621話
「あー...別で聞きたいことがあるんだがいいか?」
「...何でしょうか?」
「いや何処から来たのかなって」
「私は王都から商売として来ました...」
ということで、まずは目の前で落ち込んでいる恰幅の良い商人に質問として何処からこの魔導国メークタリアへ来たのかについて聞くことにした。
そして返ってきた返答はどうやら商売として一稼ぎするためにコウ達と同じ王都からここまで来たとのこと。
とすれば、コウ達が馬車旅で進んだ道を同じように通ってメークタリアへ来ている筈なので、もしかすると目の前の商人が本当に道に魔道具が入った木箱を落としてしまった人物なのかもしれない。
「俺達と同じ王都から来たのか。ちなみに落とした荷物ってどんな特徴なんだ?」
とはいえ、まだ本当に目の前の商人が魔道具が入った木箱の持ち主だという確証がないため、今度は落としてしまったという荷物の特徴について詳しく聞いていくことにした。
「荷物は緩衝材の大量の布とランタンの魔道具などが木箱に入ってるものでして...」
そんな商人からは大量の布を緩衝材として中に詰め、ランタンなどの様々な魔道具が入った木箱だと、事細かに説明してくれた。
そして話を聞き終わると、コウが回収した木箱は話してくれた内容と大体一致するものであり、ここまでくれば木箱を落としたのは目の前の人物といっても良いだろうか。
それにしても運が良いのか悪いのか、なんとも分からない商人であるが、今回ばかりは運が良いといえるかもしれない。
「あんた運がいいな。その荷物なら俺達が回収しておいたぞ」
「へ...?」
ということで、コウは回収していた木箱を収納の指輪の中から取り出し、目の前に次々と出していくと、商人は目を丸くしながら鳩が豆鉄砲を食らったかのような表情を浮かべた。
それはそうだろう。落とした荷物がまさか目の前へ急に現れることなど基本的にはあまりないのだから。
「もしかして...それは私が落とした似ていますが...?」
「さぁ?でも話を聞く限りそうだとは思うけど確認してくれ」
「確認させて頂きます...!」
そしてようやく今の状況を商人は把握したようで、コウが収納の指輪から取り出した木箱の蓋を取り、その場で中身を隅々まで確認をし出す。
「間違いありません...これは私の荷物です...!拾って頂き本当に有難う御座います...!」
「まぁ次から気を付けると良いぞ」
「勿論です!あぁそうだ!もし宜しければお礼をさせて下さりませんか!?」
そして全ての木箱の確認をし終えた商人から涙を目から流しながらその場で感謝されることとなり、どうやら木箱を回収してくれたコウに何かしらのお礼をしてくれるらしい。
「お礼?別に良いけどなぁ...ついでに拾っただけだし...」
「コウさん良いじゃないですか〜断るのは失礼ですよ〜」
「そうですよ。好意は受け取った方がいいと思います」
「キュイ!」
「まぁそうか...じゃあ何をお礼してくれるんだ?」
コウ達が乗っていた馬車が通れなかったため、ついでとして回収しただけであり、別に何かしらのお礼は必要ないと思っていたのだが、折角お礼をしてくれるのに断るのは失礼とライラ達から言われたため、どんなお礼をしてくれるのかと商人に聞いていく。
「先程まで宿をお探しでしたよね?もし宜しければここのお代を払わさせて欲しいのですがそれでもよろしいでしょうか?」
「本当ならこっちとしてもありがたい話だけど良いのか?」
「問題御座いませんよ。では荷物を馬車に積み込みますので少々お待ち下さい!」
荷物のお礼に関してはどうやら背後にある宿の宿代を払ってくれるとのことであり、コウ達としては無駄にお金を使う必要がなくなるため、ありがたい話といえるだろうか。
そして荷物を馬車へ積み込み終わるまで待って欲しいと商人から伝えられたため、少しの間、コウ達はその場は待つこととなるのであった...。
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