422話
そして数日後。コウ達は先日、ローランの周囲一帯を調査するという依頼報酬を受け取るため、昼より少し前ぐらいに冒険者ギルドへと訪れていた。
受付の場所にはいつものサーラではなく、ミラが座って書類を整理しており、コウ達の存在に気づいたのか、小さく手を振ってくれる。
「おはようコウ君達。もしかして今日来たのは依頼の報酬のことかしら?」
「ん...おはよう。それにしてもよくわかったな」
「ギルドマスターからコウ君が来たら渡しといてって言われてたもの」
どうやらジールから事前に話を聞いていたようで、コウ達が来たら依頼報酬を渡すように言われていたらしく、そのためここに来た理由が何となく予想ができていたとのこと。
そしてミラは受付の机の下から幾つかの小袋を取り出すと、そのまま机の上に置かれたため、早速中身を確認していく。
中に入っていたのはいつも通りの金色と銀色の硬貨達なのだが、金色に光っている硬貨の割合が多く見えたので、多少なりとも色を付けてくれたのだろう。
「あっ...そういえばコウ君達と少し話したいことがあるとも言ってたわよ」
「そうなのか?なんだろう?」
「ギルドマスターなら私室で仕事してると思うわよ」
「ん...わかった」
依頼報酬を受け取り、収納の指輪の中へ仕舞い込むと、ジールから呼び出しがあった旨をミラから伝えられたので、とりあえず話を聞くためにジールがいると思われる部屋へコウ達は向かうことにした。
まぁ呼び出しされたことについては、きっと先日の怪しい5人組についてのことだろうと、コウの中では予想していたりする。
そしてジールの部屋であるギルドマスター室の前に到着したコウ達は扉を4回、ノックすることにしたが、何故かいつものような反応がなかった。
「ん?いないのか?」
「どうなんですかね~?」
「キュ?」
とりあえず中にいないかどうか確認するために、部屋の扉を開けてみると、そこには机に足をかけながら椅子に深く座り、天井へ顔を向けて大きな口を開け、寝ているジールの姿があった。
そしてここ最近、机の上にあった大量の書類の山は跡形もなく、無くなっており、きっと書類達を片付けた反動で疲れてジールは寝てしまっているのだろう。
このまま気持ちよく寝てもらっていてもいいのだが、もう一度冒険者ギルドに顔を出しに来るのは面倒だと思ったコウは気持ちよく寝ているジールを起こすことにし、小さな氷の塊を作り出すと、大きく開いている口の中に目掛けて放物線を描くように放り投げた。
「んごぉっ!」
見事、ジールの大きく開いていた口の中へホールインワンすると、いきなり冷たい物が入ってきたことによって、深々と座っていた椅子から跳ねるように飛び起きる。
「ジールさんおはよう」
「おはようございます~」
「キュキュイ!」
「びっくりしたわ!普通に起こさんか!」
「悪い悪いついやりたくなった。で...俺達に話があるって聞いたんだけど?」
「ふー...ったく...あぁそうだ。この間お前さんが捕まえた5人組の件で話があってな」
「なるほどな。どんな話なんだ?」
「それが...」
そんなジールに平謝りしつつ、何故自身達を呼び出したのかについて聞いてみると、思い出したかのように口を開き始める。
話の内容としてはコウの予想通り、数日前に捕まえた5人組のことであり、詳し内容を聞いてみると、それはあの5人組を雇っていたという奴らが判明したとのこと。
その奴らについては一時期、王都やローラン周りを荒らし回っていた盗賊団のようで、盗賊団を纏め上げている頭領の名をムイドというらしい。
出来ればその頭領を生け捕りにして本当の黒幕を何とか暴きたいところなのだが、ここ最近は何故か大人しくしているようで、姿を表さないということもあって難しいようだ。
「で...俺達にその話を聞かせたってことはその頭領を捕まえてほしいってことなんだろ?」
「話が早くて助かる。まぁ実際のところ見つけ出すのは困難だろうし見つけたらでいいぞ」
「出来たら捕まえておくよ。あっ...そういえばこれをジールさんに渡すの忘れてた」
「おっ?なんかくれんのか?」
コウは帰り際に収納の指輪の中から先日、渡しそびれた回収した壺を収納の指輪の中から取り出すと、期待の眼差しを向けてくるジールの机の上に次々と置いていく。
「じゃあ後はよろしく」
「失礼しました~」
「キュ~!」
「お前らちょっと待てい!」
そしてコウ達は壺を机に置き終わると、ジールの静止を聞くことなく、そのまま逃げるように部屋から去って行ってしまい、その場に取り残されたジールは机の上に置かれた大量の壺を眺めながら、深く溜息を吐くのであった...。
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