465話
「助かりました!あなた方は命の恩人です!」
コウが差し出した串焼きのお陰で、うつ伏せの状態で倒れていた神父服の男性は空っぽだった胃袋を満たしたということにより、無事に復活したらしく、その場で立ち上がると、服についた雪を払いながら感謝の言葉を口にしていた。
まぁコウ達がこの道を通り過ぎなかったら、誰も助けてくれない状態で放置され、凍死していた可能性もあるため、命の恩人といっても過言ではないだろうか。
「どうしてこんなところで倒れてたんだ?食料ぐらい持ってただろ?」
「いやーそれが鞄に穴が空いていたみたいで全て落としてしまいまして」
どうして倒れていたのか?そして食料は持っていないのか?と神父服の男性に質問してみると、どうやらいつの間にか鞄に穴が空いていたせいで、歩いている間に食料や路銀などを全てを落として無くしてしまったらしい。
その話だけ聞くと、なんというか不幸な人だと思ってしまい、流石に同情してしまう。
「全部落としちゃうなんて不幸な人ですね~」
「というかよく1人で歩いていたな。盗賊とか魔物は大丈夫だったのか?」
「こう見えて腕っぷしだけはありますので問題はありません」
1人旅をしていたということで、盗賊や魔物に襲われなかったのかどうか聞いてみると、腕っぷしはあるようで、そこは特に問題はなかったとのこと。
一見そうは見えない線の細い体型をしている神父服の男性だが、聖都シュレアからここまで無事に旅をしてこれたということならば、つまりそういうことなのだろう。
まぁ自身の横に立っているライラも普通の人から見れば、見た目はただのシスターであり、強くは無さそうに見えるが、実際にはそこらにいる冒険者よりも実力があるため、人は見かけによらないとはこのことである。
「そういえば名乗り忘れていましたね。私はロバーツと申します」
「俺は冒険者のコウ。そして相棒のフェニだ」
「キュ!」
「私はライラです~よろしくお願いします~」
そしてお互いに自己紹介を終えたということなのだが、このままロバーツを放置し、馬車に乗ってローランへ向かうのは流石に気が悪い。
旅の道連れ世は情け。とりあえずここで出会ったのも何かの縁かもしれないということで、コウは優しさとして一緒に馬車へ乗っていくかどうかをロバーツへ聞いてみることにした。
「で...ロバーツさんはこれからどうするんだ?もしよかったら一緒に乗ってくか?」
「おぉ!いいんですか!と言いたいとこですがお金が...」
「無一文なのは知ってるよ。ここで出会ったのも何かの縁だし俺が払ってもいいぞ」
「よろしいのですか!なんとお優しい!何から何までありがとうございます!」
どうやら馬車に乗りたいのは山々らしいが、今のロバーツには路銀はなく、乗車賃すら払えないとのことであった。
まぁ鞄の中身を全て落としてしまったのであれば、お金が無いのは当たり前の話である。
そのため、乗車賃を払っても良いと伝えると、ロバーツはまさかコウが払ってくれると思っていなかったのか驚きの表情を浮かべるも、すぐにコウの両手を包み込むように握り、ぶんぶんと縦に振りながら感謝の言葉を再び口にしていた。
そしてとりあえず御者にもう1人馬車に乗っても大丈夫かどうか聞いてみると、特に問題無いということだったので、コウはロバーツが乗るために必要な追加の乗車賃を御者に払っていく。
無事に乗車賃を払い終わると、ロバーツ含めたコウ達は馬車の中に入っていき、御者に出発のお願いすると、再び馬車はゆっくりと進み出し、目的地であるローランに向けて再び走り出すのであった...。
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