291話
「間もなくメークタリアへ到着しますよ」
水棲の魔物達に襲われてからあれからというものの、旅自体は特に何事も問題はなく進み、ルーカスの言う通り今回の目的地である魔導国メークタリアが既に目と鼻の先の距離であった。
魔導国メークタリアに来るまでに2晩ほど野宿を行ったが、旅に出る前に貰っていた魔道具の寝具のお陰で固い地面の上で寝ることがなかったため、いつもの野宿よりか体の調子はとても良い。
「おぉ...凄い街並みだな」
「私も初めて来ましたけど凄いですね~!」
「キューイ!」
遠くから見ると魔導国メークタリアは五角形のような形をした街となって5つの頂点からは上空を包み込むような障壁が作り出されている。
上空の魔物に対する障壁のようなものなのだろうか?
そして街の中央に2つの空に向かって天高く伸びる塔が連なるように建っており、その塔の間には1つの巨大な魔石のようなものがくるくると回転しながら浮かんでいた。
あの巨大な魔石に似た物は一体何のためにあるのか色々と興味が尽きない。
そして魔導国メークタリアへ入るための大きな城門が見えてくると、それなりに列が並んでいるので、ルーカスは馬車の速度をゆっくりと落としつつ、1番最後尾へと同じように並んでいく。
他の街では検問に時間が掛かる場合もあったので、もしかしたら時間が掛かるのではと思っていたが、意外にもスムーズに前へ前へと列は進んでいた。
コウとしてはBランク冒険者のため、ライラ達と一緒に特別入口から街の中へ先に入っても良かったのだが、今回は護衛依頼なので一応ルーカスの馬車で入ることにしたのだ。
ある程度、並んでいる列が進むと門兵が城門前へ立っているのが見えたが、そこまで門兵が詳しく馬車内を確認したりしている様子はない。
「なぁルーカス。門兵が何もしてないけど大丈夫なのか?」
「詳しい作りはわかりませんが城門自体が魔道具と聞いておりますね」
とりあえず検問待ちの間、暇なので馬車の前についている小窓を開き、ルーカスに検問はちゃんとされているのか聞いてみると、どうやらあの城門は魔道具として作られているらしく、検問の代わりとして機能しているものだとか。
流石、魔導国と言われるだけあって生活する様々なところが魔道具として作られているみたいである。
「ようこそメークタリアへ!従魔の証は付けておりますね!お通り下さい!」
門兵は馬車の中を軽く覗き、フェニを見ると従魔の証だけを確認し、すぐに街の中へ入るように通された。
ルーカスの言う通り城門には謎の障壁のようなものが張られており、通り抜けても身体自体には何も問題は無いようだ。
果たして何を検知しているのかは分からないが、何かしらの問題があって止められなくて良かったと思う。
「さぁ街に入れたということなので一旦宿へ向かうと致しますね」
「ん...分かった」
そして魔導国メークタリアの街の中へ入ると、ルーカスから一旦宿に向かうと言われたので観光はとりあえず後回しだろうか。
まぁ時間帯は昼頃であり、夕方になって焦りながら宿を探すよりか、早めに宿を探して取っておいたほうが良いだろう。
とはいえ宿自体は既にどの場所か決めている様子ではあるようだが。
また街中を事故を起こさないように馬車でゆっくりと移動しているので、街中を馬車内から暇つぶしに見ると魔道具を取り扱っている店が多く立ち並び、どんな魔道具を売っているのか分かりやすくするためなのか、自身の店の前で魔道具を実際に使用したり、呼び込みをしたり様々であった。
「間もなく宿に到着致しますよ」
そんなこんなで街の中を景色を見ながらあれこれライラと会話に花を咲かせ、馬車に揺られているとルーカスから宿に到着する旨を伝えられる。
ゆっくりと移動していた馬車は停止したため、長時間座って凝り固まった体を伸ばしながら外へ出ると、目の前には4階はあろうかと思われる背の高い宿が現れる。
また宿の隣には馬車を何台も停めるスペースが確保されており、宿の従業員がルーカスの代わりに馬車へ乗って上手いこと停めているようだ。
「お疲れ様でした。本日はこちらの宿に泊まります」
「わぁ〜!ありがとうございます〜!」
「キュイキューイ!」
「うわっ....ここも高そうな宿だな。変な物を触るなよ?」
ルーカスと共に宿の中に入ると煌びやかな内装であり、細かい装飾が施されたシャンデリアが天井に吊るされ、あちらこちらに高そうな壺や皿などがインテリアとして置かれたりしている。
もしあれらの高そうなインテリアを壊したりしてしまったら弁償代がいくらになるかわからないので、一応ライラとフェニへ触らないように釘は刺しておくことにした。
「コウさんとライラさんの部屋の鍵になりますのでお渡ししておきます」
コウ達が宿内を物珍しそうに見ている間にルーカスは受付や支払いをを済ましてくれていたようで、部屋の鍵を手渡される。
そういえば受付はあるが2階や3階へ通じるための階段は周りを見渡してもどこにもなく、壁側には扉が2つあるだけであったが、なんだか見覚えのある矢印のついたボタンもその扉の側に取り付けられていた。
「もしかしてこれか?」
「よくお分かりになられましたね。自動昇降機という魔道具とのことです」
壁に取り付けられたボタンを押すと扉が開き、中に入ると開閉や4階までのボタンが取り付けられていた。
まさかエレベーターまで魔道具で再現されているとは驚きである。
実際に乗ってみると一瞬だけフワッとした感覚がし、そのまま目的の階層へと向かって行くのはなんだか懐かしさを覚える。
「では明日からは自由行動ですのでゆっくりとお寛ぎ下さい」
「ありがとうございます~。え~っと...コウさんの部屋は...っと~」
「ライラの部屋はあっちだろ...」
そしてエレベーターから降りると、こっそり後ろから付いて来るライラを追い返しつつ、ルーカスに手配された部屋でコウはゆっくりと旅の疲れを癒し、メークタリアの観光に備えるのであった...。
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