295話
「今日はどうする?」
「う~ん...ここ数日で一通り観光はしましたもんね~」
ルーカスがお勧めしてくれたお店で昼食を食べたあの日から約2日ほど経過し、その間はライラやフェニと共に魔導国メークタリアを練り歩き、街の全てではないが観光場所として押されている所については、ある程度見て回ることは出来た。
そのため、もう時間を潰せるようなことはあまりなく、後はルーカスの仕事が終わるのを待つことしかないため、他に時間を潰せる様な事は無いか2人で頭を悩ましていたのだ。
「あ~でしたらこの間買った指輪の魔道具の試運転をしてもいいですか~?」
「問題ないぞ。だったら街の外にいくか」
2人で考えているとライラが1つだけやりたいことを思いついたようでこの間、購入した指輪の魔道具がどういったものか試しに使ってみたいとのこと。
因みにこの間、購入した指輪の魔道具とは自身の目の前に自由な大きさの透明な障壁のようなものを作り出し、浮かばせることが出来るといったものである。
まぁ確かにいきなり実戦で使えと言われても、使える訳がないのでどういったものか試してみないといけないだろうか。
ということでコウ達は一旦街の外に出るため、宿の従業員にルーカスへ外に出掛けるという伝言を残してから大通りを進み、数日前に入ってきた大きな城門へとたどり着く。
以前入ってきた時はルーカスと一緒だったため、多少なりとも待ち時間はあったが今回は特別入口を使用するので、すんなりと街の外に出ることができ、Bランク冒険者に成れたことについて本当に良かったと噛みしめる。
流石に街の外に出ると魔物に襲われる可能性があるので、念のため収納の指輪の中へ仕舞い込んでいた外套や十字架のブレスレットであるサンクチュアリを身につけておくことにした。
そしてある程度、街から続いている舗装された道を歩くと側には見通しの良い、広々とした草原のような場所があり、コウ達は到着すると、一息つくために地面へ敷物を敷き、腰を下ろす。
「ん~!良い風ですね~!」
「太陽も丁度良いし眠たくなりそうだな」
太陽の光はコウ達を包み込んで睡魔へと誘い、心地よい風が吹く度に緑の絨毯の如く、地面から伸び伸びと生えている草はまるで生き物のように動いていた。
そして草原自体はかなり広いため、草原側に向かって魔法を使ったとしても余程のことがない限り、他の誰かに被弾したりすることは無い筈である。
またフェニは翼を目一杯動かしたいのか、いつの間にかコウの肩から自由気ままにキャンパスへ描かれたような真っ青で雲ひとつない綺麗な大空へと飛んでいってしまった。
まぁきっと昼頃にでもなれば、腹を空かせて戻ってくるので心配はしていない。
「このままゆっくりしてると寝そうですしやりますか〜」
座っていたライラは自身に活を入れてその場から立ち上がると、新しく購入した魔道具の指輪へ魔力を込め始める。
すると店にあった木のボードに書かれていた説明通り、楕円形の透明な薄い障壁がライラの目の前に作り出された。
似たようなものを例えるとするならイカなどが体内に持っている軟骨部分であるフネと呼ばれるものといったところだろうか。
「へぇ...面白いなこれ」
コウは興味本位で指先の爪でつんつんと触ると意外にも強固に作り出されているのかコツコツとした音が鳴り、ガラスに似た感触が指先に伝わる。
「試しに水球を当てても大丈夫かー?」
「いいですよ〜ばっちこいです〜!」
「それじゃあいくぞ。水球!」
それなりに強度はありそうなのでコウは少し離れた位置から水球を試しにライラが作り出した障壁に向かって撃ち出す。
そしてコウの撃ち出した水球が障壁にぶつかるとパキンッ!という割れるような音を立てると共に障壁は崩れ去るように壊れ、水球も同じように破裂するも、障壁の後ろで立っていたライラは濡れたりしておらず、無事のようであった。
「水球で壊れちゃいますね〜」
「意外と脆いのか?」
「ん〜今度はもう少し魔力を込めてみますね〜」
ライラはもう一度、先程よりも多めに魔力を指輪に込めて障壁を作り出すとだいぶ分厚く、成人男性の腕の太さはあるのではないかという障壁が守るかのように浮かび上がる。
これだけ分厚ければちょっとやそっとの魔法なら受け切ってしまうのではないのではなかろうか。
「もう1回水球をお願いします〜!」
ライラからもう一度水球を障壁に向かって撃ち出してほしいという声が聞こえてくるので、再び水球を作り出して撃ち込んでみる。
撃ち出した水球が障壁にぶつかると、水球自体は大きく破裂し、ライラの作り出した障壁は水が滴っているぐらいで、ヒビのようなものは一切出来てはいない。
「おぉ硬いな。次は氷槍でも試すか?」
「そうですね〜氷槍をお願いします〜。流石に危なそうなのでコウさんの隣にいますね〜」
水球で問題ないなら今度はコウの扱う魔法の中でかなりの貫通力、そして破壊力を持つ氷槍は防げるのかどうかを試した方がいいだろう。
もし貫通すら出来ないのであれば相当強固な障壁であり、ある程度の魔物の攻撃ならば受け切ることが出来る筈である。
ただ障壁の後ろに立って見ていると氷槍が貫通してしまった場合、危険なためライラはコウの隣へと立って、作り出した障壁がどうなるか様子を見るようだ。
「氷槍!」
今度は水球ではなく、威力が圧倒的に上である先端が鋭く尖った氷槍を作り出し、障壁に向かって放つ。
放たれた氷槍は一直線に障壁へと飛んでいき、ぶつかると今度はバキンッ!という鈍い音を立て、分厚い障壁を半分ほど貫通し、反対側の地面へと刺さっていた。
「流石に無理でしたか〜」
「みたいだな」
一応、コウの扱う魔法の中では主力の魔法であり、防がれてしまうと少しだけショックであったが、無事に貫通出来たのでホッと胸を撫で下ろす。
その後はどんな形に出来るのか?また作り出した障壁は乗れるのか?などを試して見たりと色々な試行を繰り返していく。
「おーい!君たちぃー!少し良いかなー!?」
そしてコウとライラは新しく手に入れた指輪の魔道具がどんな風に扱えるか夢中で色々と試していると、後ろにある舗装された道側から誰かがこちらに向かって大きな声で呼び掛けながら歩いてくるのであった...。
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