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319話

「消えた?いや...透明になる魔道具か」


 コウはハンドベルを鳴らした男の立っていた場所を穴が空くように見つめるが、その場には誰もいない。


 どうやって姿を消したのかは何となく察しがついており、腰にある袋から取り出したハンドベルが原因だとすぐに理解できた。


 何をしてくるのか分からないし、透明になったとはいえ、地面は落ち葉で埋め尽くされているため、あの男が動いたら何かしらの音が立ったりするであろうと思い、コウは精神を研ぎ澄ませながら周囲の音を聞き漏らさないように耳を澄ませる。


 すると自身の正面にルービックキューブの様に立方体の形をした真っ白な物がコウの目の前に何もない空間から突然現れ、ぷかぷかと宙に浮かんでいるではないか。


「今度はなんなんだ...?分からないしとりあえず氷槍で牽制(けんせい)してみるか?」


 情報があまりにも無いため、牽制として氷槍を作り出して試しに撃ち込んでみることにした。


 その真っ白な立方体は氷槍がぶつかる直前に上空へ真っ直ぐに飛んでいき、ある程度の高さに達すると、ぴたりと止まって今度は中心部に取り付けられていた魔石がキラリと白く輝き始める。


 何かしらの攻撃かと思ったコウは反射的に自身の周りを囲うかのようなドーム状の氷壁を作り出した。


(ん?何も来ないのか?)


 しかし作り出したドーム状の氷壁に対して何かしらの衝撃も来ないし、壊れたりする様子もなかったので、周囲を確認するため、ぱちんと指を鳴らしてただの水に戻す。


 そして周囲をぐるりと自身の目で確認すると、いつの間にかコウがいつも作り出す氷牢結界と似た様なドーム状の結界が徐々に作り出されようとしていた。


「ちっ...間に合うか?」


 この空間に閉じ込めようとしているということは相手に有利な空間であろうと思い、完璧に作り出される前に外へ出ようとしたが、間一髪間に合わず閉じ込められてしまうこととなった。


 閉じ込められてしまったのはしょうが無いと諦めてこの空間はなんだろうと観察すると、まるで雪が降る日かのように、しんとした静寂が辺り一帯を包み込んでいるため、何だか違和感を感じる。


 頭上を見ると先程の真っ白な立方体が浮かんでいる付近では、フェニがなんとかして中に入ろうと、幾つもの雷球を作り出しては撃ち込んでを繰り返しており、結界に触れると吸収されているので効果は無さそうである。


 結界内の仕様はよく分かっていないが、きっとあの男がコウのことを絶対に逃さないために作り出したものかもしれない。


 まぁコウとしては逃げる気はさらさらなかったので特に問題はなかったりする。


 とりあえず無駄に魔力を消費しないようにとフェニに向かって指示を出すため、大きな声で伝えようとするが、そこで想像もしていなかったことが起きた。


 それは声を出しているという筈なのに、自身の声が全く聞こえなかったのだ。


(は?大きな声を出している筈なのに自分の声が聞こえない?)


 本来であれば自身の声というものは空気伝導や骨伝導といったもののお陰で聞こえたりするものなのだが、口を開いて大きな声を出してみたり、手を叩いたりしても何も聞こえないので、コウが驚くのに無理もない。


 そう...あの男が2つ目に使用した魔道具の正体は、この空間内にいる者の全てに対して聴力を奪うといったものであった。


 つまりこの空間内ではどんな大きな音を出したところで、自身には何も聞こえなかったりするのだ。


(おいおい...これってもしかしたら結構不味いんじゃないか?)


 不味いと思ったのにも理由があり、あの男は透明人間のように消えてしまっているため、音を頼りに探そうにもこの空間にいる限り、聴力を奪われているので、何処にいるのか分からないからである。


(だったらこの結界内からさっさと抜け出させてもらうか)


 コウは片手に握っているサンクチュアリを結界に向かって大きく縦に振り下ろすも、ゴムのように弾力があるためか弾き返されてしまう。


 次に内側からなら魔法が効果があるのではないかと思い、氷槍を作り出して撃ち込んでみるもフェニの雷球と同じように吸収されてしまったので、どうやらここから抜け出すのは無理なようである。


(くそっ...無理か...)


 ここは諦めてあの男を倒すか無いのだろうかと思いながら振り返ると、自身の目と鼻の先にナイフが飛んできており、咄嗟(とっさ)の判断で避けるも頬にかすり傷を負ってしまった。


(あぶなっ...そのまま頭に刺さらなくて良かった...)


 先程、飛んできたナイフにも毒が塗られている筈なので、あの男からすれば既に勝利を確信しているかもしれないが、残念ながらコウは毒が効かない体質なのだ。


 流石に頭部へナイフが刺さっていたら即死していた可能性があるため、かすり傷程度で済んだのは不幸中の幸いといったところである。


 それにしてもナイフが飛んできた以降は、特にあの男からのアクションが何も無いため、きっとジワジワと毒で弱っていくコウを何処かでひっそりと観察しながら待っているのかもしれない。


 まぁそんなことは起きる訳もないのだが、あの男はコウが毒を効かない体質だと知る由もないため、これはある意味チャンスであった。


(とりあえずあの男を探さないと...だったらあの魔法を使うか)


 コウは透明になって隠れているあの男を見つけるために、自身の身体から足元へ魔力を集めていくと、徐々に真っ白な霧が足元から出ていき、この結界内全てを包み込んでいくのであった...。

いつも見てくださってありがとうございます!


評価やブクマなどをしてくださると嬉しいですm(_ _)m


次回の更新は2月25日になりますのでよろしくお願いします。

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