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312話

 馬車の後方から追いかけてくる巨大な蛾の魔物の名はルナーモス。


 ルナーモスという魔物は基本的に夜の時間帯で活動する魔物であり、光に弱いため、昼間は大きな木にある穴の中へ隠れたり、洞窟の奥底で生息していたりする。


 そんな魔物が何故、コウ達の馬車を狙ってきたのかというのかというと、ルナーモスは肉食であり、馬車を引く馬やコウ達の匂いに誘われ、狙いに来たのであった。


「坊主!後ろから迫ってくる魔物を頼んだぜ!」


 御者席に座っている見知った顔の男が前に付いている小窓を開き、馬車の後方から

迫りくるルナーモスを何とかするように頼まれたので、コウは首を左右に傾けてポキポキと鳴らし、固まった身体を伸ばす。


「人の睡眠時間を奪うなんて傍迷惑(はためいわく)な魔物だな。迎え撃つぞ」


「キュイッ!」


 睡眠を妨害されたということもあってコウとフェニは若干の苛立ちをぶつけるために馬車へと近づいてくるルーナモスを迎え撃つことにした。


 そしてコウは馬車を追いかけてくるルナーモスを迎え撃つために窓から身を乗り出して屋根へと登り、接近された時のために収納の指輪から取り出した日頃から愛用しているサンクチュアリを出しておく。


「とりあえず様子見のために水球でも撃つか...」


 徐々に近づいてくる蛾の魔物に対して動き方を見るためにコウは牽制(けんせい)としていくつかの水球と作り出し、次々と撃ち込んでいくも、所詮(しょせん)は牽制ということもあって、真っ直ぐ飛んでくる水球をルナーモスはひらりひらりと蝶のように飛びながら最小の動きで紙一重に回避されてしまう。


 とはいえ放った魔法が当たらないのもしょうが無い、何故なら相手は空を自由自在に飛び回ることが出来るのだから。


「何してくるか分からんから近づけさせるわけにもいかないしどうするか...」


 コウからすればルナーモスは見知らぬ魔物であり、何をしてくるか分からない魔物のため、迂闊に馬車へ近寄らせたくは無い。


 そうは言っても飛んでくるルナーモスの方が速度が速いので、近づかれるのは時間の問題である。


「避けられるなら...氷壁っ!」


 これ以上、近づかれてしまうのも嫌なのでコウは障害物として水族館に使われているガラスのように巨大な氷壁を作り出していく。


 しかしそんな作り出された氷壁に対して飛んでくるルナーモス達は口元から黄色い液の塊を吐き出してきた。


「おいおい...まじかよ」


 するとどうだ?コウの作り出した氷壁はまるで熱湯をかけられた雪のように一瞬で溶けていき、せっかく作り出した障害物は穴だらけとなり、何事もなかったかのようにルナーモスは穴を通り抜けてコウ達が乗っている馬車を追いかけてくる。


 それにしてもあんな消化液を吐き出せるのならば、ますますルナーモスには近づかれたく無いなと思ってしまう。


「フェニ!とりあえず時間を稼いでくれ!」


「キュイッ!」


 他にルナーモスを撒けるような策はないか考える時間が欲しいため、フェニに時間を稼いで欲しいと指示を出すとバチバチと鳴って光り輝く雷球をいくつも作り出し、撃ち出していく。


 放たれた雷球は一直線に飛んでいき、先程の水球と同じように最小の動きで紙一重にひらりと躱されてしまうのではないかと思ったのだが、ルナーモス達は雷球を嫌がるように大きく回避し、雷球の光を嫌がっているように見えた。


「なるほどな...あいつらは光が苦手なのか」


 そしてそんなルナーモス達の行動を目にしたコウは一つの名案を思いつき、その案に必要なものを取りにすぐさま馬車内へと戻っていく。


「おっさん!灯りの魔道具を借りてくぞ!」


「あぁ!?いいけど壊すなよ!」


「わかってる!」


 コウが取りに戻った必要な物とは馬車の天井にぶら下がっているカンテラのような灯りの魔道具であり、それは魔石を嵌めれば光を放ち、光量の出力も変えられるといった生活に便利な魔道具である。


 御者は何故そんなものを借りるのか理解出来てはいなかったが、とりあえず許可は降りたということで、コウはすぐに天井にぶら下がっている灯りの魔道具を取り外して再び窓から身を乗り出して馬車の屋根へと戻っていく。


 コウは手元にあるカンテラに似た灯りの魔道具を包み込むように円柱状の分厚い氷を作り出して、先端部分には虫眼鏡のような薄く透き通ったレンズを取り付ける。


 そして反対側から光量を最大までにするとコウの作り出した物は一直線の光を放つ、まるでスポットライトのようなものが出来上がった。


「よしこれでどうだっ!」


 その一直線に放つ光を馬車の後に向かって辺り一帯を照らすと、ルナーモス達はまさか自身達の活動する真っ暗な夜の時間帯にこのような強烈な光を浴びると思っていなかったのかひらひらと退散するかのように馬車から離れていくではないか。


「ふぅ...なんとか撒いたな...フェニもお疲れ様」


「キュッ!」


 馬車の屋根に乗って暫く様子を見ていたがルナーモス達は追ってくる様子もないのでなんとか撒くことが出来、ようやくコウは一息つくことが出来ると思いながら馬車の中へと戻っていく。


 とはいえルナーモス達が再び現れたりしたら面倒なので、コウが作り出したスポットライトのような物をそのまま馬車の屋根へ朝になるまで念のため、取り付けておくのであった...。

いつもお読みくださってありがとうございます!


評価やブクマなどをしてくださると嬉しいですm(_ _)m


次回の更新は2月11日になりますのでよろしくお願いします。

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