391話
翌日の昼頃。コウ達一行は王都の出入り口である東門へ訪れていた。
何故、この東門へコウ達が訪れているのかというと、純粋にこれからローランへ帰るためであった。
どうしてローランに帰るのかというと、既に白薔薇騎士団の屋敷へ滞在している期間は約1週間以上となっており、流石にこれ以上滞在するのは迷惑になってしまうのではないか?と思ったからである。
そしてそんなコウ達の後ろには馬車が1台停まっており、御者と思われる男性が車輪の部分や馬の健康状態などを入念に確認していた。
ちなみに今回の馬車についてはイザベルが昨日の夜のうちに手配をしてくれた馬車となっているため、そこらに停車している馬車などよりは格段に質は高いと思われる。
「なんだか寂しくなりますね。皆さんまた何時でも来て下さい」
「あぁ気が向いたら会いに来るさ。今度は何かしらのお土産でも持ってくる」
「ふふっ楽しみにしていますね」
どうやらイザベルはコウ達がローランに戻ってしまうというのは、多少なりとも寂しく感じるようなので、以前よりも関係は深まったのかもしれない。
「お待たせいたしやした。何時でも出発できやす」
「ん...分かった。じゃあまたなイザベル」
「イザベルさんまた来ますね~!」
「キュイキューイ!」
「えぇ皆さんお元気で」
すると馬車の最終確認が終わったのか、御者と思われる男性からコウ達へ出発の準備出来たという旨を伝えられるので、そのままイザベルに対して各々は別れの挨拶を済ませると、馬車の中へ乗り込んでいく。
コウ達が全員馬車へ乗り込んだのをしっかりと確認した御者は出発の合図として馬に向かって鞭を振るうと、ゆっくり馬車は車輪を回転させながら進みだし、大きな東門にある特別入口から通り抜けていった。
そして後ろに付いている窓を見てみると、東門の特別入口から手を振っているイザベルの姿が確認でき、それに気づいたライラは窓から身を乗り出してお互いの姿が見えなくなるまで手を振りあっていた。
そのままコウ達を乗せた馬車は舗装された綺麗な道を走り続けると、馬車の後ろに付いている窓から先程通り抜けた東門が小さくなっていくのが見えるのだが、暫く滞在していて慣れてきた王都から離れると思うと、何だか少しだけ寂しさを感じる。
そんな事を考えていると何処からか、ぐぅ~...っと何か聞き覚えのある音が聞こえてきたので、聞こえてきた方向を見ると、そこには照れ隠しをしながらお腹を押さえている姿のライラがあった。
「う~...聞こえちゃいました~...?」
「大きな腹の音だったな。まぁ確かにお腹空いたし昼ご飯にでもするか」
「も~!そこは乙女に配慮して聞こえてないって嘘でも言って欲しいです~!」
「分かった分かった」
その音の正体とはライラのお腹が鳴った音だったようで、隣に座っているライラからポカポカと肩を軽く叩かれながら文句を言われるも、受け流しつつ、コウは収納の指輪の中から蓋で閉じられている籠型のバスケットを取り出す。
籠型のバスケットを取り出すと、隙間から出来たてのパンの香りが顔を出し、馬車内を満たしていき、コウ達の食欲を刺激する。
そして早速、蓋を開けてみると、そこにはホットドッグの様に細長く縦に切れ込みが入った出来たてのパンが幾つか並んでおり、その切れ込みの間には綺麗なピンク色をした分厚いハムや瑞瑞しい野菜が挟まれていた。
またフェニ用としてなのか切り分けられたピィアリの実も別の器へ添えられていたりする。
実はコウ達がローランに帰るということで、白薔薇騎士団の屋敷にいる料理好きな団員が有難いことに、朝から作って出発前に渡してくれた料理なのだ。
そんな有り難みのある料理をライラとフェニに渡すと、美味しそうに食べ始めるので、コウも両手を合わせて作ってくれた団員に感謝しつつ、窓を流れる景色を眺めながら昼食を取り始めるのであった...。
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