318話
「あんたは確か王都にいた3人組の1人だな」
「あ?お前みたいなガキとは面識無いが...?」
王都でコウと一度だけ出会っていたりするのだが、深くまでフードを被った男は覚えていない様子であった。
何故、出会った記憶が無いのだろうと疑問に思い、コウは記憶を掘り起こすと、その時は女装をしていた苦い思い出がふと脳裏を過る。
そのため、本来の姿であるコウが誰なのか?そして何処で出会ったのかということが分からない理由がわかってしまった。
とりあえずコウは収納の指輪からサンクチュアリを取り出すと、深くまでフードを被った男に穂先を向けていつでも戦えるように構える。
「お前の持ってる物は...あぁ思い出したぞ。あの時俺に捕まった雑魚のガキか」
すると深くまでフードを被った男はコウの持つサンクチュアリが印象的だったのか、何処で出会ったのかということをようやく思い出したようであった。
「誰が雑魚だ。場所が悪かったしお前らは3人掛かりで俺を追い回してきただろ」
あの時は地下ということもあって周りは狭く、上手いことサンクチュアリを振り回せなかったし、人数不利だったと言い返すように言い訳を並べると、深くまでフードを被った男は声を押し殺すように笑っていた。
「くくっ...面白い冗談だな...ここなら俺に勝てるとでも?」
「やってみれば分かるさ。御託は良いから掛かってこい」
「まずは大人に対する言葉遣いから教えてやる!」
雑談も程々にコウの挑発によって深くまでフードを被った男との戦いの火蓋が切って落とされることとなる。
フードを被った男は両手に先程、不意打ちとして投げてきた鋭く尖ったナイフを持っているので、これもまた同じように毒が塗られている可能性が高い。
まぁコウにとっては毒が効かない身体なので、毒に関してはそこまで問題は無かったりするため、意外と相性は悪くないかもしれないだろうか。
「フェニ!あのナイフには毒があるかもしれないから離れつつ魔法で支援を頼む!」
「キュイッ!」
ただしフェニは毒に対しての耐性のようなものが無いと思われるので、離れつつ戦うように指示を出と、そのままナイフが届かない位置ぐらいまで飛んでいき、上空から雷球を撃ち込んでいく。
「そんな遅い魔法で主人を守れると思うな!」
上空から次々とフードを被った男に向けて雷球が雨のように降ってくるも速度が遅いためか、中々に当たらないようで避けられつつ、コウに向かって走り出していた。
「フェニの魔法だけだと思うなよ?氷矢!」
向かってくるフードを被った男に向けてコウは速度の遅い水球や氷槍ではなく、無数の氷矢を自身の背後に作り出すと、狙いを定めてフェニの雷球と同じように撃ち込む。
「俺もこんなガキに舐められたものだな!」
フードを被った男は両手に持っているナイフをくるりと回して逆手に持つと、コウの撃ち込んいた氷矢を次々と叩き落としながら前進してくる。
「化物かよ!」
そんな超人的な動きに驚き、氷矢を作り出すという意識を逸らされたコウは撃ち込むペースが若干落ちてしまい、フードを被った男はその隙を見逃さなかったのか自身の身に纏っている黒い外套でコウの視界を防ぐかのように脱ぎ捨てた。
そして氷矢が黒い外套に突き刺さり、ボロボロにしていくとその場にいた先程の男はまるで煙のように消えてしまい、コウは男の目論見通り見失ってしまう。
「キュイッ!」
しかし今回はコウが1人だけで戦っている訳ではない。
上空から相棒であるフェニが男の動きを有難いことに追ってくれていたようで、何処に行ったのかをコウに教えるため、鳴きながら別の方向に雷球を撃ち込んでいたのですぐに見つけ出すことが出来た。
「鬱陶しい鳥だ!死ね!」
そんなフェニの動きに男は鬱陶しさを覚えたのか、手に持っているナイフを1本だけ投げるが、空高くにいるせいで届いていない。
「ちっ...あんまり手の内は晒したくないが仕方ねぇ...」
このままでは上空から常に監視され、位置がバレてしまい反撃もできず、永遠と魔法を撃ち込まれることが不利だと感じたのか、男は腰に付いている袋の中へ手を突っ込むと金色の小さなハンドベルを取り出す。
そして男は手に持っている小さなハンドベルを振ってちりーん...という綺麗な音を1回だけ鳴らすと、薄っすらと身体が透け始め、姿が消えていくのであった...。
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