489話
そんなユキヒョウが牙を剥きながら音もなく飛び掛かってきたということで、コウは愛用しているサンクチュアリを収納の指輪の中から取り出して反撃するか、もしくは魔法で反撃するかについて一瞬だけ判断に迷いが生じてしまった。
そのため、飛び掛かってきたユキヒョウの対応に間に合わなくなってしまい、ここは腕を一本差し出すしかないと判断したコウは唇をギュッと噛んで痛みを覚悟して腕を前に出し、自身の急所部分だけを守ろうと覚悟するも、目の前に透明な障壁のようなものが突然作り出された。
そしてコウに向かって飛び掛かってきたユキヒョウは空中にいるためか、勢いを落とすことが出来る訳もなく、突然現れた透明な障壁へとそのまま衝突してしまう。
「コウさん〜!立て直しますよ〜!」
「悪い!助かった!」
「キュ!」
どうやら目の前に現れた透明な障壁はライラが持っている魔導具である指輪によって作り出されたもののようだった。
その作り出された透明な障壁のお陰でコウは無事に立て直すことができ、収納の指輪の中から愛用しているサンクチュアリ取り出し、魔力を込めて大きさを変化させると、ユキヒョウに向けて構えていく。
「グルルルル...」
どうやら襲いかかってきたユキヒョウもまだまだやる気満々のようで、頭をふるふると横に振るうと、コウ達に暗殺者のような鋭い視線を向け、牙を剥きながら唸るように喉をグルグルと鳴らしていた。
そんなやる気満々のユキヒョウの詳細は事前にギルド職員であるミラから話を聞いており、ホワイトパンサーという名を持ったCランクの魔物である。
見た目としては身体には柄が1つもなく、真っ白な雪のように柔らかい毛並みを持ち、目は氷の如く冷たい水色、そして尻から伸びる長い尾は二股に分かれているのが特徴だ。
またホワイトパンサーが武器としているのは先程、飛びかかってきた際に見えていた鋭い牙なのだが、それ以外であると前足の先についている長い爪も鋭く尖っており、並みの防具では紙の如く、容易く切り裂かれてしまうとのこと。
勿論、ホワイトパンサーの武器としているものはそれだけではなく、コウと同じく氷系統の魔法を使うのが得意としているようだ。
そしてそんなホワイトパンサーは冬場のみ現れるという季節の限定の魔物であり、毛並みがとても美しいためか、それなりの額で貴族の間では取引されているとのことなので、できれば傷跡が無い綺麗な状態で仕留めたいところ。
ちなみにウルフ系の魔物同様に普段は群れで行動をする魔物なのだが、群から逸れてしまったのか分からないが一匹だけというのは珍しかったりする。
「ふぅ...初めての魔物だし慎重に行くぞ」
「了解です~」
「キュ!」
そしてコウ達とホワイトパンサーはお互いにジリジリと距離を計りながらいつ仕掛けるか様子を窺っていると、コツンと足先に何か引っ掛かりを感じた。
そのため、隙を見せないようにチラリと目の端で足元を確認すると、そこには蕗の薹に似た山野草が顔を出しているではないか。
「むぅ...ここで戦うと足元にある山野草を荒らすことになりそうだな」
「確かにそうですね〜移動しましょうか〜」
このままこの場でホワイトパンサーと戦ってしまうと、足元に生えている蕗の薹に似た山野草が踏み潰され、折角依頼を受けて追い払ったというのに採取することが出来なくなってしまうため、ここは場所を変えた方がいいだろうか。
そのため、コウ達はアイコンタクトをし、息を合わせてその場でくるりと反転すると、足に力を込めて一気に駆け出し、山野草が生えていない場所まで移動することにした。
「キュイー!」
「やっぱ追ってきますね〜」
「そっちのが都合がいいから有り難いな」
走り出すと同時に対面していたホワイトパンサーも追いかけるように駆け出してくれたのはコウ達としても都合が良い。
そして足を滑らせないように何とか山野草がなさ気な場所まで移動すると、周囲は雪が積もっており、多少なりとも足場や環境は悪いが、Cランクの魔物1匹程度であれば特に問題はないだろうということで、コウ達は再び武器を構えるのであった...。
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