620話
さて...通り道に転がっていた木箱を回収してからというもの特に何事もなく、馬車旅は進んでいき、1日目と2日目は楽しい旅を謳歌することか出来た。
そんなこんなで到着する日であった3日目となり、コウ達は予定通り、メークタリアへと辿り着いた訳なのだが、街中へ入るための城門へ続く道には中へ入りたい人々が多いのか、長蛇の列が作られていたりする。
ただその長蛇の列が作られていたのは商人専用入口であり、並んでいる商人達は今回行われる魔道具の祭典でひと稼ぎをしにきたのだろう。
勿論、冒険者や一般の人達も一般入口でちらほら並んでいたりするのだが、流石にお金の匂いを嗅ぎつけてきた商人達よりは並んでいる人は少なかった。
まぁ商人専用入口でどれだけ長蛇の列が出来てようともコウ達にとってはあまり関係はないことなので、そのまま馬車は並んでいる商人達の横を通り過ぎて行き、特別入口へ向かって走っていく。
そんな特別入口に到着すると、イザベルが窓から門兵にAランクの冒険者と記載されたギルドカードを見せつけると、何かしらを確認されることなく、すんなりとメークタリアの街中へ入ることが出来た。
そして馬車は広場の一角にある停車スペースに止まったということで、コウ達はそのまま降りると、長時間乗っていたことによって凝り固まっていた身体を解していく。
「次は宿を取らないといけないですね〜」
「キュ!」
「暫くは滞在しますからね」
「あぁそうだな。空いてる宿が見つかると良いんだが...」
とりあえず身体が解し終わったわけなのだが、これからしないといけないことといえば、数日間メークタリアに滞在するために宿を取る必要があるだろうか。
ただメークタリアの街中は祭典があるためか、多くの人で溢れており、もしかすると宿を探すのは少し苦労するかも知れない。
まぁ祭典の前日にメークタリアへ到着して空いている宿を探すよりかはマシだとは思うのだが、それでも残っている宿は少ないと思われる。
「ここにいてもしょうがないので探しに行きませんか?」
「そうだな。とりあえず宿を探しに行くか」
「キュ!」
「良い宿が見つかるといいですね〜」
ということで到着して間もないが、コウ達は街中を歩きつつ、少し値が張りそうな宿を転々として部屋が取れないか確認していくことにしたのだが、どこもかしこも満室ということで中々に取ることが出来なかった。
そして再び次の宿に向かっていると1軒の宿の入口に馬車が止まっており、その馬車の隣で恰幅の良い男性が膝から崩れ落ち項垂れているのが見えた。
「なんか凄い落ち込んでる人がいるな」
「どうしたんですかね~?」
「キュ?」
「私達と同様に宿を探しているのでしょうか?」
とりあえずその宿に入る前に項垂れている恰幅の良い男性へ部屋が空いているのかどうかについて聞けばいいだろうと思ったコウは声を掛けることにし、そのまま近づいていく。
「あー...落ち込んでるところ悪いけどやっぱこの宿も部屋が取れないのか?」
「あぁ...こんなところですみません...実は荷物を落としてしまいまして...ちなみにここの宿はまだ部屋は空いているようですよ...」
「おぉ宿の部屋は空いてるのか!って...荷物?」
そして宿が取れないのかについて聞いてみると、その恰幅の良い男性から返ってきた言葉は荷物を落としたことと、ここの宿はまだ部屋が空いているということであった。
ようやく宿が取れることに歓喜したのも束の間、荷物といえば、コウ達が王都からメークタリアに向かって旅立った初日に拾った魔道具の入っている木箱のことについてふと思い出した。
(とりあえずこの人の物か分からないけど質問してみるか...)
そのため、コウは収納の指輪の中に回収した木箱が目の前にいる恰幅の良い男性の物なのかを確認するために質問形式で聞いていくことにするのであった...。
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