274話
翌日、コウは1人で精霊玉の加工をリリアにお願いするため、昼前に会う約束をしていたので冒険者ギルドへと訪れていた。
ライラやフェニについては別行動をしており、ライラに関してはサーラとお茶の約束、フェニはいつの間にか宿の窓から飛び去っていたので、きっとミルミートという名の肉屋に行って久しぶりに肉を集りに行っているに違いない。
そんなコウは冒険者ギルドへと到着すると、深くフードを被った少女のリリアが誰もいない隅っこにある酒場で、1人ちょこんと椅子に座って待っていた。
「悪いな待たせたか?」
「いえいえー私もいま来たところですぅ」
リリアの目の前にはコップがあり、中には何も入っていないので、本人は今来たばかりと言っているが、気を使って早めに冒険者ギルドへ訪れ、待っていてくれたのだろう。
「怪我の調子はどうだ?」
「だいぶ良くなりましたぁ。あの時は貴重なポーションをありがとうございますぅ」
「あーうん...治って良かったな」
リリアはわざわざ席を立つとひらひらとしたスカートを捲りながら一昨日怪我していた、白く柔らかな10代の太腿の部分を見せつけてくるので、視線を逸しながら適当に相槌を返す。
確かに見た目的に言えばコウはリリアよりも幼く見えるので、もしかしたら男として意識されていない可能性がある。
「そういえばぁ私に用ってなんですかぁ?」
「あぁそうだった。リリアって確かエルフだよな?これの加工ってできるか?」
コウはいつも通り、収納の指輪の中からアクエールから貰い受けたビー玉のような精霊玉を取り出して、机の上に1つだけ置くと机自体の作りが悪く、若干傾いているせいかリリアの元へコロコロと転がっていく。
「精霊玉ですかぁ。珍しいもの持っていますねぇ...これは水の精霊さんみたいですぅ」
「そんなことまで分かるのか」
リリアは精霊玉を手にとって目元まで持っていき、覗き込むように見ると、瞳孔が大きく開いて虹彩の周りに黄金色の光が輝く。
どうやら水の精霊に貰ったという詳しい情報まで読み取れるようで、エルフという種族だけが持つ特別な力かもしれない。
「どうだ加工できそうか?」
「う~...手持ちの道具じゃちょっとぉ...実家にある道具なら出来ますけどぉ」
どうやら精霊玉の実家に置いてある道具があれば加工できるらしいが、今現在リリアの手元にある道具ではちゃんとした加工できないらしい。
その道具を取りに実家へ戻るにしても、相当な時間が掛かるようで、そう簡単に戻れる良いうなものではなく、またパーティーとして組んでいるジャン達にも許可が必要だったりするため、コウが我儘を言う訳にはいかない。
ただ暫くしたら1度実家であるエルフの里に戻るらしいので、その時にでも持ってきてくれるとのこと。
まぁ今絶対に必要!というものでもないし、もしかしたらリリア以外のエルフに出会って加工をしてもらえるかもしれないので、精霊玉には気長に収納の指輪の中で倉庫番をしてもらおうか。
「まぁ出来たら良いなと思ってただけだしな」
「力になれなくて申し訳ないですぅ。また何かあったら呼んで下さいですぅ」
「あぁまた何かあったらよろしく」
リリアとの話も終わったということで、その場で別れると解体倉庫から冒険者ギルドへと素材を売られている筈であるため、ここ最近で減った懐具合を解消するために次は受付へと向かう。
今日の受付はサーラが休みのため、予想通りミラが担当しているようで、朝の内に冒険者達のラッシュは終わっているためかゆったりとお茶を飲みながら書類を片手に仕事をしていた。
「あら?Bランクになったコウ君は色んな女の子に手を出しているのね。私も手を出されちゃうのかしら?」
「茶化すのはやめてくれ。解体した素材のお金を受け取りに来ただけだしどうせ聞き耳立ててただろ」
「ふふっ冗談よ。はい これが買い取った素材のお金ね」
冗談を言うミラを流しつつ、コウは冒険者ギルドへ売った魔物の素材収納の指輪の中へと仕舞い込んでいく。
これで当分生活する分には困らないぐらいのお金が手に入ったということなので、だいぶ心にゆとりが出来た気がしないでもない。
とはいえ依頼を受けず、のんびりとしているとお金はいつもより消費するというし、イザベルの別荘で心身共に癒すことが出来たので、そろそろ何かの依頼を受けたいところではある。
ただ初日からハードな依頼を受けるつもりはなく、どちらかといえば近場で軽い依頼ぐらいが好ましい。
「そういえばこんな依頼があるのだけどどうかしら?」
お金を渡してきたついでなのか1枚の依頼書を机の上にミラから出されるので、手に取って詳しい内容を見てみるとクルツ村周りの木を伐るという依頼であった。
確かに依頼を受けるならば近場であるし、内容も収納の指輪があるコウ向けの依頼ということもあって、久しぶりに受ける依頼としてならば丁度良いものではある。
「ん~丁度いいんだけど...とりあえずライラにも聞いてから決めるかな」
「じゃあ依頼を受ける気になったらまた話してね。ただ時間が経ち過ぎると誰かに取られちゃうかも知れないわ」
「分かった。わざわざ聞いてくれてありがとな」
依頼を受けるにしても、パーティとして組んでいるライラに相談しないと失礼であり、今ここで勝手に依頼を受けるわけにいかないので一旦、ミラにおすすめされた依頼は保留することにした。
その後、コウは冒険者ギルドの隣にある解体倉庫に向かい、解体されたばかりの新鮮なマッドロブスターの身を引き取ると、今後の予定について考えるため、宿に戻るのであった...。
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