426話
ジールと盗賊団が拠点としている場所について話してから数日後。
数日間、小鳥の止まり木という宿屋で大人しく連絡が来るまで待機していると、昼頃を過ぎたぐらいにジールから連絡を頼まれたという冒険者の格好をした若い男の子がコウ達の元へと訪れた。
その冒険者の格好をした若い男の子から伝えられた内容というのは今日の夜、盗賊団が拠点としている場所を潰しに行くということであった。
またコウ達が押さえる予定の出入り口については、連絡をしに来た冒険者の格好をした若い男の子がその場所まで案内してくれるとのこと。
その連絡を受けた後、コウ達はささっと出掛ける準備を行い、夕方前にはその案内人である若い男の子と共に盗賊団が拠点としている場所へ向かうこととなった。
「ここです。あそこが盗賊団の拠点に通じている出入り口になります」
「ん...ここまでありがとな」
「ありがとうございました~」
「キュ!」
「いえ...これぐらいしか僕には出来ませんから。ご武運を祈っています」
そして盗賊団が拠点としている場所に到着し、バレないように物陰からこっそりと覗いてみると、そこには洞穴のような出入り口があり、その周りを2人組の盗賊が目を光らせながら警戒していた。
とりあえず案内してくれた若い男の子は戦闘には参加しないということなので、先に帰ってもらうことになった。
それからというもの刑事の張り込みのように様子を窺っていると、時間は刻々と過ぎていき、日はいつの間にか西の大地へと沈んでいた。
また真っ暗な夜空には星空が散りばめられており、その中心部にはまんまるとした月が浮かび、周囲一帯は月明かりに照らされて少しだけ明るいだろうか。
そんな満天の星空を見上げていると、光の玉が何処からともなく花火のように打ち上げられ、それはある一定の高さまで到達すると、破裂し、周囲一帯を更に明るく照らし出す。
その光の玉というのは今回、盗賊団の拠点に攻め込むといった合図であり、コウ達は事前に聞いていたので驚くことはなかったが、出入り口付近で見張りをしていた2人組の盗賊は何が起こったのかわからない様子で困惑しているようだ。
「開始の合図だな。とりあえず出入り口付近の盗賊達を捕らえるぞ」
「了解です~」
「キュッ!」
そんな開始の合図と共にコウ達も動き始め、一気に隠れていた物陰から飛び出すと、そのまま出入り口付近で今も困惑状態の見張りをしていた2人組の盗賊に向かって愛用している武器を構えつつ、走り出す。
そして見張りをしていた2人組の盗賊は急に現れたコウ達の存在に気づくも、誰かが攻めてくるとは思っていもいなかったのか、2人組の盗賊達は武器という武器を持ち合わせてはいない様子であった。
そのため、コウ達はいとも容易く見張りをしていた2人組の盗賊を鎮圧することが出来、また拠点の奥へ仲間を呼び出させるようなことすらさせずに済んだ。
「お前ら!こんなことして殺されてぇか!」
「早く解放しやがれ!クソガキ!」
「分かった分かった。えーっと...どうするかなぁ...まぁ試しに色々とやってみるか」
とりあえず鎮圧した見張りをしていた2人組の盗賊はしっかりと縄で縛り、身動きを取れないようにするも、あれやこれやと飛んでくる罵詈雑言を軽く受け流しつつ、出入り口付近にコウは撒菱に似た氷のかけらを次々と撒いていく。
そしてある程度、出入り口付近一帯へ撒菱に似た氷のかけらを撒き終わると、先程から小煩い2人組を物陰へ引きずりながら連れていき、口へ丸めた布を突っ込んで黙らせてから引き続き、先程の出入り口付近の様子を窺うことにした。
暫くすると、別の出入り口から入ったと思われるジールか選んだ冒険者が盗賊団の拠点内部で暴れ回っているためか、逃げ出すかのように続々と出入り口の奥から盗賊達が蟻の如く、わらわらと湧き出てきた。
そんな拠点内部から逃げ出してきた盗賊達は出入り口付近に到達すると、コウが作り出した撒菱に似た氷のかけらを逃げるのに必死なためか踏んでしまう。
するとコウが作り出した撒菱に似た氷のかけらは踏まれたことによって砕け散ると、小さな破裂音をさせると共に盗賊達の足先が一気に凍りついていく。
そして足先が凍りついたことによって、動けなくなった盗賊達はその場で次々と前のめりに倒れていき、まるで人間絨毯のようになって阿鼻叫喚の状態である。
「うわぁ...なんかキモいな」
「コウさんってサラッとえぐいことをしますよね〜」
「キュ〜...」
そんな拠点の出入り口が人間絨毯で埋まっていく様子を側から暫くの間、眺めていると、そろそろ中にいた盗賊も少なくなってきたのか、拠点内部から出てくる盗賊達の数は徐々に減っていった。
「とりあえず1人1人縄で縛っていくか」
「そうしますか〜もう出てこなさそうですし〜」
とりあえず拠点内部から出てくる盗賊達もそろそろ打ち止めということなので、コウの魔法で捕まって身動きの取れない盗賊達を縄で縛ることにした。
そして地面に転がっている盗賊達を縄で縛るために近づいていくと、出入り口の奥にまだ罠に引っ掛かっていなかった者が1人潜んでいたようで、マチェテのような武器を片手に持ち、そこらで転がっている盗賊達を踏み台にしながら飛び石を渡るかのように移動し、勢いよくコウに向かって切り掛かってくるのであった...。
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