302話
「どうだいロロル?魔力炉の様子は?」
「なんだベンか...。どうにもこうにも魔石が無いと直せないのだ!」
魔力炉を修復するために必要な魔石が足りないことにより、ロロルと呼ばれたオーバーオールを着ている長い茶髪を一纏めにした少女はお手上げだとばかりに手に持っていた工具をその場でほっぽり出し、カランカランと跳ねる工具と共に諦め、大の字になって寝そべり出す。
「僕を見て残念そうにしないでよ...まぁまぁそうヤケにならないで落ち着いたらどう?」
「落ち着くも何も早く魔石を持ってくるのだ!」
大の字で寝そべっているロロルは不足している魔石に対する苛立ちを八つ当たりとばかりに先程手離した工具を拾ってはベンに向かって投げつけていた。
「ちょっと!工具を投げないで!」
工具を投げつけられているベンは上手いこと紙一重で飛んでくる工具を避け続け、そんな不憫な扱いを受けるベンの姿を見ると何故か同じように工具を投げつけたくなってしまう。
そしてロロルから八つ当たりを受けているベンを少し離れた安全圏からミリーがニコニコと笑顔を浮かべているのを見えたので、きっと同じことを思っているのだろう。
「なんかスッキリしたのだ。ところで...そこの子らを誰なのだ?」
ロロルは自身の周りに落ちていた工具がある程度なくなると、ストレスが十二分に発散できたのかスッキリとした表情に変わり、後ろで様子を見ていたコウ達にようやく気づいたようだった。
「はぁはぁ...それは何よりだよ...。ふぅ...後ろの人達は僕の友人で魔石を譲ってくれるから連れてきたんだよ」
「おぉ!それはありがたいのだ!わっちはここの魔力炉を管理しているロロルなのだ!」
「Bランク冒険者のコウだ」
「私も同じくBランク冒険者のライラと申します〜」
「キュイ!」
コウ達が魔石を持ったきてくれたということを前置きでベンが軽い紹介すると、ロロルは待ちに待った魔石がようやく手に入るためか、にこやかな笑顔で自己紹介をしてきたので、コウ達も同じ様に自己紹介をしていく。
「ほほぉ〜まだ子供だというのにBランク冒険者とは凄いのだ!」
はて...?目の前のロロルは傍から見ればコウと同じぐらい年齢に見えるのだが、同じ人族ではないのだろうか?
他の種族と言ってもエルフのように耳が尖っている訳でも、ドワーフのように長い髭が顎に生えている訳でもないので、何の種族かは見た目だけは分からない。
「ん?人のことをジロジロと何なのだ?あぁもしかしてわっちの色気に見とれているのだ?」
コウがロロルのことを何種族なのだろうかと、観察していると何を勘違いしたのか分からないが、自身の寸胴のように凹凸のない幼児体型を見せつけるかのようにアピールしてきた。
「あー...うん。そうだな」
色気と言えば隣に立ってるライラは相当な物を持ち合わせているので、ちらりと横目で確認しながら、ロロルの凹凸のない幼児体型を見比べると差は歴然であり、もし審判がこの場にいればライラに旗を振って圧勝だっただろう。
まぁ余計なことは言わないほうが良いと今までの経験上、学んでいるためかコウは敢えてそのことには触れず、口にすることはなかった。
「ははっ!確かにロロルには凹凸がっ...!」
しかし残念なことにベンはデリカシーを持ち合わせていなかったのか、コウが思っていたことを代弁するように言い放つと同時にロロルが立っている方向から中々の速度を持った工具が一直線に飛んでいくのが一瞬見えた。
その工具が一直線に向かった先はベンの鳩尾辺りであり、クリティカルヒットしたのか途中で言いかけた言葉を強制的にキャンセルされ、その場で前に倒れ込むように膝から崩れ落ちていく。
「うわ~痛そうですね~...」
「キュイ~...」
やはりコウは自身の思っていたことを言わなかったことが正解だったと思い、ちょっぴり成長したような気がしないでもない。
まぁ今のはベンが悪いし、自身から地雷を踏みに行ったためこれはただの自爆である。
これだけ痛い目を見ればきっと成長し、次回は無駄なことを言わないようになるだろう。
「今回譲る魔石だけどこれで大丈夫か?」
「おぉ!これは良い魔石なのだ!」
そんな鳩尾部分を抑えながら床の上でゴロゴロと悶絶しているベンを放置しつつ、これ以上巻き込まれたくはないと思ったコウは魔石を譲るという話を切り出す。
そして収納の指輪の中から余っている魔石を取り出して見せると、ロロルは目を輝かせながらコウの持っている魔石をじっくりと見始めるのであった...。
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