361話
「皆さんお久しぶりですね。それにしてもどうしてコウさん達がここに...?」
「いつでもお茶会に来てくれって手紙に書いてあったからな」
「あぁー...そういえばそのようなことを手紙に書いた記憶がありますね。折角来て下さったのでお茶にしましょうか」
イザベルは座っている椅子から立ち上がると、積み重なった書類の山の裏からひょっこりと姿を現し、部屋の隅にある棚の中からケトルのようなものを取り出して近くにあった水差しから中に水を注いでいく。
どうやって水を沸騰させるのだろうと思って暫く見ていると、ケトルの注ぎ口の部分から湯気のようなものが吹き出し始めた。
「それって魔道具なのか?」
「そうですよ。少し値は張りましたが重宝してますね」
コウの質問に返しながら、イザベルは沸騰したお湯を茶葉が入っているティーポットの中へ空気を含ませるようにお湯を注ぎ、時間を測りながら蒸らす。
そして紅茶の良い香りが部屋の中に広がってくる頃合いになると、温めておいた3つのティーカップへ注いでいく。
「お待たせしました。上手く淹れているかわかりませんがどうぞ」
「わぁ~良い香りですね~頂きます~」
「ん...お茶を淹れてくれてありがとな」
紅茶の入ったティーカップを目の前に置かれるので、コウとライラはお礼を言いつつ、香りを楽しみながら熱々の紅茶で口の中を火傷させないように少しずつ飲む。
そして熱々の紅茶をちびちびと飲んでいると、イザベルの後ろにある山のように積み重なった書類の山が目に入り、気になったコウは聞いてみることにした。
「それにしても凄い書類の山だな」
「狩猟祭っていうのが王都で開催される予定でしてそれに関する書類ばかりですね」
「狩猟祭?」
「毎年この時期になると開催されるお祭りですね」
詳しい内容を聞いてみると狩猟祭というのは年に一度王都で行われるお祭りであり、簡単に言えば王都の近くにある森で魔物を狩り、誰が一番大物を狩ったのかを競い合うものらしい。
また狩猟祭には力に自信のある貴族が参加したりするのだが、冒険者ギルドからも数名程、推薦で参加出来たりするとのこと。
「イザベルさんは参加しないんですか〜?」
「私は昨年に貴族枠で参加して優勝しちゃったので裏方に回されたんです。はぁ...ただ正直これはめんどくさいですね」
どうやらイザベルは昨年、この狩猟祭に参加し、貴族枠で見事優勝を果たしてしてしまったため、今回は裏方に回されたようなのだが、あまりの忙しさなのか小さくため息を付いて愚痴を零す。
まぁ実際に目の前に積み重なった書類の山を見るだけで、どれだけ忙しいのかというのが何となく理解でき、イザベルが珍しく愚痴を零すのはしょうがないだろう。
そして暫く、日頃の鬱憤が溜まっていたイザベルの愚痴を聞きながら淹れてくれた紅茶を飲んでいると、不意に部屋の扉がコンコンとノックされ、扉を開けて中に入ってきたのは先程、屋敷の花壇で水やりをしていたエリスであった。
「エリス?どうしたの?」
「失礼します。その...団長へ会いに来たという方がいまして...」
エリスはイザベルに会いたいという人物がいるということを報告しに来たようなのだが、それにしてもなんだか疲れた様子である。
「私へ会いに...?それはいった...「この部屋ね。会いに来たわよイザベル!」
「イザベラお母様!?」
誰が会いに来たのか?とイザベルがエリスに対して聞こうとするも、質問を遮るような大きな声で部屋の外からその会いたいと言っていた人物が現れたため、すぐに答え合わせとなるのであった...。
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