328話
「あっ!コウさんじゃないですか~!置いていくなんてひどいです~!」
「悪かったって...というか自由にその赤いオーラを使えるようになったのか?」
部屋に入ると同時に文句は言われるが、そこまでライラの機嫌は悪くなかった。
そのため、コウは機嫌を取るために手土産として選んでいた屋台の軽食を出すことをやめ、軽く謝罪をしながら赤いオーラが自由に操れるようになったのか聞いておくことにした。
自由自在に操ることが出来るようになったのならば、赤いオーラがどんな様なものなのか、知っておいたほうが良いだろう。
もし危険そうなものであれば、何かしら対策はしないといけないだろうし、逆にデメリットが無く有用なものだとするなら、有効活用したほうが良いという判断ができるからだ。
ただ魔人であるレヴィエールが贈り物と言っていたものなので、正直なところ不安は拭えない。
「え~これですか~?これは赤いオーラで包み込んでいる部分の力が強くなるみたいです〜」
どうやらこの赤いオーラについて簡単にいうとバフのようなものであり、包み込んだ部分の能力を向上させてくれるといったものであった。
例えば手足を赤いオーラで包み込んだとするならば身体能力が上がり、肉弾戦を得意とするライラとはかなり相性が良いものとなる。
またこの赤いオーラは自身だけではなく、衣服などにも使えるようで、強度が上がったりするなど、多種多様に使えるとのこと。
「身体に負担とかは無いのか?」
「ん〜今のところ問題は無さそうです〜」
とはいえこんな便利そうなものが、タダで使えるとは思えなかったため、何かしらの代償はないのか聞いてみるも、今のところは特に無いらしい。
しかし使い始めてまだ少しという段階なので、これを持続的に使えばどうなのかわからないため、油断はできないだろうか。
「うーん...それなら良いんだけど...。そういえばどうやって赤いオーラを出してるんだ?」
「赤いオーラを出す方法は~...ってこれは恥ずかしいので内緒にします~」
「なんだそれ...まぁ話したくないならいいけど」
赤いオーラを出す条件については何故かあまり話したがらないので、無理やり聞くのは良くなさそうである。
まぁ本人が恥ずかしいと言っているので、そこまでデメリットのあるようなものではない筈だ。
「そういえばリリネットっていう元聖女さんに会ったぞ」
「え"っ!?もしかしてなんですが~私がここにいることを話したりしちゃいましたか~...?」
そして話題を変えるためにリリネットの名前を出すと、ライラは急に渋い顔をして、おずおずと様子を伺う様な雰囲気を醸し出しつつ、自身のことについてどこまで話をしたのかと、詳しく聞こうとしてくる。
「いやまぁここにいることは話してないぞ。今度連れて行くとは約束したけど...」
「うへぇ~...まじですか~...」
もしかしたら2人は仲が悪いのだろうかという思考が一瞬だけ頭を過ったが、リリネットはライラのことを心配していたりしたので、そうは思えない。
となるとライラが一方的に苦手意識を持っているだけなのかもしれない。
「苦手なのか?」
「聖女候補だった頃に凄く厳しい方だったので未だに苦手なんですよ~...」
どうやら当時、ライラが聖女候補として大聖堂に勤めていた頃、リリネットはとても厳しい人物だったようで、かなりしごかれたらしい。
その時の思い出があるため、ライラはきっと未だに苦手意識を持ってしまっているのだろう。
とはいえ先程、会った時は物腰柔らかい人物であり、そんなライラが言うような厳しいといった雰囲気は感じなかった。
「約束しちゃったしたまには顔ぐらい見せたらどうだ?」
「親みたいなことを言わないで下さい〜...まぁ良いんですけど〜...」
あまりこの聖都シュレアに来る機会は無いため、少しぐらいリリネットに会ってみたらどうだと提案すると、渋々ではあるが顔を見せることにするらしい。
まぁライラも聖女候補から抜け出し、冒険者になったということなので、昔のように厳しくされないだろうし、この機会で苦手意識を無くしてもらえれば幸いである。
そんなこんなでコウとライラは今日起こった出来事についてお互い、雑談としてあれこれ話し合いつつ、久々にゆったりとした1日を過ごすのであった...。
いつもお読みくださってる方々ありがとうございます!
評価やブクマなどをしてくださると嬉しいですm(_ _)m
次回の更新は3月16日になりますのでよろしくお願いします。




