269話
「まだ戻ってきていないのか?」
「そこまで難しい依頼ではないのですが...」
翌日コウ達一行は朝に再び冒険者ギルドに訪れ、朝から働いているサーラに確認するも、どうやらあの夕方以降でもジャン達は戻ってきていないとのこと。
依頼に関しては昨日、聞いていた通り難しい依頼では無いようで、Dランクの依頼だとしても討伐対象であるコーラスフロッグはEランクの魔物であり、ただ煩いだけで、ゴブリンなどに比べたらそこまで危険な魔物ではないので、新人の冒険者ならば対処できる程度である。
では何故Dランクの依頼になっているのか?
それはただ単に大量発生しているため、討伐するのが面倒で人気もないということもあって少しだけランクと報酬を上げられているらしい。
とはいえ、そんな簡単な依頼で丸一日戻ってきていないとすると何かしらのトラブルと鉢合わせした可能性が高いかもしれない。
「コウさんどうしますか~?」
「うーん...様子だけ見に行くか。場所だけ教えてもらっていいか?」
精霊玉の加工の件は別に急ぎの用件ではないし、本来ならば別のエルフを探せばいいだろうが、一応顔見知りの人物達であるため、様子を見に行くぐらいはいいだろうか。
とはいえジャン達が受けた依頼の場所を知らないのでサーラに詳しい内容を聞いてみると、ローランから少し離れた南側には小さな沼地があり、そこへ向かったらしい。
「気をつけて行ってくださいね!」
サーラから見送られながら冒険者ギルドから出ると、とりあえずジャン達が向かったであると思われるローランの南側の沼地へとコウ達は向かうのであった...。
■
じめじめとした空気にぐちゃぐちゃと泥濘んだ足元。全体的に雰囲気は暗く、沼地のいたるところに少し大きめの木が何本も生えている場所へコウ達は午前中の内に到着した。
歩くたびに踵についた泥が跳ねるので、コウやライラ的には身に纏っている外套や履いている靴が汚れてしまうこともあり、様子を見に来たということに対してちょっぴり後悔していたりする。
ただ自分達の意思で来てしまったので、後悔してもしょうが無いし、今更引き返してもただ時間を無駄にしただけになってしまう。
ちなみにフェニは新しい環境ということで、それなりに楽しんでいるが、コウ達と同じように汚れたくはないのか、ずっと空を飛んでいたり、肩に乗っていたりしている。
「さて...探すか」
小さな沼地ということなのだが、コウ達の手元にはこの沼地にジャン達が来たという情報だけしか無く、簡単に見つけられる訳もないので何かしらの手掛かりを探す必要があるだろう。
「フェニ。とりあえず何かないかここら一帯を見てきてくれないか?」
「キュイッ!」
足元が悪い中、歩き回って手当たり次第に探したところで無駄骨になるかもしれないため、とりあえずフェニにここら一帯の探索を任せた方がいいと思い、指示するとジャン達を探すため、元気な返事と共に飛び立ってゆく。
まぁコウの本音を言えば無駄に歩いて泥だらけになりたく無いだけであるのだが...。
「こういう時にフェニちゃんがいてくれると本当に助かりますね〜」
まぁコウ達よりも捜索できる範囲外は広く、目もかなり良いので、何かしらの痕跡はすぐに見つかるはずである。
暫く太い木にもたれ掛かりながらライラとゆっくり雑談していると上空からフェニが降りてきて衝撃を抑えつつ、上手いことコウの頭へと着地した。
「何かあったか?」
「キュイッ!」
頭に着地して一仕事終え、毛繕いをしているフェニにジャン達の痕跡は見つかったかどうかを確認すると、片翼を目の前の方向に広げるので何かしらを見つけたようである。
ということでコウ達は水に浸かっておらず、ぬかるんでいるが歩けそうな場所を上手いこと移動しつつ、フェニが片翼で示した方向に向かうと大きな木が見え、根元には数人程度ならば隠れられそうな幾つかの大きな穴が開いていた。
近寄っていくと大きな木の根元にある穴の入口に人が通ったような足跡が複数あり、それは穴の奥へと続いているではないか。
「なるほど足跡か」
「どうしますか~?」
「中の様子を確認してみる」
内部の様子が暗くどうなっているのかわからないため、足を踏み入れるのは危険だと感じたコウは周囲に魔力を垂れ流しながら薄い霧へと変化させ、大きな木の根元にある穴に向かってどんどん送り込んでいく。
大きな木の根元にある穴はそこまで奥まで続いているわけではないようで、コウの送り出した薄い霧はすぐに充満したようで、内部の情報をある程度把握することができた。
「そんな奥は深くないな...あとは6人程誰かいるみたいだ」
「じゃあもしかしたらジャンさん達かもしれないですね~」
「3人のパーティーの筈なんだがなぁ...とりあえず入ってみるか」
ジャン達のパーティー人数よりも多くの人がいることに少し疑問であるが、とりあえず危険が無さそうだということで、コウ達は大きな木の根本の穴へ足を踏み入れていくのであった...。
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