405話
目の前で煙のように消えてしまったディーヴァはきっと先程と同じ様にコウの隙をついて大剣を振ってくる筈なのだが、実は既に先手を打っていたりする。
それは先程の戦闘にて水球をうまく当てられたことによってディーヴァをずぶ濡れの状態にすることが出来たということである。
「とりあえず何処に行ったのか把握させてもらうぞ」
コウは消えてしまったディーヴァの位置を割り出すために指をパチンと鳴らすと、背後からピキピキという何かが凍る音と共に誰かの呻き声が聞こえ始めた。
「ぐぅ...!なんだこれは...?」
そのため、振り返ってみるとそこには先程煙のように消えてしまったディーヴァが姿を現しており、全身の鎧の部分や身体に薄らと氷が張り付いて何が起きているのかわからない様子だった。
そしてディーヴァの場所を特定することができたということで、コウはサンクチュアリの持ち手部分をくるりと反転させてギュッと握りしめると、全身が薄っすらと氷、身動きの取りづらそうにしているディーヴァに向かって一気に距離を詰めていく。
とりあえず殺す気などは一ミリもなく、コウは気絶を狙うためにディーヴァのみぞおち辺りに向かってサンクチュアリの石づき部分で思いっきり突くかのように鋭い一撃を突き出した。
「ぐぉっ!」
そんな放たれた鋭い一撃であるサンクチュアリの石づき部分がディーヴァのみぞおち辺りに直撃すると、一点集中の攻撃だったためなのか、中までダメージが貫通していき、フルプレートアーマーに亀裂のようなものが入り始めていく。
「悪いがそのまま寝てもらうぞ!」
コウは一言だけ言い残すと、もう一度サンクチュアリを振り上げて石づき部分を同じ部分へと撃ち込んでいき、銀の兜の隙間から覗かせていたディーヴァの目は白目を剥いていた。
そして亀裂の入ってたフルプレートアーマーはコウの一撃によってみぞおち部分fだけ砕け散り、ディーヴァはそのまま膝から崩れ落ちるようにその場で倒れ込んで、周りにいる路地裏の住人達は歓声が湧き上がる。
またディーヴァの主人と思われるでっぷりと太った醜い男はまさか自身の護衛が負けるとは思ってもおらず、今ではわなわなと震えており、怒りを露わにしていた。
「ふ...ふざけるなぁ~!何を負けてるんだ奴隷の分際でぇ~!」
「うるさいなぁ...負けたんだからさっさとさっきの金貨500枚を出せ」
「そんなものは無効だぁ~!儂は帰らせて貰うぞぉ〜!」
どうやら負けたことを認めるつもりは全く持って無いようで、そのまま倒れたディーヴァを放置して逃げ帰ろうとしだす。
「逃しませんよ〜!」
「ぎゃっ!」
しかしライラが逃がすわけもなく、しっかりと回り込んで、でっぷりと太った醜い男の股間に向けて蹴りを繰り出すと、大きな叫び声と共にその場へ前のめりに倒れていき、とある部分を手で押さえながらぴくりとも動かなくなってしまった。
「うわぁ...痛そうだ...」
「逃げる方が悪いんですよ〜」
「いやまぁそうだけども...そうだ。お金はどこにあるのか聞き忘れたな」
それにしても気絶してしまったということで、今回賭けたであろうと思われる金貨500枚がどこにあるのか分からなくなってしまった。
もしこの場に金貨500枚を持ってきていないのであればティルシーを助け出すことは無理だし、折角勝った賭けも無駄になってしまって振り出しに戻ってしまう。
「しょうが無い...あんまり触りたくないけど探ってみるか...」
とりあえず手元に持っていないか胸元やらポケットなどの場所を探ってみると、何やら大きな袋とともに中からジャラジャラと金属が擦れ合うような音が聞こえる袋が胸元に隠してあったので、引っ張り出して中を覗き込んでみると、そこには金色に輝く硬貨が大量に詰まっていた。
「これだな。じゃあこれ数えてくれ」
「か...畏まりました」
そのまま奴隷の売人に中身を確認してもらうため、コウは金色に輝く硬貨が大量に詰まった袋を流れるように手渡していく。
きっと中には500枚の金貨が入っている筈なので、これで無事にティルシーを助け出すことができるだろう。
「お待たせ致しました。金貨500枚きっちり確認できました」
「ん...じゃあそれ支払いで」
暫くの間、時間を潰しながら待っていると無事に金貨500枚詰まっていたようで、コウはティルシーの代金の支払いとしてそのまま当てることにした。
そして支払いも無事に終えたということで、鉄檻の扉を開けてもらい、猿轡されて捕まってしまっているティルシーを肩に担ぐと、コウ達はニコルの元へ送り届けるため、その場を後にするのであった...。
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