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321話

「毒か...?」


 コウは目の前で氷漬けになっている男の首元に指先を当てて脈を測るも、既に事切れてしまったのか脈はなく、何だか呆気ない最後となってしまった。


 まぁわざわざ自分の手を汚すこともなかったので、勝手に毒を飲み込み自死してくれたのは、これはこれで良かったのかもしれない。


 とりあえず周囲を包み込んでいる霧とドーム状の結界を解き、氷漬けになった男を開放するとそのまま地面へ音を立てて倒れ込む。


 地面に倒れている男はそのままにしておけば、きっと森の中にいるであろう掃除屋のスライムが補食しに来る筈なので、わざわざ地面を掘って埋葬する必要は無さげである。


 まぁ実際には穴を掘るという時間は無いし、悪人であるためか埋葬する気にもならない。


「キュイ?」


「あぁフェニ。終わったぞ」


 すると戦いが終わったことに気づいたのかフェニが上空からコウの肩へ降り、無事かどうかを確認しにくる。


 そしてコウの身体の隅々までフェニはチェックし終わると、特に大きなキズなどが無いことが分かったのか、再び空へ飛び立っていく。


「よし...このまま古城に向かうぞ」


「キュイッ!」


 なんとかあの強敵と思われる3人組内の1人を退けることが出来たが、まだまだ2人は残っている状況ということなので、安心できるとは限らない。


 また残り2人の詳しい情報についても聞き出すことが出来なかったため、ここは慎重にならざる得ないだろう。


 それでも古城に向かわなければライラは救い出すことが出来ないので、フェニと共に林の中を走り出す。


 暫くの間、林の中を進み続けるとボロボロに風化した小さな古城が見えてくるのだが、遠目で見ても見張りのようなものは城壁に立っておらず、すんなりと中に入ることが出来そうであった。


「ん?なんか空の様子が...」


「キュイ?」


 そんな古城を眺めていると、何故か何処からともなく上空に暗雲が立ち込めてくるではないか。


 そして古城の中心部から空に向かって一筋の赤い光が暗雲を貫くように伸びていくと、全身からぞわりと鳥肌が立ち始める。


 どうしてこんなにも鳥肌が立つのかは分からないが、その正体を確かめるにはこの古城の中へと入っていかないといけない。


 とりあえずコウは古城内に入り込み、罠などが置かれている可能性もあるため、ゆっくりと中を歩いて進んでいくことにするも、奥へ進むたびにひんやりとした空気が流れ込んでくる。


「ここだな」


「キュイ!」


 古城の中を慎重に進んでいくと一番嫌な気配を放つ、中庭への入口に辿り着いたコウ達は中をこっそりと覗き込む。


 すると奥にはあの3人組の内残り2人が立っており、中央には他のシスター達が集められていたが、全員空を見上げている。


 コウも同じ方向へ視線を移すと、中庭の空には人一人分が入るぐらいの大きな赤い卵が浮かび上がっており、道案内として持っていたイヤーカフの魔道具から伸びる光の線がその浮かんでいる物へと向かっているではないか。


「あの中にライラが...?」


 あの赤い卵の中にライラがいるとするならば、安易に叩き割るにもいかないので、ここは一度様子を見ていたほうが良いのかもしれない。


 そんなことを考えていると、赤い卵の全体にピシっと亀裂が入っていき、殻がボロボロと剥がれるように崩れ落ちていく。


 赤い卵の中から現れたのは黄金に輝く金色の髪を持つ、修道服を着ている瞳を閉じたライラなのだが、顔を見てみると左目の下には赤いハートの入れ墨のようなものが刻まれており、そのままゆらりゆらりと落ちていき、地面へ降り立つ。


「ふぅ...中々良い器を用意してれるじゃないの。私を起こしたのはあなた達かしら?」


「勿論僕だよぉ。君は魔性の女王で間違いないかなぁ?」


「そういった名で呼ばれたこともあったわね。とりあえず起こしてくれて感謝するわ」


 聞き耳を立てている限り、喋り方や振る舞いなどからして明らかにあのライラは今までのコウが知っているような人物ではない。


 あの男が何かしらの方法でライラに別の人格でも植え付けたというのだろうか?


「それにしても魔力が足りないのよねぇ...そこのあなた。私に魔力を下さらないかしら?」


「はぁ?なんであたしが...」


 ライラの姿をした人物は3人組の内、白い笛を持った女に対して片腕を伸ばし、頭をの上に手を置くと、まるで眠るかのように膝から崩れ落ち、その場で倒れるのであった...。

いつもお読みくださってる方々ありがとうございます!


評価やブクマなどをしてくださると嬉しいですm(_ _)m


次回の更新は3月1日になりますのでよろしくお願いします。

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