417話
「来るぞ!全員武器を構えろ!」
「結局こうなるのかよ!」
「も~!なんなんですか~!」
とりあえず襲いかかってくる魔物達を何とかしなければならないということで、コウとライラはジールの言う通り、普段から愛用している武器を取り出し、構えると、襲いかかってくる魔物達を蹴散らしていく。
そんな襲い掛かってきた魔物達の種類は様々であり、ゴブリンやウルフはたまたオークなどもいたりする。
ただ襲い掛かってくる魔物達は統率が取れておらず、またコウ達からすれば低ランクの魔物ということで、そこまで強くなかったというのが行幸だったと言えるだろうか。
「それにしても数が多いな!」
「ここら一帯の魔物が集まっているからかもしれん!」
「これはいつになったら終わるんですか〜!」
暫くの間、コウ達は牙を剥きながら襲いかかってくる魔物達に愛用する武器を振るっていると、死骸がどんどんと積み重なっていき、茶色だった地面は溢した絵の具のように真っ赤に染められていく。
ただ低ランクの魔物達とはいえ、数があまりにも多く、この場から脱したいというのに襲い掛かってくる魔物達を蹴散らせど蹴散らせど、前へ一向に進んでいる気がしない。
まぁここにいる魔物達も無限ではなく、数は限られているため、このまま蹴散らしていけば、いずれはこの場から脱することができるのだが、そこまで時間を掛けたくないし、血なまぐさくもなってきたため、早くこの場から脱したい。
「ライラ!ジールさん!一点突破したいから少し時間を稼げるか!?」
「おうよ!どれだけでも時間を稼いでやるから頼んだ!」
「守りは任せてください〜!」
早くこの場から脱する突破口を作り出したいということで、ジールやライラに時間を稼げるかどうか聞いてみると、特に問題ないという返答がすぐに返ってきたのめ、コウは早速ではあるのだが、一点突破出来るような魔法を用意する事にした。
そしてコウは自身の頭上に小さな丸い氷の塊を作り出したのだが、これだけでは一点突破出来るような威力ではないため、威力を高めるために追加の魔力を込めていく。
そのため、更に魔力を込められた小さな丸い氷の塊の表面にゆっくりと追加の氷が作り出され、最終的には巨大な氷塊へと変化していた。
「よし...こんなもんかな...?発射!」
そして巨大な氷塊が無事に頭上へ完成しきると、コウは自身の目の前に向かって、作り出したばかりの巨大な氷塊を掛け声とともに放っていく。
放たれた巨大な氷塊はまるで大砲によって放たれた砲弾の如く、一直線に飛んでいき、目の前に群がっている魔物達へぶつかるも、止まることはなく、全てを轢き潰し、一本の開けた道を作り出した。
「今だっ!」
「よくやったコウ!」
「ようやく脱出が出来ます〜!」
道が開けたという事で、コウの合図と共に全員はその場から脱するため、元来た道を走り抜けて勾配な斜面を一気に駆け上がっていく。
そしてなんとかライラ達と共に斜面を登り切ったコウは先程までいた場所を見てみると、まだ大量の魔物が残っており、多種同士で殺し合っているため、まるで蠱毒だと思ってしまう。
「何とか無事に出ることが出来たな。しかしこのまま放置する訳にもいかん。何か手はないか?」
「あるにはあるけど...」
「出来そうならやってくれ。やり方はお前さんに任せる」
このままの状態で放置してしまうと、近くにあるであろう道へ逃げ出した魔物達が溢れ出してしまい、これから通り過ぎる馬車を襲う可能性があるため、残っている魔物達を何とかしないといけない。
幸いにも窪みの底で多種多様の魔物達が殺し合っており、まだまだ這い上がってくる気配はないため、上から一方的に倒すことは出来るだろうか。
「うーん...じゃあこうしようかな?」
とりあえずジールに任されたということで、コウは手のひらに自身の持つ膨大な魔力を集めると、そこにはビー玉サイズの小さな水球が1つだけ作り出された。
そんなビー玉サイズの小さな水球を窪んだ地形の底に向かって、まるで賽銭を投げ入れるかのように手のひらから放り投げる。
すると放り投げられたビー玉サイズの小さな水球は空中で形がどろりと崩れていくのだが、そこからはありえない量の水が滝のように産み出されていった。
そして大量の水は窪んだ地形を満たすかのよう一気に流れ込んでいき、底で今も争っていた多種多様の魔物達を飲み込んでいくが、中には多少なりとも泳げる魔物もいるためか全てを倒すことは出来ていなかった。
「こんなもんかな?」
そしてコウはある程度、窪んだ地形の底が自身の魔力で作り出した水で満たされ、小さな湖のような状態になったのを確認すると、指をパチンと1回だけ鳴らす。
すると小さな湖のような状態だった場所は急激に冷えていき、ゆらゆらと揺れていた水面がピキピキと凍りついていく。
そのため、最終的にコウが作り出した小さな湖は真冬に凍った湖のようになっており、底を覗き込んでみると、透明度が高いお陰なのか一番奥底まで見え、そこには先程まで殺し合っていた多種多様の魔物達が時を止められたかのように凍っているのであった...。
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