244話
「それはハイドに手渡した物じゃ!何故お前さんがそれを持っておる!」
手に持っている小槌をその場に落とし、どたどたと慌てながら急ぎ足で地面を踏みしめ近づいてきたダルガレフはコウの前に立つと鼻息を荒らげつつも、両手でコウの肩を掴むとぐわんぐわんと前後に揺らされる。
「あわわわわ...揺らすなって!」
「おぉう!すまんかった!」
謝りつつも肩からパッと手を離されたコウは前後に揺らされていたため三半規管が刺激され、少しふらつくもすぐに落ち着きを取り戻す。
それにしてもコウの持っているミスリルナイフを見た瞬間に驚きながらもハイドの名前を出していたのでどうやら友人であるのは間違いないだろう。
「これはハイド...俺の父親から譲って貰った物だ」
「ほぅ!ではお前さんがハイドの手紙に書かれていた息子のコウか!」
どうやらハイドから送られてきた手紙によってコウのことについては知っているみたいであったが見た目などは知らなかったようである。
「ガッハッハ!ハイドの息子ならば大歓迎じゃ!汚いかもしれんが入れ入れ!」
大きく笑うダルガレフに背中を押されながら鍛冶屋の中に通されるとそこは男の仕事場ということで多くの鍛冶道具が乱雑に足元へ置かれているので踏まないように避けつつも歩く。
鍛冶屋の奥には休憩できるようなスペースがあり、机の上は物で溢れているがダルガレフが太い腕でざっと流すように片付けると小さな埃が舞い、適当な椅子を並べられる。
「お茶を用意するからちょいと待っとれ!お菓子も持ってくるでな!」
そして用意された椅子に座ってのんびり待っていると湯気がふわりと浮かぶ香りの良いお茶とクッキーを出され、まるで帰省してきた孫を可愛がるかのような対応である。
「髪色が同じじゃがハイドと違って顔は美形じゃのう...」
ダルガレフは対面にどしっと座り、コウの顔をじっくりと見ながら自身の知っているハイドと顔を比べるので何処からか不満そうな表情のハイドから文句が聞こえてきたような気がした。
「そういえばハイ...俺の父親と何処で出会ったんだ?」
それにしてもどうして二大鍛冶師の1人であるダルガレフという有名なドワーフが自身の父親であるハイドとの親しくなった経緯が気になっていたので疑問を投げかける。
「なんじゃそんなことか。その昔儂が魔物に襲われて命を落としそうになった時に冒険者であったハイドに助けられたのじゃよ」
どうやらダルガレフがこの街の近くにある採掘場で鉱石を掘っている際、魔物に襲われ、逃げ回っていると偶然にも冒険者として活動していたハイドに命を救われたようでそこから仲の良い友人関係となったのだろう。
ハイドに詳しくは聞いていないが確かその昔、実家の家督を継ぐのを嫌がって逃げ回っていたということなので、もしかしたら冒険者となって実家から逃げ回っていた結果、偶々ドワーフの国の近くへ立ち寄ってダルガレフと出会ったのかもしれない。
そんなハイドと親しくなった際の経緯やその後の対応などの話を聞き、ハイドの知らない一面を知れたということで色々と面白く興味深い話であった。
「ところでコウは一体こんな所に何しに来たのじゃ?父親の話を聞きに来ただけでは無いじゃろ?」
「あぁそうだった。隣にいるイザベルの武器を直して欲しくてここに来たんだ」
「初めまして私はイザベル・フォン・リディカートと申します。コウさんとは冒険者同士として懇意にさせて頂いてます」
ダルガレフに今回は何の要件で来たのかと聞かれるのでとりあえずハイドの昔話を切り上げるとコウは事情をかい摘んで説明し、隣に座っているイザベルは軽く自己紹介をする。
「ふむ...コウの友人ならば良いじゃろう。とりあえず直して欲しい物を見せてくれ」
どうやら修復できるかどうかを見てくれるということなのでイザベルは腰元にぶら下げているレイピアを取り出すと机の上に置く。
そしてダルガレフはレイピアを手に取ると頭にちょこんと乗っているゴーグルを装着し、じっくりと観察しだした。
「どうでしょうか...?」
「なぁに儂なら問題なく修復できるぞ。ただしとある鉱石が丁度手元に無いから持ってきてくれれば今回はタダで直してやろうかの」
「本当ですか!?ありがとうございます!」
見てもらった結果、問題なく修復できる範囲内ということであり、快く引き受けて貰えたのでイザベルはすっと椅子から立つとダルガレフに向かって深々と頭を下げる。
しかし条件としてレイピアを直すのには必要な鉱石を取りに行ってくれということであるのだが、タダで直してくれるならそれぐらい何の問題ない。
ただ鉱石の場所は何処にあるのか?素人目で見ても分かるのか?などを詳しく聞いておかないと間違った鉱石を取ってきてしまう可能性があるため聞いて置くために口を開こうとすると察してくれたのか事細かく説明してくれた。
鉱石のある場所については街を出て城壁を伝いながら右方向にまっすぐ歩いて行けば誰でも出入りができる採掘場があるらしい。
鉱石については一目見れば分かるような物らしく特徴として大体、直径約25cmほど...つまりはバスケットボールぐらいの大きさをした卵形の鉱石であり、色は翡翠のような深緑をして透明感があるとのこと。
またそこまで貴重な鉱石ではないため、採掘場に入ればそこらに転がって見つけやすいと言っていた。
「じゃあサクッと終わらすか」
「そうですね。お待たせするのはあまり良くないですから」
とりあえずダルガレフからのお使いをささっと終わらしたいため、出された残り1枚のクッキーをコウは口の中へ放り込むとグイッとお茶を一気に飲み干して椅子を立ち、イザベルと共に鍛冶屋の入り口に向かって歩き出す。
「一応冒険者らしいが大丈夫かのぉ...」
後ろから孫に初めてのお使いを頼んだのはいいが急に心配になった祖父が言うような小さい呟きが聞こえてくるので、つい2人してくすりと笑ってしまう。
実際のところコウはBランク冒険者ということで何も問題は無いのだが、それを知らぬダルガレフにとっては心配でしょうがないのだろう。
ということでコウとイザベルの2人はダルガレフの鍛冶屋を後にしてレイピアを直すために必要な鉱石を取りに街の外にあるという採掘場へ向かうのであった...。
いつも見てくださってありがとうございます!
評価やブクマなどをしてくださると嬉しいですm(_ _)m
次回の更新は9月28日になりますのでよろしくお願いします。




