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375話

 まさかイザベルが作り出した巨大な竜巻の中を通り抜けてくると思っていなかったため、コウは驚きつつも咄嗟(とっさ)に手のひらへ水球を作り出すと、真上に撃ち出し、すぐに破裂させた。


 するとコウ達の周りを包み込むように水のカーテンが降り、そのまま凍らせると氷の結界が作り出されていく。


 イビルホースフライ達はコウの作り出した氷の結界に対して何度も何度も身を包む硬い甲殻で体当たりをしたり、強靭な上顎と下顎を駆使してなんとか割ろうとしてくるが、今のところはビクともしていない。


 何故、コウが氷の結界を作り出したのかというと、動きの素早いイビルホースフライに対して有効打が無いので、一旦策を考えるために作り出したのだ。


「まさか抜けてくるとは思わなかったな。どうする?」


「ん~私じゃちょっとあの速さは厳しいかもですね~止まってくれれば良いんですけど~...」


「速さにはついて行けますがレイピアであの甲殻を貫くのは苦労しそうです」


「キュ~...」


 どうやらライラはコウと同様に相手の素早さに追い付くことは出来ず、イザベルに関しては追い付くことは出来るのだが、レイピアで相手の甲殻を貫くのが厳しいとのことであった。


 そして同じ空の相手であるフェニを送り込んだとしても、流石に3体同時に相手させるのはやめておきたい。


 また空中の相手でもあることから、中々こちら側からの攻撃は魔法や投擲物ぐらいしか届かないため、どちらにせよ厳しい状況である。


「地面に落ちてさえしてくれればいいんですけどね~」


「そうだな。俺も(はね)を凍らせればあいつらを落とせるんだけどな」


 飛んでいるイビルホースフライの翅を凍らせ、地面に落とし、空へ飛び立つことをさせれなく出来ればいいのだが、その方法が問題だ。


 あの動きが素早いイビルホースフライに対して水魔法を直接当てて凍らせるのは至難の業だろう。


「なんとかあいつらを水で濡らすことさえできればなぁ...」


「んー水で濡らさせることだけなら出来なくもないですよ?」


「本当なのか?どうすればいいんだ?」


「例えば私の作り出す風魔法にコウさんの水魔法を組み合わせるとかどうでしょうか?」


 どうやらイザベルの作り出した風魔法にコウの水魔法を組み合わせれば全方向に水を撒き散らすことができ、素早く動くイビルホースフライに対して有効なのではないかということであった。


「なるほど...まぁやってみないと分からないし試してみるか」


「では私の作る風魔法に上手いこと纏わせて下さいね」


 幸いにもコウの作り出した氷の結界は破られることも無さそうなので、集中してイザベルの作り出した風魔法に組み合わせることが出来るだろうか。


 そしてイザベルは手のひらに球形状の風の塊を作り出し始めるので、コウは球形状の風の塊に対して水の膜で包み込んでいく。


「コウさんそろそろ大丈夫ですか?」


「いつでも問題ないぞ」


「では...いきます!」


 そして掛け声とともにコウは周りを包む氷の結界を解き、水の状態に戻すと、同時にイザベルの作り出した球形状の風の塊はまるで風船へ一気に空気を送り込んだかのように一瞬で大きく膨らんだ。


 その球形状の風邪の塊はすぐに限界点を迎えたのか、大きく爆発し、包み込んでいた水の膜も全方位へ衝撃波の如く、爆風とともに飛ばされていく。


 そんな爆風とともに飛ばされた水の衝撃波をイビルホースフライ達は避けられる訳もなく、全身を包み込む硬い甲殻や透けるように薄い翅の付け根などに水が掛かり、多少なりとも水滴のようなものが全身に付着していた。


「凍れっ!」


 少しの水滴だけでも問題ないということでコウはイビルホースフライ達に付着した水滴を凍らせると、動かしていた翅の付け根が凍ったことによって動かなくなり、そのまま地面へと落下していく。


「ライラさん!」


「落ちれば私の出番です~!任せて下さい~!」


 地面に落ちたイビルホースフライ達は翅の付け根が凍ったことによって空へ飛び立てず、その場で右往左往(うおうさおう)しており、その隙にライラが赤いオーラを身に纏うと、地面を蹴って一気に近づいた。


 そしてライラは地面に落ちた動きの遅いイビルホースフライ達に向かって次々と拳を振り下ろし、硬い甲殻をまるで豆腐のように砕きながらとどめを刺していく。


「ふぅ~...無事に終わりました~!」


「意外となんとかなりましたね」


「キュッ!」


「厄介な魔物だったな...って何の音だ?」


 これで襲ってきたイビルホースフライ達を全て無事に倒せたということで、一息つくも、何故か先程までぶんぶんと撒き散らしていた不快な羽音がまだ止んではおらず、寧ろ何だか増えているような気がした。


 どうしてまだ先程の不快な羽音が止まないのか?というコウ達の疑問についてはレイニーウッドの方向を見ると、すぐに解消されることとなる。


「もしかしてあれ全部さっきの魔物ですか~...?」


「3匹だけとは思ってなかったですけどまさかこんなに多く出てくるとは...」


「まじか...」


「キュ~...」


 そんなコウ達の視線の先であるレイニーウッドの方向には、先程倒した筈のイビルホースフライがぶんぶんと不快な羽音を鳴らし、数百の群となって黒い波のようにこちらに向かって押し寄せて来ているのであった...。

いつも見てくださってありがとうございます!


評価やブクマなどをしてくださると嬉しいですm(_ _)m


次回の更新は6月18日になりますのでよろしくお願いします。

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