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308話

「ふぅー...結構薬草を集めたな」


「ある程度集めましたしそろそろ切り上げますか〜」


「キュイ!」


 最初は地面から引き抜くのにも慣れていなかったコウだが、ライラに教えてもらい時間が経つにつれてコツを掴み始め、効率よく薬草を集めることが出来る頃には既に時刻が夕方頃となっていた。


 夕方頃となってしまったので、そろそろ切り上げるためにコウとライラはその場で立ち上がるとお互い腰へ両手を当てながらグッと押し、仰反る体勢にしてずっと中腰だったために凝り固まった筋肉を伸ばしていく。


 それにしても今回の依頼は普段から受けている魔物を討伐する依頼などに比べれば、かなり平和的なものであったのでたまにはこういった依頼を受けるのも悪くないと思えた。


 そして今日の夕飯は何にしようかなどの話を歩きながらしていると、いつの間にかローランへ辿り着き、依頼が終わって帰ってきたばかりの冒険者達や新しく中に入ろうとしている者達で長蛇の列が出来ていた。


 冒険者の中には何となく見たことのある顔がチラホラと見え、そのまま特別入口へ歩いて行くコウ達へ羨ましがるかのような視線が飛んできたりする。


「わぁ~凄い人ですね~」


「キュイ~」


「まぁ時間も時間だしな。早めに冒険者ギルドに行くか」


 あの長蛇の列に並んでいる冒険者達がギルドにこぞって来るのは分かっていることなので、混雑する前にコウは今回集めた薬草の納品や依頼の受付をササッと終わらしておきたいと思い、寄り道せずに急足で冒険者ギルドへと向かう。


 冒険者ギルドに到着するとまだ他の冒険者達は帰ってきていないためか空いており、受付にはサーラが仁王立ちの状態で他のギルド職員達と共に待ち構えていた。


「ふっふっふ...待ってましたよコウさん」


「なんだよそれ...。とりあえず薬草を採ってきたぞ」


「ばっちこいですよ!この袋に入れて下さい!」


 どうやらサーラはコウ達が大量に薬草を持ってくるのを見越して薬草の数を数える人員を確保していたようである。


 人員がいるのであれば遠慮はいらないだろうと思ったコウはまず最初に収納の指輪に仕舞い込んでいた薬草を取り出し、用意されていた袋の中へと詰め込んでいく。


 しかしコウが1袋、2袋と次々薬草を詰め込んで、新しく袋が増えていくたびにギルド職員達は悲しそうな表情をしていた。


 まぁ仕事が増えることによって今日はどのくらいの時間ギルドへ残るのかが決まるのだから、なるべくコウ達が採ってきた薬草の数を少ないようにと願う気持ちは分からないでもない。


 とはいえ最初から予測出来ていたことなので、コウ達からすれば頑張れと声援を贈ることぐらいしか出来ない。


「よし...これで終わりかな?」


「あれ?もう終わりなんですか?」


 コウが持っている収納の指輪から薬草が出し終わると、サーラや職員達がもう終わり?といった顔をしてホッと一安心していたが、残念ながら採取した薬草がこれで終わりな訳ではないのだ。


「いや...俺の分が終わっただけだから」


「俺の分はってことは...もしかして...」


「え〜っと...すいません〜私の分もお願いします〜」


 サーラの言葉にコウは否定すると、追撃としてライラが気まずそうに収納の袋から数株ほど薬草を取り出し、ギルド職員達の希望に満ちていた表情がピシリと凍りついてしまった。


 そして無慈悲にもライラが持っている収納の袋から追加されていく薬草達を半ば諦めながら一部のギルド職員達は眺めており、全てを出し終わる頃には誰かが何かを言うことはなく、黙々と薬草の数を数え始めていた。


「あー...まぁそのなんだ。頑張ってくれ」


「いえ...良いんです。こんなにも沢山の薬草があれば流行り病を抑えれるのですから...あとは私達が頑張るだけですしね!」


 サーラは薬草が目一杯詰まった袋が山のように積まれているのを見て、若干やけくそになっているのか、腕まくりをして強気な口調をしているが、何だか覇気がない。


「あぁそういえばライラさん宛に手紙が届いてましたよ」


「私にですか~?う~ん...誰でしょうか~?」


 薬草の数を数えだす直前、サーラはそういえばと言いながら思い出したかのように受付の机にある引き出しを引っ張り出し、中をゴソゴソと探ると1枚の封筒がひらりと出てきた。


 どうやら今日の依頼に行っている最中にライラ宛として手紙が届いていたようで、サーラから手渡された封筒を見ても名前などは記されておらず、封蝋に関してもイザベルが使っているものとは違ったものであったので、誰からの手紙なのかは分からない。


 そうこうしているうちにギルド内は帰宅してきた冒険者達がチラホラと現れ始め出しており、依頼の受付や納品も終わったということなので、一旦その場を離れて今日の夕食は何にしようかと悩みながら、街中を歩き回るのであった...。

いつもお読みくださってありがとうございます!


評価やブクマなどをしてくださると嬉しいですm(_ _)m


次回の更新は2月3日になりますのでよろしくお願いします。

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