370話
狩猟祭から数日後。
無事に終わったということで、街中の至るところに飾り付けられていた装飾は既に片付けられて無くなっていた。
因みにコウ達の狩ったスリーピングシープはというと、冒険者ギルドが買い取ってくれたということで、現在の懐はとても暖かくなっていたりする。
また優勝景品として貰ったイザベルの姿を模した等身大の人形はライラの持つ、収納の袋には入らないし、置く場所も今のところ無いということで、コウが一時的に預かっていた。
そんな狩猟祭後のコウ達は今何をしているのかというと、白薔薇騎士団が拠点としている屋敷の中にあるイザベルの私室で、フカフカなソファーの上へ横になりながらドライフルーツを摘み、ダラダラと日常を過ごしている。
「はっ...まずいなこれは...」
「ん〜?何が不味いんですか〜?このドライフルーツ美味しいじゃないですか〜」
「キュ~?」
「あら?コウさんのお口に合いませんでしたか?」
「いやそうじゃなくて...このままだと駄目人間になりそうじゃないか?」
「ん〜そう言われるとそうかもしれないですけど~...」
「たまには息を抜いたほうが良いんじゃないんですか?」
このままでは俗に言うヒモ男と同じ様な存在になってしまうのではないか?と危機感を覚えたコウはイザベルの甘い言葉に惑わされないよう、ソファーから起き上がり、ぐっと背筋を伸ばす。
「あっ...そういえばコウさんに伝えたいことがありました」
「伝えたいこと?」
「えぇ。以前フェニちゃんについて調べていたのですがエルフ関連の書物に似たような姿をしたものが描かれてました」
イザベルの伝えたいこととは、以前からフェニを調べてもらうようにお願いしていたのだが、その調べていたことについて進展があったようであり、エルフ関連の書物に絵として描かれていたとのこと。
確かローランで活動しているジャンのパーティに入ったエルフであるリリアもフェニを見るや否や雷鳥様と反応を示していたので、エルフ関連の魔物であるのは、ほぼ間違いないかもしれない。
だとするならエルフの国に行って情報を集めたほうがいいのだが、エルフの国は何処にあるのかコウは知らないため、案内できるような人物を探してお願いしないといけない。
今のところエルフの国へ案内を出来そうな人物といえばジャンのパーティにいるリリアや王都のギルドマスターであるディザーぐらいであるが、案内してくれるほどの仲でもないので、エルフの国へ行く機会は当分先の話になりそうではある。
「わざわざ調べてくれてありがとな」
「また何か分かり次第お伝えしますね」
話が終わると同時に部屋の扉がコンコンと軽くノックされ、誰が来たのだろうと思い、コウ達は扉の方に視線を移すと部屋の外から「イザベルいるかしら?」と聞いたことのある女性の声が聞こえた。
そして「どうぞ」とイザベルが部屋の外に向かって返事を返すと、扉に付いているドアノブが回転し、その女性は部屋に入ってくる。
「イザベラお母様どうされたんですか?」
「あら?コウ君達もいるなら丁度いいわね。あなた達にお願いがあって来たのだけどいいかしら?」
「お願い?」
どうやらコウ達にお願いがあるということであり、どういったことなのか詳しい内容をとりあえず聞いてみることにした。
内容としては王都にあるイザベラの屋敷にて、今から約4日後に貴族など身分の高い人物を集めたそれなりに大きな晩餐会を開催するとのこと。
ただその晩餐会を開催するにあたって、料理を振る舞うのだが、とある果実が足りないということで、それをコウ達に取ってきて欲しいらしい。
それくらいであれば冒険者ギルドにでもお願いすれば良いのでは?と思ったのだが、どうやらその果実は採取するとすぐに劣化していってしまう少しだけ面倒なものであるため、収納の指輪や袋を持つコウ達にお願いしたいということであった。
「なるほどな。俺は別にいいけどイザベル達はどうする?」
「まぁイザベラお母様のお願いですし私は問題ないですよ」
「コウさんが良いなら私もいいですよ~」
「キュ!」
全員にどうするのか聞いてみると、そのとある果実を取りに行くのは問題ないということであったため、コウ達はイザベラのお願いを聞くことにして、各々は重い腰を上げると、出発する準備をするのであった...。
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