610話
「いや~こんなに上手くいくとは思ってもいなかったすね~」
「こんなもので俺達を閉じ込めたと思うな!」
目の前で余裕そうに笑みを浮かべているアインに対してコウは啖呵を切ると、手に持っていたサンクチュアリで自身を閉じ込めている水の膜を何度か切り付けて切り裂くも、瞬間的に切り裂かれた水の膜は元通りに直ってしまう。
そして切り裂くのが無理ならば、体当たりしてみたり、氷魔法で凍らしてみたりしてあれやこれや試し、脱出をしようとしたのだが、どうしても抜け出すことが出来なかった。
「無理っすよ〜ここから出るのは」
そんなコウ達の姿を側から見ていたアインはカラカラと愉快そうに笑いつつ、脱出は不可能だと言い放ちながら指をぱちんと一度だけ鳴らす。
「足元から水!?」
するといきなり大量の水が足元から湧き出し始め、コウの動きを阻害するように腰辺りまで一気に水位が上がってくるではないか。
また隣で捕まっているライラ達に視線を向けてみると、自身と同じ状況に陥っており、腰辺りまで水位が上がってきていたため、何とかして脱出しようと試みていた。
そのため、コウもこのままでは溺れてしまうと思い、なんとかして脱出しようと身体を動かそうとするも、急激に首辺りまで水位が上がってきたため、身動きが取りづらく、上手く動くことができない。
そして水位は無慈悲にも上がっていき、首辺りたりまで到達すると、コウは息を深く吸い込んで酸素を肺に溜め込んだのだが、それと同時に水の膜内の空間が全て水で満たされてしまい、窮地に立たされることとなる。
とりあえずコウは水中から脱出するため、泳ぐような動きをして踠くことにするも、ただただ酸素を無駄に消費するだけで、残念ながら水の牢獄から脱出することは叶わない。
「無駄な抵抗は苦しくなるだけでするもんじゃないっすよ~」
そんなコウを尻目にアインが同じ様に水の牢獄に閉じ込められ、苦しそうに呼吸を止めているライラ達の方向へと足を運び始めたので、何とかしてここから抜け出すことが出来ないか?と思考を巡らせるも肺の中の酸素が少なくなってきたため、頭が回らず、上手く考えが思いつかない。
そしてアインは息を止めて苦しそうにしているライラの前に立つと、右腕を水の牢獄に伸ばし始めたため、ここまでなのかと諦めそうになった瞬間、伸ばしていた右腕が赤い鮮血と共に宙を舞い、地面へぽとりと落ちた。
するとコウ達のことを閉じ込めていた水の牢獄はまるで水風船が割れたかのように、ぱしゃっ!という音を立てながら割れた。
「はぁ...はぁ...!助かった!」
「...ぷはぁ〜!死ぬかと思いました〜!」
「キュ...キュイ〜!」
そして無事に水の牢獄から解放されたコウ達は新鮮な空気を目一杯吸い込み、呼吸を整え、何故解放されたのか?と思いつつ、地面に手をつきながら顔を上げる。
「...っ!腕がっ...!あんた誰っすか!?」
「僕はディーン。魔族討伐隊のリーダーさ」
するとそこには聖都シュレアにて魔族討伐隊というもののリーダーとなったディーンが腰にぶら下がっていた白銀の鞘から取り出したと思われる光り輝く剣を堂々と構えながら立っているのであった...。
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