252話
坑道から出るとそこには何人もの見知らぬドワーフ達が囲むように入口周りに立っており、先頭にいるドルガレフの弟子が何故か面倒くさそうな表情をしていたが、すぐに表情を切り替えて目の前のドワーフ達に対して口を開く。
「俺らに何か用がありやすかい?」
「お前はダルガレフの弟子だろう?ラッガスさんに言われて来たが何も持っていないようだな」
どうやら囲んでいるのは二大鍛冶師であるラッガスの取り巻きであり、ダルガレフの弟子が坑道内へ入ったことについてどこからか情報が漏れていたらしく、刀剣の作成に必要な鉱石を採掘したのではないのか疑っているようだ。
実際には採掘をしているのだが、相手方の言い方的に採掘をしていたことについては見られていない様子である。
採掘した鉱石については全て収納の指輪の中へと仕舞い込んでいるので、適当なことを言って誤魔化したり、とぼけたりすればこの場を切り抜けることが出来るだろう。
「冒険者の方々は魔物を狩りたいということで案内しただけでありやすからねぇ」
「その割には手ぶらに見えるが?」
「ちょいと危険な魔物に出会いやして逃げてきたところなんすわ。透明な魔物なんでありやすが知ってやすかい?」
「透明...?あぁオーレメロンか...。確かにお前らのような者達には厳しいだろう」
「逃げ回るのにも疲れたんであっしらはここでらへんで失礼しやす」
嘘を上手いこと混ぜつつ、逃げ回ったという本当の出来事も言っているのでこの嘘を見抜くのは難しいだろう。
ダルガレフの弟子はのらりくらりと質問を躱し、疲れたと言って囲んでいるラッガスの取り巻き達の間を押し通り過ぎると口元がニヤリと笑っている。
とりあえず無事にその場を切り抜けることが出来たので、コウ達は寄り道せずに真っ直ぐダルガレフの鍛冶屋まで戻ると、壊された扉は完璧に修復されており、以前よりも丈夫そうな鍵付きの扉へと変わっていた。
ラッガスが再び訪れても壊されないようになのか、それとも防犯対策なのか分からないが以前の扉よりは良いだろう。
「戻ったぞ。取ってきた鉱...「おぉ!無事だったか!怪我は無さそうじゃな!」
中に入るとそこには今か今かとダルガレフが待っていたようで、持ってきた鉱石について話そうとするも、途中で話を中断されてしまい、まずはコウ達に怪我はないかを確認してきた。
「そういえば何か言いかけておったがなんじゃったか?」
「いやだから取ってきた鉱石は何処に置けば良いんだ?」
「すまんのう。とりあえずはあそこに積んでおいてくれい」
ダルガレフが指をさした方向には以前、コウ達が譲った鉱石が積まれており、そこに置いてほしいということだったのでコウは収納の指輪から少しだけ数が減った目的の鉱石を出していく。
「これだけあれば足りるって聞いたけど大丈夫なのか?」
「十分じゃ!これで依頼を何とか進めることができるわい!」
「じゃあこれで俺らの仕事は終わりだな。頑張ってくれ」
「ここからは儂ら職人の出番じゃな!本当に助かったわい!儂に協力できることがあれば何でもするでな!」
無事に鉱石を持ち帰り、ダルガレフに目的の鉱石を渡すことが出来たので別れを済ませ、とりあえずは疲れを癒やすため、宿へ戻っていた。
すると今度は項垂れた状態でトボトボと宿の方向へ歩くダリアに出会うこととなる。
確かドワーフとの交渉をしていた筈であったが上手く言っていなかったのを思い出し、今回の交渉もそこまで成果は得ることが出来なかったのかもしれない。
「こんなところで会うなんて奇遇だな」
「あぁコウさんすか...お疲れ様っす...」
「交渉が上手くいっていないのか?」
「前に交渉したところは上手くいったんすけど新規開拓しようにもどこの職人さん達も頑固すぎて困ってるんす!」
飛び込み営業のように鍛冶屋へと入って交渉しても、人族の商人ということで舐められているのか、どこもかしこも厳しい条件を出されるばかりと愚痴をこぼすダリア。
ドワーフの国まで旅をし、同じ釜の飯を食べた仲というのもあるのでここは手助けしてあげたい。
また商人に恩を売るのには丁度良い機会でもあるので、ここ数日で友人になったばかりのダルガレフを紹介するのも悪く無いだろう。
「だったらドワーフの友人がいるんだけど紹介してやろうか?」
「えぇっ!?いつの間にそんな人脈を作ったんすか!?粗相はしないんで明日紹介して欲しいっす!」
「わかったから足に引っ付くな!紹介するだけだぞ!」
ダリアはコウの足にすり寄るとしがみついてくるので振り払いつつ、ダルガレフを紹介することについて約束する。
といってもあくまで紹介をするだけであって交渉などについてはダリア本人の努力次第である。
ダルガレフも献上する刀剣の作成で忙しいかもしれないが、コウの紹介ということもあればあまり無下にすることは無いはずであるだろう。
まぁ紹介するにしても明日なので今日のところは宿に帰り、ゆっくりと柔らかなベッドの上で一日の疲れを癒やすのであった...。
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