589話
「ふぅ...ここから先が死の森だな」
「キュ!」
入念な旅の準備をしてから翌日の朝。ライラの見送りを背にコウ達はローランから旅立ち、そこまで時間を掛けることなく、死の森へ続く入口へ到着した。
そんな目の前にある広々とした森からは少しだけ空気がピリピリとして張り詰めた雰囲気を感じ、ここから先は久々に気合をいれる必要があるということで、コウは軽く呼吸を整えると、まずは身に纏っている外套に魔力を込めていく。
とりあえず外套の見た目にこそ変化はないが、自身の魔力を外套に込めることが出来たので、これで死の森の中に入ったとしても魔物達に気付かれる心配はない筈である。
「フェニは中に入っててくれ」
「キュイ!」
そして肩に止まっているフェニに対して胸元を空けながら中に入るように指示を出し、そのまま外套の中にすっぽり収まったのを確認すると、コウは死の森に向かって一歩を踏み出した。
それにしても死の森の中へ入っていくことにしたのはいいのだが、闇雲に歩き回ったところでハイドが今も生活している筈の生家には到着することはない。
「ここから先はこれの出番だな」
ということで、コウは一旦歩き出した足を止めて収納の指輪からとあるものを取り出したのだが、それは手のひらサイズの円盤に1本の赤い矢印が取り付けられた簡易的な方位磁針のようなものであった。
「こいつに魔力を込めれば良いって言ってたな」
そんな方位磁針のような物にコウは魔力を込めていくと、赤い矢印がぐるぐると回転しだし、ある程度回り続けると、ピタリと止まってコウの死の森の奥へと指針を示しだす。
さて...コウが取り出した物は一体何なのかというと、実はハイドから旅立つ際に手渡されていたものであり、それは魔力を込めれば対となる物に反応する魔道具である。
つまりコウが手に持っている方位磁針は生家に置かれた対となる物に反応している状態ということで、赤い矢印の方向に歩いていけば、無事に辿り着くことが出来るだろうか。
「さぁ今度こそ行くか」
ということで、コウは今度こそ方位磁針を頼りに再び歩き出したのだが、久しぶりの死の森の中は少し入っただけでも木々が鬱蒼としているため、陽の光の入りは悪く、薄暗くなっていたりする。
そして自身から遠く離れた場所からは何やら聞いたことのない魔物の遠吠えが聞こえてきたりするので、なるべく出会うことはないようにと、コウは心の中でいるかいないか分からない神へ祈っておくことにした。
「到着するのにどれくらい時間が掛るんだろ?森から出る時は2日ほど掛るって言われた記憶があるけど...」
以前、死の森から出るには2日程時間が掛るとハイドに言われたような記憶があり、簡単に逆算すれば2日間で生家に到着する筈である。
まぁ今と違ってあの頃は森の中を歩くことに慣れていなかったということもあるので、今回はもう少し早く到着はするだろうか。
しかし早く到着するといっても結局のところ1日ぐらいは野宿をする羽目になってしまうのだが、そこはしょうが無いところ。
また野宿とはいってもコウの収納の指輪の中には外でも快適に過ごすことが出来るための様々な物が詰まっていたりするので、全く持って問題はない。
ただ問題があるとするならここは死の森で野宿するには危険な場所ということもあり、出来れば魔物に襲われることがない少しでも安全そうな場所で野宿をしたいところ。
「そういえば森から出る時に野宿したのは湖の小島だった記憶があるな」
そのため、野宿はどうしたものだと考えながら歩いていると、1年前に旅立った際、野宿するために立ち寄った太い木が1本だけ生えた小島が浮かぶ湖をコウは思い出した。
そこであれば、野宿する場所としてはそれなりに安全だと思われるし、何よりもそこはフェニと最初に出会った思い出深い場所でもある。
ということで、以前コウが死の森から出る際、安全に野宿する場所として立ち寄り、フェニとも最初に出会った場所でもある太い木が1本だけ生えた小島が浮かぶ湖を探しながらも方位磁針に従いつつ、森の中を歩き続けることにするのであった...。
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