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343話

「なんだこの新人の引率って」


 机に置いてある依頼書には新人冒険者の引率ということだけしか書いておらず、詳しいことは何一つ書かれていないので、サーラに一応聞いてみることにした。


「えっとですね...」


 詳しい内容を聞いてみると、どうやらここ最近、ローランでは新人の冒険者が嬉しいことに増えてきたらしい。


 ただ新しい冒険者が増えることは良いことなのだが、実力がない新人冒険者では精々ゴブリンの討伐や薬草採取などの簡単な依頼ぐらいしかこなせない。


 そのため、冒険者ギルド側は新人冒険者の早期育成がしたいということで、ギルド職員達を使って、教育を行おうと思ったが人手が足りないせいで、中々手が回らないとのこと。


 そこで冒険者ギルドがどうすればいいのかと考えた結果、それなりに活動して信頼のおけそうな冒険者達に教育をお願いすればいいのではないかという話となり、今回コウへ非公開の依頼として紹介したということであった。


「ギルド側が正式な依頼として(おおやけ)に出すのは駄目なのか?」


「それも少し試してみたんですが...なんというかその...報酬目的で微妙なランクの冒険者の方とかが来てしまうんですよねぇ...」


 コウの言った通り、実際にその引率の依頼を木のボードへ貼り出してみたようだが、報酬目的でDランク冒険者など、まだまだ新人に毛が生えたような者達が受けようとしてくるらしい。


 また中にはCランク冒険者以上の丁度良さげな者も来たりはするのだが、依頼の内容を説明している段階で女性冒険者をあえて希望する者も多かったということで、現在では信頼の置けそうな冒険者にお願いするため、非公開の依頼となってしまったようである。


「なるほどな。で...肝心の報酬は?」


「んー大体1日あたり金貨1枚ですね。人数が1人増えれば1枚追加となります」


 1日あたり金貨1枚となると、確かにDランク冒険者やCランク冒険者などからしてみれば美味しい依頼となるので、受けたがる理由は何となく理解出来てしまう。


 逆にBランクから上の冒険者からしてみれば、他の依頼を受けていた方が楽に稼げるだろうし、コウから見ても今泊まっている小鳥の止まり木という宿の宿泊費1日分にすらならないので、あまり依頼を受ける旨味がない。


 まぁ依頼内容自体はそこまで難しくないため、報酬が少ないのはしょうがなく、どちらかと言えば慈善活動に近しい感じと思われる。


「うーん...報酬がそこまでだな」


「確かに報酬は多くはないですが...ここは冒険者ギルドのためを思ってお願いできませんか?」


「いやまぁ暇だけど...でも俺はそこまで冒険者歴が長くないし人に教えれるほどじゃないと思うんだが」


 まぁ別にコウとしては今のところ他に特別な依頼を受けている訳でもないし、お金に困ったりしてる訳でもない。


 それにどちらかといえば暇なので新人冒険者を見てもいいと言えばいいのだが、正直言ってあまり人に教えるほどの自信はなかったりする。


「大丈夫です!コウさんは今まで失敗した依頼は無いですし何たって最速のBランク冒険者ですから!」


 そんなコウの言葉を否定するかのようにサーラは首を横に振り、やる気を出させるためなのか、あれやこれやと良さげなところを褒めてくる。


 そして周りにいるギルド職員もサーラと同じことを思っていたのか、ウンウンと頭を縦に振って頷いていた。


 そこまで言われてしまうと一度だけお試しとして依頼を受けてみるのも悪くはない気がしてくる。


 ただライラとは一緒にパーティーを組んでいるし、1人で勝手に決めるのは良くないということで、一旦この依頼については保留として相談をした方がいいだろうか。


「あー...じゃあライラに聞いてみてから受けるかどうか決めていいか?」


「いつでもお待ちしていますから大丈夫ですよ!」


 念のため、サーラに依頼を受けるかどうかは相談してからでもいいかと聞いてみると、特に急ぎの依頼ではないということもあって何時でも待っているとのこと。


 ということで、コウはこの話された依頼についてライラに相談するべく、小鳥の止まり木へ戻ることにし、帰ってくるであろう夜の時間帯までのんびりと部屋で過ごすのであった...。

いつも見てくださってありがとうございます!


評価やブクマなどをしてくださると嬉しいですm(_ _)m


次回の更新は4月15日になりますのでよろしくお願いします。

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