488話
冷たい冬風に吹かれつつ、さくり...さくり...と誰も通っておらず、足跡も何もない雪白化粧がされた大地の上をコウ達は新しく足跡をつけながら、東の方向にある渓谷へと向かっていた。
そして先ほどまで降っていた大粒の雪はいつの間にか止んで、空は快晴の状態となっており、太陽の日差しが雪の上を照らしてキラキラと光が乱反射して眩しさを感じてしまう。
ただこのまま雪の上を歩いていると、太陽の日差しで雪焼けをしてしまうので、歩いている途中、ライラから日焼け止めを借りて肌に塗っていたりする。
「うぅ~それにしても寒いです~...」
「そうか?って俺は外套のお陰で寒くないんだった」
「ずるいです~...私もその外套が欲しいです~...」
「そう言われてもなぁ...」
そして隣で一緒に白い息を吐きながら歩いていたライラは追加の厚着をしていてもまだ寒さを感じているようで、体を両手で摩り、身を震わせながらコウが身に纏っている外套を羨ましそうに視線を向けてくる。
まぁコウが身につけている外套は魔力を込めると温度調整を自動で行ってくれる魔道具であるため、気候の変化をあまり気にする必要性はなく、今のライラと違って寒さを感じたりはしない。
別に今身につけている外套を貸しても良いのだが、魔力消費がそれなりに激しい魔道具のため、ライラが扱うには少し難しいだろうか。
もし火魔法などを使えることが出来るのであれば、暖まることが出来るので、また話は変わってくるのだが、残念ながらコウとは相性が悪いということもあり、残念ながら寒いのをどうすることも出来ない。
ちなみにフェニは何処にいるのかというと、寒いためか、コウの身に纏っている外套の中に隠れており、今はしっかりと暖を取っていたりする。
「そうだ。あの赤いやつで何とかならないのか?」
「あれですか~?ん~じゃあ少し試してみますか~」
そのため、何か他に寒さをどうにかする方法はないと考えると、そういえばライラは赤いオーラなるものが使えたのを思い出し、ものは試しということで提案してみることにした。
そしてライラはコウの言う通り、自身が扱っている赤いオーラを薄く伸ばし、全身をすっぽりと覆い被せるかのように纏わせていく。
「おぉ~!何だか寒くないかもです~!」
「へぇ便利なもんだな」
するとライラの扱うことが出来る赤いオーラは身体能力の向上や衣服の強度を上げるだけではなく、寒さなども防ぐ効果があるようで、何とも便利な力だとコウは思った。
ただどれだけの時間、その赤いオーラを維持することが出来るのか分からないので、防寒として完璧なものとはいえないが、それでも暫くの間は保つだろうし、無いよりはマシのはずである。
そんなこんなでコウ達は目的地であった東の渓谷へと到着すると、積もった雪は薄っすらと地面の表面を覆い隠すくらいであり、あちらこちらから蕗の薹に似たものが雪の表面からちょこんと顔を出しているのが見えていた。
「この辺の筈だな」
「ん~討伐する魔物が見当たりませんね〜」
「しょうがないな。一旦温かい飲み物でも飲むか」
「賛成です~!」
「キュ!」
とりあえず依頼を受けた際に聞いていた場所辺りを歩きつつ、周りを見渡しても縄張りとしているであろうと思われる魔物の姿が一向に見当たらない。
そのため、一旦休憩として温かい飲み物でも飲もうと提案すると、コウの胸からフェニが賛成というかの様にひょっこりと顔を出して鳴いた。
そして近場にあった丁度、机になりそうな場所で収納の指輪の中にあるディルから貰ったティーセットを取り出そうとすると、ライラが目を開くと同時に大きな声を出した。
「コウさん~!危ないです~!」
そんなライラの大きな声に反応し、コウはその場で後ろを振り返ると、そこにはユキヒョウに似た魔物が鋭い牙を剥きつつ、岩陰からこちらに向かって飛びかかってこようとしているのであった...。
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