275話
鬱蒼とした森に囲まれ、ある程度舗装された道をガラガラと木製の車輪を鳴らす馬車が進んでおり、その馬車の中にはコウ達一行がゆったりと雑談をしながら乗っていた。
外の景気は前を見ても後ろを見ても木、木、木ばかりであるが、何だか以前よりも舗装された道側へ被さるように多くの木が生えてきている気がしないでもない。
そして何故、馬車に乗っているのかというと、冒険者ギルドでミラから依頼の話を聞いた夜、宿でライラに依頼内容のことについて話すと、久しぶりにクルツ村の様子を見たいということを言われたので、翌日の朝に依頼を受けてローランから出てきたのだ。
まぁコウとしてもクルツ村に置いてきた魔道具であるゴーレム達の様子を見ておきたい気持ちもあったし、色々と条件も含めて丁度良かったりする。
因みに依頼内容はクルツ村の周囲でだいぶ木が生えてきているため、その木を伐ってくれという依頼であり、まだ冬の季節ではないが、冬になる前に木材を多めに蓄えておきたいらしい。
「ほっほ!もう着きますぞ!」
そうこうしているうちにクルツ村に到着するのか御者から話しかけられ、小窓から外を見ると、久しぶりにライラの故郷であるクルツ村が見えてくるが、以前よりも村に入るための門が何だか大きく、そして頑丈に作り直されていた。
そしてクルツ村の周りも木材で作られた防壁もあるのだが、その防壁の近くまで木が生えてきているので、きっとあれを伐採してほしいということなのだろう。
馬車が徐々に速度を落とし、門の前に到着すると誰でも素通り出来るようにはなっておらず、若い青年の門番が立っており、側にはゴーレム達も門番をするかのように立っているのが見えた。
「ゴォーッ!」
「久しぶりだな。なんか大きくなってないか?」
久しぶりに再開したゴーレムは前よりも何だか大きくなっているような気がすると思い、コウは手のひらに乗せるとやはり数十cm身体が大きくなっている。
ゴーレムについては何も知識はないが、はたしてこの様に成長したりするものなのだろうか疑問である。
「ゴッ!」
手のひらに乗っているゴーレムはコウの顔をしっかりと覚えているようで、話しかけると背筋を伸ばし、以前と変わらず同じように敬礼のポーズをしてくる。
まぁ彼らの中で主従関係は何も変わっていないのだろう。
「ん...お努めご苦労さん」
ゴーレムに対して労いの言葉をかけると前はモジモジとしたりして喜んでいたが、成長したのか今となっては、その様な行動はしないので何だか寂しいものである。
そしてゴーレムは手のひらで綺麗にお辞儀をすると、そのまま降りて門の裏まで行ってしまったが、門の近くに立っている若い青年の門番が目で追って、そのゴーレムの様子をこっそりと見ているようだ。
「どこか行っちゃいましたね~」
「そうだな。ってなんか門番に呼ばれてるな」
門の裏を覗いている若い青年の門番からちょいちょいと手招きされるので、コウのゴーレムが何かしでかしてしまったのではないか?と思い、同じように門の裏を覗き込む。
するとシャドーボクシングの様な行動をして浮かれているゴーレムの姿がそこにあり、以前とあまり変わっていない姿につい笑みがこぼれてしまう。
彼らにはこのままずっと変わらないままでいて欲しいものである。
「よし...とりあえず依頼を済ませよう」
「そうしますか~」
「キュイキュイ!」
とはいえ、まずするべき事は受けた依頼だ。まだ明るいうちに依頼であるクルツ村周囲の木を伐ることを済ませておきたいところ。
とはいえ木を伐るだけならコウ1人でも事足りており、必要な人材としては魔物が来ないかどうか周りを見張れる者だけである。
まぁそこはフェニお願いしようと思っていたので、ライラにはクルツ村の様子を見てきてもらおうか。
「じゃあフェニは魔物が来ないか周りを見といてくれ。ライラはクルツ村でも見に行くか?」
「キュイ!」
「いいんですか~?だったらお言葉に甘えさせてもらいます~」
そのまま頑丈に作られた門から右手側に歩くと青々とした木が鬱蒼と生えているので、コウとフェニはそちらへと向かい、別れたライラは門を潜り抜けてクルツ村の中へ入っていく。
そしてコウは雑草のように生えている木達の前に到着するとサンクチュアリを取り出し、木こりのように振るうと太く逞しい木をいともたやすく、次々と伐り倒していく。
伐り倒した木は枝を切るなどの加工せず、そのまま収納の指輪の中へと仕舞い込んでいくことにした。
そういえばこの世界にも蟻のような魔物が存在しており、もしかしたら亜種としてシロアリの様な魔物もいるかもしれないため、そのまま切り株を残しておくのは良くないと思いコウはついでとして回収していく。
まぁこの切り株についても何かしらの役に立つだろう。
フェニは木を伐ることが出来ないかわりに森の奥にいるであろう魔物達がこちら側に寄ってこないかどうかの見張り要因としてコウの上空を飛び回り、周りを見張る。
そして暫く黙々と木を伐採し、時刻も日が落ちる夕方頃へとなっていく。
ある程度、クルツ村の周りに鬱蒼と生えていた木達を伐り落として防壁周りを綺麗にしたのだが、一向にまだライラが戻ってこない。
まぁ久しぶりの帰省なので積もる話もあるかもしれないが、とりあえず一段落したことをライラに伝えに行くため、コウとフェニは頑丈な門を潜り、村長の家にいるであろうと予想してクルツ村の中を歩き出すのであった。
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