430話
空高くまで伸びた巨木のような見た目をした謎の生物がゴリゴリとコウが倒したレイジーベアを大人しく噛み砕いているため、それを眺めながらどう対処しようかについて考えていると、後ろから複数の足音が聞こえてきた。
そのため、コウは新しい盗賊達が応援として現れたのではないかと思い振り返ると、そこには冒険者ギルドのギルドマスターであるジールが他の冒険者達を引き連れながらこちらへ応援として有り難いことに駆けつけに来てくれたようだった。
きっと他の場所はある程度、鎮圧することが終わったことにより、余裕が生まれたからだろう。
ただコウ達の応援に駆けつけに来たところ、あちらこちらで魔物が自由に身動きの取れない盗賊達を襲っているという異様な光景を目の当たりにしたことによってジール達は驚いている様子だった。
「なんだジールさんか」
「おう。それにしてもこりゃどういう状況だ?」
「そこにいるムイドって奴が首にぶら下げてた笛を吹いたら色んな魔物が出てきた」
当たり前だが、ジールからどうしてこんな状況になっているのか説明をして欲しいとお願いされるので、コウは掻い摘んで何が起こっているのかについて軽く説明していくことにした。
「なるほどな...だったらこの状況をとりあえずはどうにかせんといかんな」
そしてコウの説明を聞き終えると、ジールはある程度今の状況を理解してくれたようで、この状況を何とかするために動いてくれそうな感じだったので、これは何とかなりそうである。
「よし...とりあえずお前らは残りの魔物達を討伐してこい」
ジールは引き連れてきた冒険者達に残っている魔物達を倒すようにと指示を出すと、全員は大きな返事して今も戦っているライラやフェニに加勢するかのように散らばっていき、次々と暴れ回っている魔物達と戦い出した。
そして暴れ回っていた魔物達は次々と加勢した冒険者達の手によって倒されていくため、後は任せていれば終わるだろうか。
とはいえ問題はまだ残っていた。
それは巨木のような見た目をした謎の生物をどうするかについてである。
きっとこれも笛の音によって呼び出された魔物の一種なのだろうが、コウにとっては見知らぬ魔物のため、どう対処すればいいのか分からず、とりあえず放置していた存在である。
「さてと...俺はこの魔物の相手をしよう。お前さんはちょっくらゆっくりとしとけ」
「あー...じゃあよろしく。というかこいつ魔物なんだな」
「こいつはグランドワームって魔物だ」
「へぇ...初めて聞く名前の魔物だな」
「普段はこんなところにおらん魔物だから知らんくて当然だ。こいつはAランクの魔物でもあるんだぞ」
どうやら巨木のような見た目をした生物はグランドワームという魔物であり、普段は岩山のような地域の深く暗い地中の奥で生息している魔物らしい。
この魔物の特徴としては深く暗い地中の奥で生活しているせいためか、視力は退化しており、その代わりとして嗅覚が異常に発達していたりする。
ちなみにAランクの魔物でもあり、戦うともなれば危険生物でもあるのだが、戦いを回避する方法もあって、それは香辛料などの刺激臭のするものを身に振りかければ寄ってこないとのこと。
「Aランクって...ジールさんは1人で倒せるのか?」
「俺を誰だと思ってやがる?元Aランク冒険者なんだぞ!まぁそこで俺の活躍する姿を見とけぃ!」
一応、Aランクの魔物ということもあって1人で大丈夫なのかと聞くと、ジールからは元Aランク冒険者だったから問題無いと一蹴されてしまった。
ただ冒険者業からは一線退いているため、果たして本当に大丈夫なのだろうかとコウは若干不安に思ってしまう。
そしてジールは両手にメリケンサックのようなものを身に付け、そのままレイジーベアの死骸を大人しくゴリゴリと咀嚼しているグランドワームの元へ近づいていくのであった...。
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