然どこからともなく現れ、この街を崩壊させたらしい。
ちなみに何となくではあるが、その魔族には心当たりがあり、もしかするとあの小高い山の屋敷を拠点としているレヴィーエルとアインの2人ではないか?と頭の中で思い浮かんでしまう。
「魔族か...あぁそういえばもう1つ聞きたいことがあった。メークタリアってここから遠かったりする?」
「メークタリア?ここからなら馬車で大体半刻程ってところか?」
「そうなのか...少し遠いけどまだマシか...」
そしてもう1つ知りたいことであったメークタリアまではここからどれくらいの距離があるのかについてをドールに聞いてみると、どうやら馬車で走らせて半刻程の距離らしい。
とすれば、今から自身で走ったとしてもメークタリアへの到着するのはそれなりに時間が掛かってしまうだろうか。
まぁ幸いにも絶望的な距離ではないので、そこまで悲観するようなことではないのだが、それでも面倒なことには変わりない。
「今度は俺の番だな。どうしてコウはこの街にいるんだ?」
「あー...実は...」
そしてドールから聞かれたことについて詳しい話をしようとすると、背後にある崩壊しかけていた城壁が突然、がらがらと音を立てながら崩れ落ちる音が聞こえ、振り返るとそこには魔族であるアインが立っており、こちらにゆっくりと歩きながら向かってくるのであった...。
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次回の更新予定日は多分12月7日になりますのでよろしくお願いします。




