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338話

「さて...ディザーさんはいるんだろうか」


 コウは安らぎの森亭からゆっくりと時間を掛けながら歩き、ようやく冒険者ギルドまで辿り着いたので、木製の扉を押して軋む音を鳴らしつつ、中へ入っていく。


 受付には昼下がりということで、昼食を食べ終えた受付嬢達は眠そうに欠伸を噛み締めつつ、襲い掛かってくる睡魔という強敵の猛攻に耐えながら、手元に何枚とある書類と睨めっこしている。


 そんな眠そうに書類を黙々と片付けている受付嬢にコウはギルドマスターであるディザーはいるのか聞くため、とりあえず話しかけることにした。


「少し聞きたいことがあるんだけど良いか?」


「問題御座いません。どう致しましたか?」

 

「ギルドマスターのディザーさんっていたりしないか?」


「申し訳ないのですがギルドマスターは外出中でして...もしよろしければご用件を承りますが」


「外出中か...出来れば本人と直接話したいことなんだが...」


 どうやらディザーはこの冒険者ギルドにはおらず、何処かへ出掛けてしまっているようであった。


 受付嬢からは要件があればディザーが帰ってきた際に伝えると、提案されるも内容としては誰彼構わず話せる様なものではなく、あまり伝言として残しておきたくはなかったりする。


「何処に行ったか知ってたりしないか?」


「確か王都内にある聖堂へ怪我の様子を見るために向かうとおっしゃっていましたよ」


 どうやら王都内にある聖堂に向かったということであり、怪我の様子を見ると言っていたらしいので、ディザーはどこか怪我でもしているのだろうか?


 以前会った時は特に怪我などをしている様な感じはしなかったし、誰かに怪我をさせられたり、怪我をするような人物とも思えない。


「なるほど...仕事中に教えてくれてありがとうな」


「いえいえ。どう致しまして」


 とりあえずディザーに会いたいなら、その王都内にあるという聖堂へ今から向かうのが良い筈なので、コウは受付嬢にお礼を言うと冒険者ギルドから外に出る。


「しまった...聖堂の場所を聞き忘れたな。あー...まぁ誰かに聞けばいいか」


 ただ意気揚々と冒険者ギルドから出たのは良いが、肝心な聖堂の場所を聞き忘れてしまったことに気が付いた。


 しかしそこらで店を構えている人やこの辺りに住んでいそうな住人に話を聞きながらでも、ディザーがいるであろう聖堂にたどり着ける筈だと思い、コウは再び王都内を歩き出すことにした。


 そして色々な人に聖堂が何処にあるのかを聞きつつ、幾つかの道を曲がりながら大量の人混みの隙間を縫って王都内を進んでいくと、聖都シュレアにある大聖堂と似たような作りをした聖堂がチラリと顔を覗かせた。


「あれだな」


 その建物の壁は真っ白な材質で作られ、大きめに作られた色鮮やかなステンドグラスが壁に埋め込まれている。


 聖都シュレアにある大聖堂と比較すると、かなり小さめな作りとなっているのだが、神聖な雰囲気はさほど変わらない。


 そして入口である扉の横には赤い十字マークの看板も取り付けられているので、ここは病院としても機能しているのだろう。


「とりあえず中に入ってみるか...ってあれは」


 ディザーが本当にこの建物の中にいるかどうか分からないため、コウは聖堂の中へ入ろうとすると、見覚えのある人物が中から出てきた。


 その見覚えのある人物とは、コウが探していたディザーであり、あちらも同じように気が付いたのかこちらに向かって歩いてくる。


「何故お前がここにいる?」


「いやディザーさんに用があって来たんだが...怪我は大丈夫なのか?」


「怪我?いったい何のことだ?」


 ようやく会えたディザーに怪我の調子はどうだろうかと尋ねるも、何の話かわからない様子で、なんだか話が噛み合わない。


 疑問に思ったコウはディザーの全身を見るも、どこかしら怪我をしている様子はないので、これは自分の勘違いだったのではすぐに理解する。


 ただ受付嬢は怪我の様子を見るために聖堂へ向かったと言っていたことを思い出す。


 もしかすると、実際に怪我をしたのはディザーではなく他の人であり、その怪我をした人の様子を見に来たのかもしれない。


「あぁなるほど...私が怪我をしているとでも思っていたのか」


 ディザーもコウと同じように話が噛み合わなかったことについて理解したのか、鼻で笑われてしまい、なんだか心配して損した気持ちになってしまう。


「まぁいいや...というかディザーさんは怪我をしてる人を見舞いすることもあるんだな」


「私を人でなしか何かだと思っているのか?言っておくがお前にも関わりのある人物なんだがな」


 関わりのある人物...?王都で知っている人物といえば、白薔薇騎士団の団長であるイザベルだったりする。


 ただイザベルが怪我をしているとするならば聖堂などではなく、普段から生活している白薔薇騎士団の拠点で治療するだろうし、その線は薄いだろうか。


 コウとしては王都にイザベル以外の知り合いなどいないため、全くもって見当もつかない。


「いったい誰なんだ?」


「ふむ...ここで名前を出すぐらいなら会ってもらった方が話が早いだろう。付いて来ると良い」


 ディザーはそのまま振り返ると、再び聖堂の中へ入っていってしまうので、とりあえず追いかけるようにコウも後ろへ付いていくのであった...。

いつもお読みくださってありがとうございます!


評価やブクマなどをしてくださると嬉しいですm(_ _)m


次回の更新は4月5日になりますのでよろしくお願いします。

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