362話
部屋の中に入ってきた人物というのは、イザベルの母であるイザベラであり、以前会ったのは別荘地で泊まった時以来だろうか。
その際は旦那であるライエルも一緒におり、色々とすれ違いもあったせいで、アールベールという騎士と半ば強制的に戦わされたという苦い思い出があったりする。
「どうしてイザベラお母様がこちらに...?」
「あら?愛しい娘に会いに来ちゃ駄目なのかしら?」
「いえ...駄目とは言っていませんが...」
「ならいいじゃない。それにしてもこんなところでコウ君と逢い引きをしているなんて思いもしなかったわ」
「違います!休憩としてお茶をしているだけです!ライラさんもいるでしょう!」
「そうですよ〜!逢い引きしてるのは私です〜!」
イザベルは誤解を解くように何とか現状を説明しようとするも、今度はライラがその言葉に反応して、更に話がややこしくしくなる方向へと向いていってしまう。
「ライラも一々反応してややこしくなることを言うな。それにしてもイザベラさんもただ会いに来たって訳でも無いんだろ?」
このままでは話が更に拗れていき、訳わからなくなってしまうと思ったコウはライラの余計な一言にツッコミを入れつつ、話の流れを戻すためにイザベラへ質問を投げた。
「可愛い娘が狩猟祭の裏方で苦労している話を小耳にしたから手伝いに来たのよ」
「本当ですか!?イザベラお母様!」
どうやらイザベルの行っている狩猟祭の裏方業務が忙しそうにしているということを何処かしらで聞いたようであり、善意で手伝いに来たとのことであった。
現状、机の上には山の様に大量の書類が積み重なっているため、イザベルにとって母であるイザベラは、まさに救いの女神に見えているのか目をキラキラと輝かせてる。
とはいえ手伝いが1人増えたところで焼け石に水のように思えるのだが、イザベルを見る限り、強力な助っ人を得たかのように喜んでいるため、それほどまでにイザベラは優秀なのだろうか?と疑問に思ってしまう。
「イザベラさんってそんな仕事ができるのか?」
「普段はあれですが昨年の狩猟祭の全てをまとめていたのは実はイザベラお母様なんです!」
「余分な一言が入ってたけど愛娘に褒められると嬉しいわねぇ」
イザベルにどれくらい凄いのか聞いてみると、昨年の狩猟祭を全てまとめることが出来るほどの有能であり、そんな自身の娘からの評価の高さにイザベラは腰に手を当てて胸を張って自慢げにしている。
「それにしてもコウ君やライラさんは今年の狩猟祭に参加しないのかしら?」
「んー特に参加する予定はないな。推薦とかもされてないし」
「確かに何も聞いてないですね~」
「もし参加できるとしたらどう?」
「まぁお祭り自体は好きだし参加できるならするけど...」
「私も参加できるなら参加してみたいですね~」
狩猟祭に参加はしないのかとイザベラに聞かれるも、今のところ冒険者ギルド側からは推薦や参加するかなどについての話は一切聞いていない。
まぁ依頼を受けている訳でもないし、他にやることもないため、狩猟祭というものに参加してもいいとは思うのだが、話すら聞いていない以上、参加できるのかどうかもわからない。
「でしたら私がギルドマスターに言っておきましょうか?今回は裏方ですのである程度は融通が利きますし」
「いいんじゃないかしら?今のところ冒険者ギルド側の参加者はいないんでしょう?」
「えーっと...今のところ参加者はいないですね。では2人ともギルドマスターに推薦しておきますね」
「えぇ...そんなのでいいのか...?参加できるのは嬉しいけどさ」
「おぉ~ありがとうございます~!コウさん楽しみですね~!」
イザベルは近くにある参加者の名簿と思われるものをペラペラと捲り、中身を確認してみると、どうやら年に一度行われる王都で狩猟祭だというのに現状の冒険者ギルド側からは参加者がいないようであった。
そのためイザベルから推薦ということで、コウとライラの2人は年に一度行われる狩猟祭というお祭りに冒険者枠として参加することとなるのであった...。
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