324話
あれからというものコウは残されたシスター達を聖都シュレアへと案内したり、色々と後始末が大変であったが、1日も経過するとようやく一息つけるぐらいにはなっていた。
ライラに関しては多少の打撲跡があるぐらいで、そこまで致命的な怪我をしていなかったということであり、以前お世話になったことのある孤児院のベッドを借りて寝かさせてもらっていたりする。
そんなコウはベットの上で眠っているライラに対して時折、体調に変化がないか様子を見ながら部屋でのんびりと時間を過ごしていた。
「う~...?」
するとほぼ丸一日眠っていたライラはようやく目が覚めたようであり、上半身をゆっくり起こすと寝ぼけた目を擦って眠気を覚ましていた。
「おっ?やっと起きたな」
「キュイキュイ!」
そんな目を覚ましたライラの身体にどこかしら悪いところが無いかどうか聞くためにコウはベッドの側までいくと腰を掛け、フェニはそのままライラへと飛び込んでいく。
「えぇ~!?なんでコウさんとフェニちゃんが~!?」
するとコウとフェニの存在にライラは口を大きく開きながら驚き、今の状況が把握できていないようである。
そしてある程度驚いた後、ライラは何故ローランにいる筈のコウ達がこの場にいるのか?そしてこの場所は何処なのか?他のシスターはどうなったのか?様々な質問がマシンガンのように飛んできた。
まぁ丸一日眠っていたということなので、状況が把握できていないのは当たり前だし、ましてやレヴィエールに精神を乗っ取られていたとするならしょうがない事である。
「質問が多いな。手紙を見てきたしここは孤児院だ。あとシスター達は殆どが無事だぞ」
全ての質問に対してまるで早口言葉のようにコウは答えると、ライラはシスター達が無事だったことに安心したのかそのままベッドの上へ背中側から倒れていく。
「ふぅ~...実はわたしは途中で記憶がないんです~」
「だろうな。レヴィエールとかいう魔人がライラの身体を支配してたみたいだし」
「へぇ~そうだったんですか~...って魔人ですか~!?」
どうやらライラは自身の記憶がない間、まさか魔人に身体を乗っ取られていると思っていなかったようで、身体を再び起こし、口を大きく開いて驚いていた。
魔人という存在に乗っ取られていたと言えば、驚くのも無理はないだろうか。
「やっぱり記憶ないんだな。俺らは大変だったのになぁ...」
「キュイキュイ~...」
「あ~う~...その節は大変ご迷惑を~...」
コウとフェニはまるで口裏を合わせていたかのように苦労したような雰囲気の空気感を作り出すと、ライラは申し訳無さそうにおずおずと謝罪をしてくる。
「まぁこれからは何かあるなら教えてくれ。同じ仲間なんだから」
「キュイキュイ」
どうやら自分のしていたことに、しっかりと反省している様子であり、これ以上特に言うことはなさそうであるし、これからは相談ぐらいはしてくれるだろうか。
「わかりました~!これからもよろしくお願いします~!」
「もがっ!」
そしてライラは大きな声で返事を返すとともに抱きしめてくるので、コウはそのままライラの胸元にある大きな2つの山の中へと、沈み込んでいき、息苦しそうな声をあげた。
このままでは窒息死してしまうと思ったコウはライラの背中を何度かタップして脱出を試みると、なんとか離してくれたので、大きく新鮮な空気を目一杯に肺へ送り込んでいく。
「ぷはっ!はぁっ...死ぬかと思った!」
「もぉ~コウさんは大げさですね~」
「自分の身体の危険性を自覚しろ!はぁ...そういえばその魔人が贈り物があると言ってたけどなんか身体に変化はないか?」
コウはレヴィエールが言っていたことをふと思い出し、ライラへ身体や精神面に何かしらの変化はないかどうか聞いてみることにした。
見た目で言えば特に大きな変化はないのだが、それでもあのレヴィエールが言っていたことが少し気がかりであったりした。
「う~ん...?今のところ特になにもないですけど~...?」
どうやらライラ本人も自身の身体を確認して特に変わったところが無いとのことなので、あのレヴィエールが言ったことはその場から逃げるための嘘だったのかもしれない。
そんな事を話していると、ふと部屋の外からコウの名を呼ぶ女性の声が聞こえてくるではないか。
「誰か呼んでるみたいだし少しここから席を外すぞ」
「むぅ~怪我人を置いて女の子に会いにいっちゃうんですか~?」
「いや別にやましいことはないって...うわっ!なんだその赤いオーラ!」
コウは腰掛けているベットから立ち上がり、呼んでいる女性の元へ向かおうとすると、ライラの全身が少しだけ赤いオーラの様なものに包まれているのが見え、驚きながら足を止めるのであった...。
いつもお読みくださってる方々ありがとうございます!
評価やブクマなどをしてくださると嬉しいですm(_ _)m
次回の更新は3月8日になりますのでよろしくお願いします。




