629話
「ロジーは獣人なんだよな?」
「そうにゃ。寧ろそれ以外に何の種族に見えるのにゃ?」
「いや魔力を扱える獣人は珍しいなって」
「よく言われるにゃ。まぁ魔力がある獣人は少にゃいから気持ちは分からなくもにゃいにゃ」
実際のところ獣人族は魔力を持つ者が少ない種族であるため、ロジーのように魔力を扱うことが出来る獣人族は珍しいと言ってもいいだろうか。
そんな会話を交わしていると、ロジーは少しだけ集中しながら魔法陣が描かれたランチョンマットのようなものに魔力を注ぎ込んでいく。
するとどうだ。コウが身に着けていた黒いチョーカーの見た目をした魔道具からは文字が徐々に浮かび上がってその場でふわふわと漂い出したではないか。
それにしても黒いチョーカーから浮かび上がってきた文字については見たこともない文字のため、いったいその文字が何の意味を持っているのかさっぱり分からない。
「ロジーさんの目が光ってます~」
そして浮かび上がっていた文字に気を取られていると、ライラが驚きの声を上げたので、何かと思い、今度はロジーの目を見てみると、瑠璃色のように目がキラキラと光っていた。
「まるで魔眼みたいだな...」
「よく知ってるにゃ。これはどんにゃ文字でも分かる便利な魔眼だにゃ」
そういえば以前、ロウェルという盗賊の頭が魔眼を持っていたのを見たことがあるコウは瞳の色が同じということで、まるで魔眼みたいだという感想を述べると、どうやらロジーの目は本物の魔眼であった。
ちなみにロジーが持っている魔眼というのはどんな文字でも解読出来るような便利なもののようで、黒いチョーカーから浮かび上がってきた文字についても難なく読めるとのこと。
そのため、ロジーは魔道具の構造を全て理解出来るということもあって、何処が壊れてて何処を直せば良いのかが分かるみたいである。
そういった分野はエルフなどが詳しいと思っていたのだが、やはりどの種族だとしても優秀な人物は現れるのだろう。
「まぁもう少し魔道具を直すのに時間が掛るから好きに待ってるにゃ」
そしてロジーからは魔道具を直すのには時間が少し掛かるということもあり、好きに待っていて欲しいと言われたため、ライラ達は魔道具の修理に興味が無いのか、棚に置いてある魔道具達を再び見始めた。
ただコウは棚に置かれている魔道具達よりも、ロジーが修理する作業に興味があったため、机に肘をつきなが見ていることにした。
またロジーはというと、集中しているのかコウのこと一切気にせず、宙に浮かぶ文字を1つ1つ爪の先端で突いて動かし、緻密な作業をしていたりする。
そんな緻密な作業を暫くの間、コウはぼんやり見ていると、急にロジーが手を止め、魔法陣が描かれたランチョンマットのようなものに魔力を注ぐのをやめたではないか。
「どうしたんだ?休憩か?」
「にゃ?魔道具が直ったから終わっただけにゃ。これはコウに返すにゃ」
そのため、コウは休憩でもするのかと聞いてみると、どうやら魔道具の修理が完了したとのことであり、そのまま黒いチョーカーを手渡されることとなる。
「まじか...何処か直ったのかよく分からんけどありがとな」
「気にするにゃ。僕が直したかっただけだにゃ」
ということで、ロジーに手渡された黒いチョーカーを受け取りながらお礼を伝えたが、それにしても見た目に変化が一切無いので、何処が直ったのかさっぱり分からない。
まぁ直ったのであるならば、もう首に付けても問題はないと思われるため、とりあえずコウは白いチョーカーと付け替えることにするのであった...。
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