407話
「よし...到着だな」
「結構広い森ですね~」
「キュ!」
書類の手続きも無事に終わったコウ達一行は早速、今回の依頼場所である北の森へ訪れていた。
この北の森というのは死の森とトレントの森に挟まれた場所にある森であり、魔物は生息しているが、そこまで強い魔物はいないという特徴がある森である。
ただし奥まで行き過ぎると、死の森やトレントの森へとうっかり踏み込んでしまうので注意する必要があったりする。
「それにしても他にも人が来てるんだな」
「同じ依頼を受けてるかもしれませんね〜」
そんな北の森には他の冒険者や木こりのような見た目の者が、ちらほらと見かけられ、あちらこちらに生えている杉に似た木の幹に向かって斧を振るい、こぉーん...こぉーんと軽快な音を鳴らしながら切り倒そうとしていたりする。
もしかしたらライラの言う通り、冒険者ギルドでコウ達と同じように木を切って運搬する依頼を勧められた冒険者や普通の木こりの人がここにきているのかもしれない。
まぁ木を運搬する方法さえあれば、そこまで大変ではない依頼内容ではあるし、お金の払いも木1本に対して銀貨2枚と良いので、依頼を受けれる人は受けているのだろう。
「これだけ人がいれば切る木が足りなくなったりしないんですかね〜?」
「たしか魔力が多いせいで木がすぐ生えてくるからそこは問題ないらしいぞ」
これだけ多くの冒険者や木こりが投入されていれば切るための木が足り無くなるのでは?とライラは思ったらしいのだが、この北の森は死の森とトレントの森の間に挟まれた場所であるため、魔力が豊富となり、木ぐらいであればすぐに生えてくる。
そのため、切る木が無くなるといったことはあまり起きないので、遠慮なく木を伐採することが出来るのだ。
「じゃあフェニは周りを警戒しておいてくれ」
「キュ!」
一応、周りに冒険者はいるため、魔物が現れたところで問題は無いし、現れたところで低ランクの魔物だと思うのだが、念には念を入れることにし、木を切っている間は周りをフェニに警戒してもらうことにした。
「よーし切るぞー」
「頑張って切っていきますか~!」
早速コウは片手に斧ではなく、愛用のサンクチュアリを持ち、近くにある杉に似た木へと近づくと、思いっきり横に振り抜いた。
すると杉に似た木はまるで豆腐のようにスッパリと根本から切れてしまい、追加として誰もいない方向へ蹴りを加えると、バキバキと音を立てながらその方向へ倒れていき、ずしん!という振動とともに地面が軽く揺れた。
「お~!私も負けませんよ~!」
そしてライラも負けじと、近くにある杉に似た木に向かって斧を振るうも、コウの持つサンクチュアリとは性能が天と地の差ほどあるため、木の幹の部分に多少の傷が入るだけであり、一気に切り倒せるわけではなかった。
そんな結果に納得のいかない様子のライラは木の幹に刺さった斧を引き抜き、再び大きく振りかぶって同じ部分に斧を当てると、今度は斧自体がライラの力に耐えきれなかったのか持ち手の部分が折れて壊れてしまう。
「コウさん~...折れちゃいました~...」
「まぁしょうが無い。それにしても予備があったか...?」
斧を壊してしまったことに対して申し訳無さそうにしながらライラが近づいてくるが、壊れてしまったのはしょうが無いということで、とりあえず収納の指輪に予備の斧が入っていないかどうかを確認するも、残念なことに予備の斧を持ち合わせてはいなかった。
「予備がないな」
「ん~だったらちょっと試したいことがあるんですけどいいですか~?」
「あぁ良いぞ」
斧の予備がないため、ライラは木を切り倒すことが出来ないと思ったのだが、どうやら何かを試したいようで、先程切っていた杉に似た木へと再び近づいていった。
するとライラは赤いオーラを手に纏わせ、木の幹の傷ついた部分へと手刀を繰り出すと、手刀を当てた部分からぴしりと亀裂が走り始め、そのまま杉に似た木は折れるように倒れていく。
「こっちのが早いかもですね~」
「あー...うん。木を切れるならもうなんでもいいんじゃないか?」
とりあえず木を切ることについては斧がなくても何とかなりそうということなので、コウ達は周りに生えている杉に似た木を黙々と切り倒し始めるのであった...。
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