616話
多くの団員達とすれ違いながら広々とした敷地内を歩き、コウ達は白薔薇騎士団が拠点としている屋敷に到着した訳なのだが、いつの間にか相棒であるフェニとは逸れてしまった。
もしかすると今まですれ違った多くの団員達の誰かに付いていき、屋敷の敷地内の何処かで相手してもらっているのかもしれない。
まぁ満足すれば、いずれ帰ってくる筈なので、このまま放置しておいたとしても問題はないだろうか。
「あっエリスさんです~」
「ん?本当だな」
そして屋敷の花壇付近に腰を屈めながら水やりをしているエリスをライラが発見したので、コウ達は声を掛けるため、近づいていくと、どうやら気付いたのか水やりの手を止めて立ち上がりだす。
「今日はいったい何しに来たのかしら?」
「こんにちは~イザベルさんとお茶をしに来ました~」
「えぇこんにちは。あらそうなの?団長だったらいつもの部屋にいるわ」
「急な訪問だけど良かったのか?」
「ん~団長も今は仕事は抱えてないみたいだし問題はないと思うわよ?」
挨拶も程々に済ませ、今回の訪れた目的と急に訪問して問題はないのかをエリスに聞いてみると、どうやらイザベルは今のところ仕事は抱えておらず、ここ最近は自室で暇そうにしているらしい。
だからこそあの様な手紙を自身達に送ってきたのだろうか?
ともあれ急な訪問でも特に問題はなさそうなので、とりあえず今からイザベルの下へ向かってもいいだろうか。
「ふぅん...そうなのか。じゃあお邪魔させてもらおうかな?」
「えぇ私はまだ水やりがあるから後でお邪魔させてもらうわね」
ということで、話もある程度に済ませ、コウ達はそのまま屋敷の中に入っていくと、階段を上り、よく知っているイザベルの部屋の前へと立つ。
「イザベルいるかー?」
「どうぞー入っても大丈夫ですよ」
そして部屋の扉を何度かコンコンとノックしつつ声を掛けると、部屋の中からイザベルの入っても良いという気怠げそうな返事が返ってきたため、ドアノブを捻りながら扉を開けていく。
するとそこには背もたれ付きの椅子にぐっと腰を掛けてダラダラとしたイザベルの姿があり、机の上には一切の書類がないので、何となく暇だということが見て分かる。
「久しぶりだな。元気だったか?」
「お久しぶりです~!お茶をしに来ましたよ~!」
「皆さんが元気そうでなによりです。とりあえず紅茶を淹れますので座って下さい」
そのまま部屋に入らず、開いた扉の前に立ちながら話をしていると、姿勢を正したイザベルから紅茶を淹れるから椅子に座って待っててくれと言われたので、コウ達は部屋の中に入り、見るからに高級そうなソファーに座っていくことにした。
そして暫くの間、座って待っていると、紅茶の良い香りが部屋の中にふわりと漂い始め、イザベルは淹れたての紅茶が入ったティーカップを自身達の目の前にある机の上に置きつつ、お供として幾つかのクッキーも一緒に置いてくれた。
こうしてある程度の準備が出来たということで、コウ達のお茶会が始まることとなるのであった...。
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