326話
コウは用意されていた馬車に揺られながら、真っ白で綺麗な建物が立ち並ぶ聖都シュレアの中を進んでおり、中央区にある一番大きな建物であろう大聖堂が見えてきた。
そして大きな大聖堂の前で馬車はゆっくりと停止し、コウ達は下車するとそこには一般人に混じって多くのシスターや神父が歩き回っていたりする。
「到着しました。こちらへどうぞ」
「ん...分かった」
「キュッ!」
一緒に乗っていたシスターも馬車から降りてくると、早速案内してくれるようなのだが、一般人に混じってそこらを歩き回っている他のシスター達も同じ様な服装をしているため、間違って他の人についていかないよう、しっかりと後ろについて歩いて行くことにした。
大聖堂の中に入ると、天井部分や窓などに取り付けられている精巧に作られたステンドグラスから太陽の光が入り込み、ぽかぽかとした暖かさが身体を包み込む。
そういえばこの大聖堂に来たのはいつぶりだろうかと思い返すと、確かCランク冒険者になるための依頼として荷物を運んだ時以来だろうか。
あの時は入ってすぐの入口あたりで荷物を手渡しただけであったのだが、今回は受付を通り過ぎて大聖堂の奥まで連れて行かれることとなった。
奥に続いていく通路は大きく作られており、この通路を歩いている者はシスターか神父しかおらず、冒険者の格好をしているコウは若干浮いていたりする。
「到着致しました。こちらの中へお入りください」
大聖堂の奥に続いていく通路を案内してくれているシスターについて歩いていくと、白を基調とした大きな扉の前へと到着し、中に入るように指示をされた。
大きな扉を開くと、目の前に現れたのは吹き抜けのような大部屋であり、精巧に作られたステンドグラスがぐるりと壁一面に取り付けられているため、外の光が入り込み部屋の中というのにかなり明るい。
また大部屋の中心部には天へ祈るようなポージングをした女性の石像が作られており、どことなく神秘的な光景であった。
「うわっ...凄い部屋だな。ん?誰だ?」
「キュイ?」
そんな女性の石像の足元には修道服を身に纏った人物が膝を付きながら同じ様なポージングで祈っているではないか。
その祈っていた人物はコウが入ってきたことに気づいたのか、祈るのをやめて立ち上がり振り返ると、身綺麗な老婆であった。
「あらあら...お待ちしておりましたよ。コウ君とフェニちゃんだったかしら?ようこそ大聖堂へ」
「えーっと...」
「ごめんなさいね一方的に名前を知っていて。私の名前を知らないわよね。私はリリネットと言うわ」
「リリネットか。よろしくな」
「キュッ!」
目の前の女性は自身の名前を名乗りながらよろしくねと、片手を差し出してくるので、コウも片手を前に出し、握手を交わすことにした。
最初にお偉い人物と聞いていたのでもう少しお堅いイメージだったのだが、実際には想像よりも物腰柔らかい人物だという印象を受けて一安心する。
「そういえばライラさんは冒険者として頑張れていますか?迷惑は掛けていませんか?」
そしてお互いの挨拶も終えたということで、今回この大聖堂に来た本題へ入ろうとすると先にリリネットの口が開き、普段のライラの様子を聞かれてしまった。
どうやらライラと一緒に冒険者としてパーティーを組んでいることを知っている様子であり、どこかしらで情報を得ているのだろう。
まぁ元々ライラは聖女候補としてこの大聖堂にいたので、リリネットからすれば年若い娘が冒険者をしていることに対して色々と心配なのかもしれない。
「ライラ?あー...頑張ってると思うぞ。色々と助けて貰ってるしな」
「それは良かったです。あの子は少し抜けてるとこが多いですから。これからも末永くあの子をよろしくお願いしますね」
どうやらこの大聖堂でもライラは抜けている判定されているようである。
ライラは最初に出会った頃は路銀が付きてしまい腹を空かせて道端で倒れていたりしていたので、抜けている面は確かにあるかもしれない。
リリネットからはそんな抜けているライラを含みのある言い方で任せると言われてしまったので、少しだけコウは返答に困ってしまう。
「そういえばお礼があるって聞いてきたんだけど...」
「老人の話に付き合ってもらってごめんなさいね。これを貴方に渡しておくわね」
雑談も程々にしてようやく本題である御礼の品について話を切り出すと、既に用意してあるようで、そんなリリネットが手渡してきた物とは十字架の紋章が彫られたチェーンメダルであった...。
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