359話
グリッターイーグルに襲われてからというものの、それ以降は特に何事も問題はなく、順調に旅は進んでいき、少し予定よりは遅れたが、深夜になる前には正門をくぐり抜け、王都へ無事に到着することが出来た。
ちなみに倒したグリッターイーグルに関してはかなりボロボロの状態ではあるのだが、素材自体は売れ部分もあるということをルーカスから言われたので、収納の指輪の中へ回収しており、ローランに戻った時にでも解体倉庫へ出そうと思っていたりする。
そして深夜になる前ということで、王都内の食事処は大体が店の入口を閉めかけていたのだが、コウ達は王都に向かう途中の馬車内で食事を済ませていたため、今からは宿を探すぐらいだろうか。
「もし宿を用意されてないのであれば護衛のお礼としてこちらでご用意させて貰えないでしょうか?」
「この時間から探すのも面倒ですしお願いしたらどうですか~?」
「あー...確かにそうだな。じゃあルーカスに任せても大丈夫か?」
「勿論でございます。よくお世話になっている宿がありますのでそちらに向かわさせてもらいます」
確かにライラの言う通り、この時間帯から宿を探すとなると、満室になっていることも多いため、何度も宿を巡って探し回る羽目になる可能性が高い。
そのため、ここはルーカスに宿を用意してもらった方が無駄な手間が省けて良いかもしれない。
そして王都の中を馬車に乗って進んでいくも、深夜前ということで、ふらふらと酔っ払った冒険者が歩き回っているのが窓から見え、馬車に轢かれてしまわないか少し心配である。
「さぁ宿に到着致しました。ここがよくお世話になっている宿になります」
小窓からルーカスに到着した旨を伝えられたので、コウ達は馬車から降りると、そこにはいつも王都に来た際に泊まっている安らぎの森亭という宿ではなく、貴族の屋敷と似たような作りをした宿であった。
外観の作りを見る限り、かなり凝ったものとなっているため、一晩泊まるだけで値が張りそうな宿であり、やはりルーカスは商人として成功しているので、このように良さげな宿を知っているのだろう。
「へぇ...悪くないな」
「部屋がどんな感じなのかこれは楽しみですね~!」
「キュー!」
そして、そのまま宿の中へ入ると、広々とした空間のロビーがコウ達を向かい入れ、奥を見ると左右に階段が伸びており、中央には受付と思われる場所にはルーカスよりも年上と思われる恰幅の良い男性が座っていた。
「おやおやルーカスではないか。久しいな」
「伯父さんお久しぶりです。お部屋は空いていますか?」
「勿論空いているとも。後ろの方々も一緒でいいのか?」
「えぇ私の友人ですので1人1部屋づつ手配をお願いします」
2人の会話内容を後ろから聞いている限り、受付をしている恰幅の良い男性はルーカスの伯父とのことであり、どうやらこの宿は身内が経営しているらしい。
そしてルーカスは話を程々に切り上げて宿の代金を支払い、伯父と呼んでいた恰幅の良い男性から部屋の鍵を受け取ると、すぐにコウ達の元へ歩いてくる。
「お待たせしました。こちらが部屋の鍵になります」
「色々と助かった。ありがとな」
「ありがとうございます〜」
「いえいえ王都まで無事に辿り着けたのはコウさん達のお陰ですので細やかなお礼になります」
それにしても王都まで護衛依頼をしただけで、一般的な冒険者が泊まる宿よりも遥かに値が張るような宿を1人1部屋手配してくれるとはかなり気前が良くてありがたいことである。
とりあえず時間も時間ということで、コウ達はその場で解散とし、旅の疲れを癒やすためにルーカスが用意してくれた部屋へ各々は向かい出す。
そして部屋の前に到着したコウは鍵を開けて中に入ると、そこには1人では余しきってしまう程のベットが置いてあったり、常温ではあるのだが、封の空いていない数多くの果実酒と思われる飲み物が入った容器が机の上に並べられていた。
「おぉ凄いな」
「キュ!」
感動しながら部屋に入り、近くにあったポールハンガーに脱いだ外套を掛けてからベッドの上に飛び込んでみると、ふかふかで柔らかい感触と太陽の良い香りが全身を包み込んでいく。
「ふわぁ~あ...」
そしてコウは横になって目を閉じ、今日一日の出来事を振り返りながら明日の予定について考えていると、徐々に意識は黒く塗り潰されていき、いつの間にか寝てしまうのであった...。
いつも見てくださってありがとうございます!
評価やブクマなどをしてくださると嬉しいですm(_ _)m
次回の更新は5月17日になりますのでよろしくお願いします。




