493話
あれからというものコウ達はローランへ無事に戻り、冒険者ギルドへと縄張りとしていたホワイトパンサーを追い払ったということを報告した。
そして多数の青果店から出された依頼を達成したということで、報酬をもらってはいるのだが、元々報酬は少ないということで得たものは微々たるものであった。
またどちらかといえば縄張りとしていた魔物であるホワイトパンサーの素材のが得たものとしては大きく、解体して欲しがっている貴族にでも売りつけることが出来ればそれなりの金額になったりする。
ちなみにコウ達が倒して回収したホワイトパンサーは既に解体倉庫へと丸投げしており、売り先を考えず放置しているだけで良いだろうか。
そんなこんなで依頼を終えて報告してから数日後の昼。コウ達は今何をしているのかというと、自室にて冬限定に出されるという小鳥の止まり木の料理を楽しみに待っていた。
「楽しみですね~」
「キュ!」
「そうだな。」
そこまで苦労はしていないが、それでも仕事はしたというのは変わりないことなので、コウ達の中では冬限定の料理がどれくらい美味しいのだろうかと期待が高まっていた。
そして暫くどんな料理が来るのか想像し、話しながら待っていると、部屋の外からガラガラとワゴンを押すような音が聞こえてくる。
「コウさん。料理をお持ち致しました」
「すぐ扉を開けるから待ってくれ」
そのワゴンを押すような音はコウ達の部屋の前で止まり、今度は扉をコンコンとノックする音共にこの宿の女将であるミランダの声が聞こえてきたので、すぐに返事を返し、ベッドの上から飛び降りると部屋の扉を開けた。
「お待たせ致しました。お部屋の中にお持ちしてもよろしいでしょうか?」
「あぁ机の上に頼む」
するとそこにはお高いレストランなどで出てくるようなドーム状の形をした銀色の蓋が上に置いてあるワゴンと一緒にミランダが立っており、部屋の中に運んでも良いかと聞かれるので、机の上に運ぶようにとコウはお願いしていく。
「では料理をお楽しみ下さい。失礼致します」
「ありがとな」
「ありがとうございました~」
「キュー!」
そして料理を運び終えたミランダは頭を下げると、空になったワゴンと共に部屋から出て行ってしまったので、コウ達はお礼で返事を返しながら、ドーム状の形をした銀色の蓋を取ると、香草の良い香りが部屋の中を満たしていった。
その料理の見た目はポトフと似て、中身にはごろごろとした肉のブロックや蕗の薹に似た山野草がまるごと入っており、その隣には浸して食べたり、具材を乗せて食べたりする用の薄く切られたパンも一緒に添えられていたりする。
またフェニ用としてフルーツの盛り合わせと一緒に蕗の薹に似た山野草が茹でられた物もあるので、コウやライラと同じ様に山野草を楽しむことが出来るだろうか。
「じゃあとりあえず食べるか」
「そうですね~頂きますか~」
「キュキュキュ!」
とりあえず冷めてしまうのは勿体ないので、早速食べることにし、木のスプーンで掬って蕗の薹に似た山野草を食べてみると、やはり山野草ということでほろ苦さはあり、噛みしめるたびに口の中には何ともいえない独特な匂いが広がった。
「山野草って今まで食べたことなかったけど意外と美味しいな」
「そうですね~説明しづらいですけどなんだか大人の味って感じですね~」
「キュ!」
そこまで期待するほどではなかったが意外に美味しいものであったとコウ達は各々感想を述べつつ、黙々と食べていく。
まぁこの宿は年齢層の高いそれなりに裕福な人が泊まるような場所であるため、このような大人が楽しめる料理が冬限定の料理として提供されているのだろう。
そして冬限定の料理を一通り食べ終えたコウ達はベッドの上で食後の休憩としてゆっくりとしていると、不意に部屋の窓がコンコンとノックされる。
「ん?何の音だ?フェニの友達とかか?」
なんの音だろうと思いつつ、コウは窓に近づいて確認すると、そこには以前イザベルの別荘で見たことのある丸い発光体がふよふよと浮かんでいるのであった...。
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