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315話

 コウはチェルシーを連れ歩きながら活気のある王都内を進もうと思ったが、流石に服がボロボロであったため、そんな格好の状態のシスターを連れて冒険者ギルドに訪れるわけにも行かないし、誰か知り合いなどに見られれでもしたら変な噂が尾ひれのように付いてしまう。


 そのため、コウは過去にルガルという衣服の街と呼ばれる場所で、ファッションショーというイベントに参加した際、エルフィーから貰った衣装である真っ赤なブローチが胸部分に取り付けられた黒い外套が収納の指輪の肥やしになっていることを思い出し、中から取り出すと、そのままチェルシーに手渡してボロボロな服をすっぽりと覆い隠してもらうことにした。


「ありがとうございます」


「あぁそうだ。何があってもそのブローチには絶対に魔力を込めるなよ?」


「...?よく分かりませんが気をつけますね」


 一応、コウが手渡した黒い外套は真っ赤なブローチに魔力を込めると、ウェディングドレスのように変化してしまうので、詳しくは説明しないが念のためチェルシーに魔力を込めないよう釘を差しておくことにした。


 そしてそのまま流れるようにチェルシーを連れて活気ある王都内を進んでいき、冒険者ギルドへと訪れると、子忙しそうにしている受付嬢へ話し掛けてギルドマスターであるディザーはいるかどうか確認していく。


「ギルドマスターに会いたいんだけど...」


「ん〜...ギルドマスターに会いたいの?うーんまだ君にはちょっと難しいかなぁー」


 コウの見た目はまだ若い少年寄りであるためか、受付嬢からしてみれば駆け出しの冒険者にしか見えなかったようで、ギルドマスターであるディザーに会いたいという願いは微笑みながらやんわりと断られてしまった。


 ローランであればコウがBランク冒険者であることを知っているギルド職員は多いため、このような対応はされないのだが、流石に王都では知っている者はあまりいないせいか、このような対応になってしまうのはしょうが無い。


 そんな受付嬢の対応については気にすることでもなかったが、時間も限られており、早めにディザーへ報告しておきたいことだったので、収納の指輪から印籠の如く、Bランク冒険者という情報が刻まれたギルドカードを取り出して机の上へ差し出すように置く。


「も~ギルドカードを見せられても...って...えっ?」


 受付嬢は机の上に置かれたギルドカードをちらりと横目で見るとまさかBランクだと思っていなかったのか視線はコウの顔とギルドカードを交互に往復して驚きの表情を浮かべていた。


「ギルドマスターに会いたいんだけど」


「えーっと...すぐに確認しますから少々お待ち下さい!」


 コウは最初に言った言葉を復唱するように笑顔でもう一度言うと、ハッとした受付嬢は席を立ち、そそくさと気まずさから逃げるようにギルドマスター室へ確認しに行ってしまった。


「お待たせしました!ご案内します!」


 そして暫くすると気まずさを無くすかのように元気よく受付嬢が戻り、どうやらすぐにギルドマスター室まで案内してくれるとのこと。


 そのまま受付嬢について行くと扉を受付嬢がノックすると、「入れ」と一言だけいつも通りの高圧的な声が聞こえてくるので、扉を開けて入っていくとそこには褐色の肌を持つ男であるディザーが両肘を机の上に立て、両手を口元で組んでいるではないか。


 そんなポーズをディザーがしているのを見るとお前は何処の最高司令官なんだとツッコミを入れたくなるが、残念ながらこの世界では通じないネタだと思い、喉元で留めておくことにした。


「久しぶりだなディザーさん」


「珍しい者が尋ねて来たものだな。一体何の用だ?」


「ディザーさんに伝えておいた方が良さげな話を聞いたんだ」


「伝えておきたいこと?」


 しょうもない話だったらすぐに追い出すぞといった普通の人ならば逃げ出したくなるような鋭い視線を向けられるが、コウは怖じ気付くこともなく、チェルシーから聞いていた内容を掻い摘んで話していくと、徐々にディザーの眉間へシワが増えていった。


「なるほど...確かにその話は私にとって良さげな話だ」


「てな感じだな。もっと詳しい話を聞きたかったら連れてきたチェルシーっていうシスターが知ってるはず...ふぁ~ぁ...」


 そしてある程度、重要そうな部分だけ伝え終わると役目も終えたということでなのか、大きな欠伸が口から出てしまう。


「眠そうだな。ふむ...有益な情報と情報提供者の保護のお礼としてギルド内にある仮眠室を好きに使うが良い」


「あぁ助かる。じゃあなチェルシー後は任せた」


「えっ?私こんな怖い人がいる場所に置いてかれるんですか?」


 コウの大きな欠伸を見たディザーから冒険者ギルドにある仮眠室を使っても良いという話をされたので、ありがたく昼前まで使わせて貰うため、仮眠室へ移動しようと扉を開けると、チェルシーから助けて欲しそうな視線をヒシヒシと背中に感じてしまうが、華麗にスルーしてギルドマスター室を後にするのであった...。

いつもお読みくださってありがとうございます!


評価やブクマなどをしてくださると嬉しいですm(_ _)m


次回の更新は2月17日になりますのでよろしくお願いします。

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