395話
「イザベルさんの屋敷と同じでここも広いですね~」
「そうだな。それにしてもなんでこんな広い家に住むんだろうな?色々と不便だと思うんだが...」
「キュ~」
翌日のコウ達といえば、ローランの中心部にある貴族街へと訪れており、領主であるニコルが住んでいる敷地の外壁周りをひたすら歩いていた。
何故、こんなところに来ているのかというと、昨日冒険者ギルドで話された依頼内容を宿に持ち帰り、ライラに話したところ、簡単そうな依頼内容で依頼報酬が多ければ受けても良いのでは?ということになったため、依頼を受けに来たのである。
そして事前の話通り、依頼書についてはジールに作成してもらったので、後はニコルに手渡し、依頼を受ける旨を伝えるだけであった。
ただニコルの住んでいる屋敷はイザベルの住んでいた屋敷同様、かなり広めに作られているためか、敷地内に入るための入口の門まで歩かされている状態である。
まぁローランという広い街を収めている領主が狭い屋敷に住んでいたりしたら、他の貴族から舐められる恐れがあるため、広く作られているのだろうが、コウ達からしてみればただただ移動が不便であるということしか感じない。
そして雑談でもしながらのんびりと外壁周りを歩いていると、ようやく屋敷の敷地内へ出入りすることが出来ると思われる門が見え、銀色に鈍く輝く鎧を身に纏った門番2人が不審な人物が入らないよう目を光らせて警備をしていた。
「む...?子供とシスターが何のようだ?ここは領主様の屋敷だぞ」
「領主に用があってきただけだ。これ依頼書な」
「ふむ...では領主様に確認させてもらおう。申し訳ないが少々時間を頂く」
門に近づくと、門番がこの先を通さまいといった感じでコウ達の前に立ち塞がるので、領主であるニコルに用があると伝えながらジールから受け取っていた依頼書を門番へと手渡していく。
すると、門番の1人は暫く時間を貰うと一言だけの残し、依頼書を持って屋敷の敷地内へ入っていくので、これは更に時間が掛かりそうである。
そして暫く門の前でライラに領主であるニコルはどんな人物なのか説明しながら待っていると、先程の門番とは別の人物が一緒にこちら向かって歩いてきた。
その歩いてきた人物とはピシッとした黒い礼服を身に纏った白髪頭の初老の男性であり、ペコリと綺麗な角度でお辞儀をされるので、ついコウ達も釣られて会釈をしてしまう。
「旦那様の許可が降りましたので御案内させて頂きます」
どうやらこの屋敷に仕える執事のようで、コウ達の持ってきた依頼書はニコルの元へ届き、確認が出来たようで、とりあえず敷地内に入る許可が無事に降りたのか、大きな門は大きな音を立てて開いていく。
そして案内人である執事の後ろを付いていき、広い敷地内を歩いていくと、ありふれた姿をした屋敷が見え、玄関前に近づいていくと、そこには領主であるニコルがわざわざ出迎えるかのように立っていた。
「やぁコウ君。きっと依頼を受けてくれると思って待っていたよ」
「まぁ他に受ける依頼もなかったしな」
「コウ君の後ろにいるのがパーティーを組んでいる子かな?」
「あぁそうだ。後ろにいるのがライラで肩に止まっているのが従魔のフェニだ」
「初めまして~コウさんとパーティーを組んでいるライラと申します~」
「キュ!」
「ライラさんとフェニ君ね。僕はローランの領主をしているニコルだよ。とりあえずここで立ち話も何だし応接間まで案内するね」
ライラとフェニの自己紹介も終えたということで、コウ達はそのままニコルに屋敷の中にある応接間まで案内されていく。
そして応接間に到着し中に入ると、ニコルは部屋の奥にあるベランダへ抜けていくので、コウ達も一緒に付いていくと、青々とした草木の手入れが行き届いている庭の姿が目の前に広がってた。
「あれが今日伸びきった鼻をへし折るうちの娘だよ」
そんな広い庭の片隅に向かってニコルは指をさすので、視線をそちらに向けると、そこには親であるニコルと同じ赤茶色の綺麗な髪色を持つ、コウと同年代と思われるショートヘアの少女が木剣を持ち、黙々と素振りをしているのであった...。
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