499話
ぼんやりとした光はクーリャのことを球形状に包み込み始めるので、コウ達は大丈夫なのかと思いつつ、疲れた身体を酷使しながら急いで近寄ると、その光の中から少しだけ大人びた少女の姿をしたクーリャが現れる。
そして先程までクーリャが椅子として座っていたダンジョンコアの姿形は無く、残っていたのは空の台座だけであった。
「クーリャ...なんだよな?」
「そうだけどー...?どうしたのー?」
念のため、コウはクーリャだと思われる少女に問い掛けてみると、ぱちくりと目を開き、どうしたの?と返答しながら首を傾げているので、自身に何が起きているのか気づいていない様子。
「クーリャちゃん何だか大きくなっていませんか~?」
「キュー!」
そのため、自身の身に何が起こっているのかについて気づかせるため、ライラとフェニが成長しているのではないか?ということを伝えると、クーリャは何を言っているんだ?といった表情をしながら座っている台座の上から飛び降りて、身体をペタペタと触り確認しだした。
「え...えぇー!大きくなってるー!」
そしてようやく何が起こっているのか気づいたのか、クーリャは驚きの表情を浮かべているが、どちらかといえばコウ達の方が驚いているわけで...。
とはいえ、身体に何かしらの負担を感じている様子もないので、特に問題はないのだろう。
更に変化したのはクーリャの身体だけではなく、ダンジョン内の外壁にも変化が現れており、赤茶色だったものが今度は薄い水色のようなものへと変化していた。
またダンジョン内の外壁が変化したお陰でなのか、熱気に包まれていたものからひんやりとした空気となり、だいぶ過ごしやすい環境へと変わっていたりする。
「それにしても何でクーリャちゃんは大きくなったんですかね~?」
「まぁ考えられるとしたらさっきの水晶だろうな。無くなってるし」
どうして成長したのだろうかについて原因を考えてみると、今のところ考えられるのは、台座の上に置かれていた水晶のせいぐらいしか思いつかない。
そんなことをライラと話していると、今度は何処からともなく、輝きの強い小精霊が現れ、こちらに向かってふわふわと飛んできた。
そしてその小精霊は姿形を人の形へと変化させていき、そこに現れたのはコウ達のよく知る水の精霊のアクエールであった。
「有難うございました。これで氷の精霊達も平和に過ごせそうです」
「アクエールさーん!」
「クーリャ。何だか大きくなりましたね」
「そーなの!大きくなったー!」
自身の変化を色々と確かめていたクーリャはアクエールの存在に気づいたようで、無邪気な子供のように豊満な胸の中へと飛び込んでいき、見た目も相まって何だか親子のような関係に見えてしまう。
「クーリャ。そろそろあの方に御礼を...」
「はーい!お兄ちゃんたちありがとうー!これあげるー!」
クーリャはアクエールに言われると、ゴソゴソと服の隙間に手を突っ込み、中から取り出したのは以前、コウが貰ったことのある精霊玉と似たようなビー玉ほどの大きさをした宝玉であり、薄い水色で透き通るように綺麗なのは同じなのだが、中身は違ってキラキラと雪の結晶のようなものが降り注いでいる。
そんな精霊玉をクーリャが笑顔で手渡してくるので、コウもそのまま受け取ると、手のひらにひんやりとした冷たい感覚が広がっていく気がした。
「あぁありがとうな。じゃあ疲れたし帰るか」
「そうですね~ではまた困ったことがあればお手伝いしますよ~」
「キュイキューイ!」
「では帰り道を案内しましょうか。クーリャお願いしますね」
「はーい!こっちだよー!」
とりあえず困り事について無事に解決したし、貰えるものは貰ったということで、コウ達は帰る旨を示すと、どうやら外まで案内してくれるようで、クーリャとアクエールに付いていき、ダンジョンから出ることにした。
そしてダンジョンの外に出ると、日が暮れ始めているということもあってか空が茜色に染まりつつあるため、クーリャとアクエールに別れを告げて、夜になる前に来た道を疲れた身体に鞭を打ちながら急ぎ足で戻り、温かい料理が待っているであろう小鳥の止まり木へ帰るのであった...。
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