360話
「ここに来るのも久々ですね~」
「いつぶりだったか忘れたな」
「キュ!」
翌日、コウ達はルーカスと宿で別れを告げた後、貴族街を少しだけ歩き、ようやく白薔薇騎士団の拠点としている敷地内の入口である大きな門が見えてくる。
白薔薇騎士団が拠点としている屋敷に辿り着くには目の前にある大きな門を通り過ぎないといけないのだが、そこには男勝りの門番であるミルサが不審な人物を通さないように目を光らせて立っている筈である。
そして門の前に到着すると案の定、ミルサがいつものように立って門番としての勤めを果たしており、現れたコウ達に気がついたのか、手を上げて挨拶をしてきたのでコウ達も同じように手を上げて挨拶を返す。
「やぁ みんな久しぶりだね」
「お久しぶりです~」
「キュイ!」
「元気にしてたか?」
「私はずっと元気さ。今日は団長に会いに来たのかい?」
「まぁそんな感じだ。中に入ってもいいか?」
「大歓迎さ。そうだ 君達にお願いなんだけど団長が部屋に缶詰め状態だから引っ張り出して息抜きさせてやっておくれ」
どうやらイザベルはここ最近、缶詰状態になりながら黙々と仕事をしているようであり、ミルサに部屋からひっぱりだして息抜きの1つぐらいしてもらいたいとお願いされる。
「じゃあイザベルを引っ張り出してくるよ」
「私達に任せてください~」
「キュイー!」
「じゃあ頼んだよ」
とりあえず敷地内に入る許可は貰えたので、コウ達はそのまま門を通り抜け、イザベルがいるであろう屋敷に続く、広い庭の中をのんびりと歩きながら向かっていく。
そしてそんな広い庭の中では白薔薇騎士団の団員達が各々好きなことをしているのだが、訪問者であるコウ達のことを知っている者が多いため、声をかけてきたり、フェニに干し肉を与えにきたりと高確率で絡まれてしまう。
それにしてもこれだけの多くの団員達に話しかけられると、なんだか有名人になった気分である。
「みんなフェニと話したいってさ。干し肉を貰ってきたらどうだ?」
「キュ!」
とはいえ大半の団員達はフェニに会いたい者が多かったため、コウはその場をフェニに託し、ライラと一緒に屋敷へと向かうことにした。
置いていったフェニといえば団員達から干し肉を貰い、満足そうにしていたので、特に問題はないだろう。
そして屋敷の前に到着すると、そこにはイザベルの側に普段はいるエリスが花壇へ水やりをしており、コウ達の存在に気づいたようで、水をやりの手を止めてこちらに向かって歩いてくる。
「あら?久しぶりね。あなた達はなんでここにいるのかしら?」
「こんにちは~」
「久しぶりだな。今日はイザベルとお茶しに来たんだ」
「あらそう...まぁ団長も疲れているご様子だし確かに息抜きには丁度いいかしら」
「イザベルはいつもの部屋か?」
「えぇ団長はいつもの部屋にいるわよ。案内はいるかしら?」
「いや問題ない。ありがとうな」
エリスから部屋まで案内しようかと言われるが、この屋敷内には何度も来ているお陰で、ある程度どこにどの部屋があるのか把握していた。
案内を断りつつ、コウ達は屋敷内に入ると、そのままイザベルがいるであろう部屋へ迷いなく、一直線に向かって歩き出す。
「この部屋ですよね~」
「あぁそうだな。イザベル入ってもいいかー?」
とりあえず部屋の前に到着したということで、コウは声を掛けながら2回ほど軽く扉をコンコンとノックをすると、部屋の中からバサバサと何か大量の紙のようなものが落ちる音が聞こえてきた。
「えぇ!?コウさんですか!?部屋に入るのはちょっと待ってください!」
「あーわかった。準備できたら教えてくれ」
「焦らなくてもいいですよ~」
イザベルは不意を突かれたかのように驚く声を上げると、部屋に入るのは少し待ってほしいと言われてしまった。
まぁここ最近、イザベルは缶詰状態で仕事をしていたため、きっと部屋の中が散らかっており、少しでも部屋の中の片付けをしたいのだろう。
「お待たせしました!入っても大丈夫です!」
暫く壁際に立って背をもたれさせかけながらライラと喋っていると、イザベルから準備ができたという返事が部屋の中から聞こえてきた。
そしてコウは扉を開けて部屋の中に入るも、視界に最初入ったのは机の上へ山のように積み重なった書類であり、会いに来た筈のイザベルは書類の山の後ろに隠れているのか姿が見えないのであった...。
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