588話
冒険者ギルドで買い取ってもらった魔物の素材の代金を受け取り終わったコウ達は小鳥の止まり木という宿へ戻る途中、これからの予定について話し合っていたのだが、その際は特に何かしらが決まることはなかった。
ということで各自、自室に戻ってこれからやりたいことを考えることとなったのだが、ベッドの上で横になっていると、1つだけやりたいことが頭の中で思い浮かんでいた。
そのやりたいこととは死の森という高ランク冒険者でも立ち寄らない森があるのだが、そこの前層にあるハイドと共に過ごしていた生家へ一度帰省したいというものであった。
何故、一度帰省したいのかというと、コウはその死の森の前層にある生家から旅立ってから既に約一年は経過しているということなので、そろそろ帰ってハイドに顔を見せるのも悪くはないのではないかと思っていたりするからだ。
今のところ指名依頼は全て消化してあり、暫くは暇ということでタイミング的に考えると丁度良いとも言えるし、また土産話も多く出来ており、ハイドへ自身の母のことについてやら色々と聞きたいこともあったりもする。
「俺が生まれた家に帰ってみようと思うんだけどフェニはどうする?」
「キュ!」
ということで、フェニはどうするのかについて聞いてみると、コウと一緒であれば何処にでも付いてくる様子。
まぁフェニぐらいであれば、特に問題はないのだが、問題があるとするならライラの方だろうか。
何が問題かというと、ライラはコウがいつも身に付けている魔力を込めれば隠蔽効果が付与される外套を持っておらず、死の森の中を安全に歩き回ることが出来ないというものだ。
その点、フェニならばコウの外套の内側の中に入っていれば、特に問題はなく、死の森の中を一緒に行動することが出来たりする。
また自身のことについて詳しくライラに話していないというのも問題と言えるだろうか。
「ライラにはどう説明するかなぁ...とりあえず暫く別行動になっても問題ないか聞いてみるか」
ということでローランから離れ、ライラとは別行動になるということを伝えるためにコウは自室から出て隣の部屋へ向かうことにした。
「ライラいるか?」
「いますよ~すぐに扉を開けますね~」
そして隣の部屋の前に到着したコウは握りこぶしを作り、部屋の扉に対してコンコンとノックを複数回しながら中にいると思われるライラを呼ぶことにした。
すると部屋の中からライラから扉を開けるという返事が返ってきたということなので、その場で待っていると、すぐに部屋の扉は開き出す。
「どうしたんですか~?」
「少し話があるんだけど今いいか?」
「問題ありませんよ~部屋の中にどうぞ~」
そして珍しくコウが話があると言いながら部屋を訪ねてきたということで、ライラは不思議そうにしていたが、中に入る許可が下りたということで、そのまま部屋の中へと入っていき、近くにあった椅子へ腰掛けていく。
「話ってなんですか~?」
「一旦ローランを離れようと思ってな」
「指名依頼も無いですもんね~次は何処に行くんですか~?」
「いや...ライラとは別行動だな」
「えっ?なんでですか~?」
ということで早速ではあるが、ローランから離れる旨の話を切り出すことにしたのだが、驚きの表情を浮かべたライラから何故、別行動となってしまうのか?という問いが投げ掛けられた。
それはそうだろう。日頃から共に行動しているというのに今回に限って何故か別行動となるのだから疑問が生まれるのも当たり前だろうか。
「詳しくは言えないけど俺のためでもあるから頼む」
ただ正直に話すとなると、コウ自身のことについて色々と話さないといけなくなってしまうし、何よりも死の森という危険な場所へ向かうなどと言ってしまえば、ライラの性格上、止められたり、最悪こっそりと付いて来てしまうに決まっている。
そのため、コウは詳しくは話すことが出来ないが自身のためだと言いつつ、はぐらかしていくことにした。
「ん~...コウさんは何か危ないことをするわけじゃなんですよね~?」
「あぁそれは大丈夫だと思う」
「まぁ私も色々とありましたし良いですよ~でもいつか話して下さいね~」
「分かった。悪いなこんな話を急にして」
「いえいえ事情は人それぞれですから良いですよ〜」
まぁライラも過去にコウへ1通だけの手紙を残し、1人で行動してしまったということがあり、それを本人は気にしているのか、あまり深く突っ込んでくるようなことはしないようだ。
ということで、一旦ローランから離れるということをライラから無事に了承も得たということで、コウは自室へ戻ると、今もハイドが過ごしていると思われる生家へ戻るため、入念な旅の準備をしていくことにするのであった...。
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