427話
「コウさん!」
「キュッ!」
ライラとフェニの掛け声によって、切り掛かってきた者の存在に気づいたコウは片手に持っていたサンクチュアリで不意打ちの攻撃を無事、受け止めることに成功した。
「駄目かぁ...いやはや最近の若者はお強いことだ」
そんな不意打ちの攻撃をしてきたのは胸に白い笛をぶら下げた何処にでもいるような冴えない中年の男性であり、残念そうな声と共に目を伏せる。
「何が駄目だよっ!」
とりあえずお互いに拮抗している状態ということだったので、コウは不意打ちの攻撃のお返しとばかりに、その冴えない中年の男性の顔面に目掛けて右足を鞭のようにしならせ、ハイキックをお見舞いしようした。
しかしハイキックを冴えない中年の男性の顔面に目掛けて打ち込もうとするも、余っていた片腕で難なく防がれてしまう。
とはいえ、コウの繰り出したハイキックはそれなりに威力があったようで、冴えない中年の男性は反動で地面に跡をつけながら後ろへ後退しており、受け止めた腕が痺れているのか、苦笑いしながらぶんぶんと振るっていた。
「お頭ぁ!逃げずに助けて下さい!」
「役立たずは五月蝿いですね」
そして近くで転がっている盗賊達が冴えない中年の男性に向かってお頭と呼び、助けを求め出すので、目の前の人物は誰なのかということが、コウの中で答えとして辿り着いた瞬間であった。
「もしかしてあんたがムイドなのか?」
「んー内緒かな?」
「男の秘密なんて気持ち悪いだけだぞ」
念の為、目の前に立っている冴えない中年の男性に名前を尋ねてみるも、はぐらかされてしまうが、先程の盗賊達の反応を見る感じ、捕えるべき存在であるムイドであると、確定してもいいだろうか。
本来であれば、拠点から逃げ出す盗賊達を捕えるだけの簡単な依頼だったというのに、まさか盗賊の首領までもがこちらに逃げて来ているとは、何だか貧乏クジを引かされたような気分である。
「とりあえずあいつは絶対に捕まえるぞ」
「逃がさないようにしなきゃですね〜」
「キュキュイ!」
とはいえ見逃す気はさらさらないので、コウはライラやフェニに声を掛けて、この場から逃げようとする首領のムイドを捕まえるために各々は武器を構え出し、囲むように散らばった。
「3対1は卑怯だとおじさんは思うよ」
「部下をいっぱい持ってた奴が何言ってんだっての!」
そんなコウ達に囲まれて不利な状況下に陥ってしまったムイドは不満そうな声を上げるが、生死を分けるような戦いにおいて卑怯もクソもありはしない。
とりあえず先手必勝ということで、コウは一歩前へ踏み出し、ムイドとの距離を一気に詰めると、気絶させるためにサンクチュアリの石突部分を胴体目掛けて勢いよく突き出した。
するとムイドはコウの突き出されたサンクチュアリの石突部分に対して片手に持っていたマチェテに似た武器を使って横から衝撃を加えると、上手いこと軌道をずらし、避けていく。
とはいえ、それだけではコウの仕掛けた攻撃は終わらなかった。
軌道をずらされ、避けられてしまったということで、強引にコウは横へ振るうことにし、突き出した状態から横薙ぎでサンクチュアリを振るうと、そのままムイドの持つマチェテでしっかりと受け止められてしまう。
「ライラ!フェニ!」
「は〜い!任せてください〜!」
「キュイッ!」
そんなお互いに拮抗している状態だということで、コウは大きな声でライラとフェニの名前を呼ぶと、意思疎通が出来てるかのようにライラは左からそしてフェニは右から電気を羽根に纏わせ、挟み込む形でムイドに向かって迫っていく。
そのため、ムイドはライラとフェニの攻撃を避けるためにマチェテを手放すと、後ろへ一気に飛び退いた。
しかし飛び退いた先にはコウが拠点の出入り口に仕掛けていた、撒菱に似た氷のかけらが数個ほど転がっており、ムイドはうっかり踏みつけてしまう。
「これはしまったなぁ...あー降参降参」
そんな踏みつけてしまった撒菱に似た氷のかけらは小さく破裂すると、ムイドの足先を一瞬で凍っていき、その場で諦めたかのようなため息をついて降参するかのようにすぐさま両手を上げた。
盗賊団を纏め上げている人物なので手強い相手だと思っていたのだが、意外にもあっさりと頭領であるムイドを捕えることに成功してしまったことによってコウ達は何だか肩透かしを食らったような気分になってしまうのであった...。
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