477話
暫くすると、サーラが片手に何やら色々と書かれた紙を持ち、こちらに向かってきたため、探し終えたのだろうと思い、コウ達も椅子から立ち上がった。
「どうでしょうか?」
「お待たせしました。ロバーツさんの依頼に関しては情報だけですが報告されてましたね」
どうやらロバーツが人探しの依頼に関しては午前中のうちに情報が提供されていたようで、1枚の紙へ綺麗にまとめられているらしい。
そしてサーラからその情報がまとめられている1枚の紙をロバーツは受け取ると、じっくり目を通して書かれている情報を確認しだす。
「どうなんだ?場所は分かりそうか?」
「この情報が本当でしたらスラム街の近くで生活しているみたいですね」
一通り目を通したのか、ロバーツはその一枚の紙を胸ポケットに仕舞い込むので、何かしら有力な情報が書かれていたかどうかについて確認してみると、どうやら息子と思われる人物がスラム街の近くで生活しているということが書き記されていたようだ。
また丁寧にもその住んでいる場所までの地図がわかりやすく書かれているため、とりあえず嘘か本当かを確かめるべく、確認しに行かないといけないだろうか。
もしこの情報が本物であれば、ロバーツは再び息子と再会することが出来るのだが、先程の拒絶されたばかりなのにまた拒絶されてしまう可能性を考えると、果たして本当に会いに行っても良いものなのか?とコウは思ってしまうも、ロバーツの意志は固いので、伝えたところで意味はないし、手伝うと言ってしまった以上、そんなことを言えるはずもない。
とりあえず嘘か本当かわからないが、情報は得たということで、ロバーツはサーラにお礼を伝えると、そのまま冒険者ギルドを出て言ってしまったので、コウも追いかけるように出ていくと、1枚の紙書かれた地図を頼りに目的の場所であるスラム街へ向かって歩いていく。
「ここみたいですね」
そしてコウ達が地図に記された場所に到着すると、そこには広い庭を持つ、少しだけ老朽化してしまった大きな屋敷が建っており、そんな広い庭には低学年ぐらいの子供達が元気な様子で駆け回っていた。
ただスラム街付近ということもあって子供達の身なりはそこまで良質なものではなく、古着のように多少なりとも首元が緩かったり、穴が空いていたりした服を着ていたりする。
また入り口に立ててある表札のようなものに書かれている文字を見てみると、若干掠れているがティラン孤児院と書かれているので、この場所は孤児院だということが分かった。
「あらぁ...?どちら様ですかねぇ」
そんな孤児院の前にある入口付近でコウ達は立ち止まっていると、何処からともなく現れた掃除道具の箒を持った見知らぬ老婆が声を掛けてきたのだが、少しだけ不審そうに身構えていた。
まぁそれもその筈、子供達が走り回る広い庭を見知らぬ大人と青年が眺めているのだから不審になるのも当たり前である。
それにしても話し方的にこの孤児院と関わりある人物だと思うのだが、掃除道具を手に持っている感じ、清掃員か何かなのだろうか?
「私はロバーツと申します。息子のホリィがここでお世話になってるという話を聞きまして」
「あらまぁホリィ君のお父様でしたのねぇ。ただホリィ君は今買い出しに行っておりましてねぇ」
どうやら冒険者ギルドに依頼し、報告されていた情報は正しかったようで、目の前の老婆はロバーツの息子であるホリィと関わりがあるらしいが、ただし肝心の人物は今現在買い出しに行っているとのことであった。
とすれば、この場所で待っていれば、いずれ買い出しから戻ってくるであろうホリィと会えると思うのだが、流石にスラム街ともいえど孤児院の前で屯するのは不審だと思われてしまい、誰かしらに衛兵へ通報されてしまいかねない。
「そうねぇ...ではお茶でも用意しましょうかねぇ」
「良いのですか?」
「良いのよぉ。ホリィ君には世話になっているからねぇ」
そんなことを考えていると、有り難いことに老婆から孤児院内でホリィが帰ってくるまで、お茶を用意してくれると声を掛けてくれた。
そのため、コウ達は老婆の言葉に甘えることにし、暖かい孤児院内で待たせてもらうことにするのであった...。
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