241話
コウ達の真上には見たことのない鳥の魔物の群れが獲物を狙うかのようにぐるぐると空を旋回しており、いつ襲いかかってくるのかわからない。
そもそもあの魔物は何なのか?まず人と鳥をかけ合わせたキメラのような見た目ということ自体、気色が悪く戦いたくはないのだが、狙われてしまったからには空をダリアの馬車で飛ぶ魔物から逃げ切るのは厳しい。
「うわぁ...初めて見る魔物だけど何だあの魔物...」
「人の顔なのに身体は鳥ってのが気色悪いですね~」
「キュイ...」
「あれはハーピーですね。単体ではCランクの魔物ですが群れですとBランクの魔物です」
あれがハーピー?いやいや...コウの中でハーピーのイメージとしては綺麗な女性の顔で両腕は白く美しい羽毛の翼、そして両足は強靭な鉤爪を持ち意思の疎通が取れる亜人種に近しい魔物だと思っていたのだが、現実は鶴や鷺のように首の長い鳥と醜い老婆の顔をかけ合わせた意思の疎通が取れない人面犬ならぬ人面鳥である。
まぁ仮にイメージ通りの美しいハーピーとして出てきていたとしたら戦いにくいので逆に醜い姿の魔物ということでよかったのかもしれない。
とりあえず相手は空を自由に飛び回る魔物ということでコウも一応、魔法で攻撃できなくはないが容易に避けられてしまうだろうし、ライラに至っては攻撃する手段があまりないので、こちらがうまく対応できる者としたら風魔法を得意とするイザベルや同じように空を飛べるフェニぐらいだろうか。
「どうやら来るみたいですね。ここは私に任せて下さい」
そして上空にいるハーピー達は狙いを定めたのか大きく広げていた翼を折り畳むと一気に何匹もの群れが急降下して落ちてくる。
そのハーピー達に対してイザベルが任せて欲しいと言うので武器を構えつつもコウ達はとりあえず任せることにした。
ハーピーの攻撃方法は二通りあるらしい。まず一つ目が自身が持つ鋭く強靭な鉤爪を使い上空から急降下し、獲物の致命傷になるような部分への攻撃、そして二つ目が風魔法による攻撃だ。
特に危険なのが前者の鉤爪による攻撃であり、急降下による加速、強靭な鉤爪、そして魔物としての握力の三つが合わさりそんなものが人の頭部に直撃してしまうとまるで豆腐のように簡単に砕け散ってしまう。
しかしそんな攻撃は近くに寄らないと結局のところ当てることは出来ない。
「暴風の壁!」
イザベルは接近してくるハーピー達に対してダリアの馬車を含め、周囲を円で囲むかのように荒れ狂う風の壁を作り出す。
すると近づいてきたハーピー達はイザベルが作り出した荒れ狂う風によってバランスを崩してしまい、作り出した乱気流へ吸い込まれると洗濯機へ入れられたかのようにグルグルとその場で回り続ける。
ハーピー達を巻き込んだその荒れ狂う風は徐々にコウ達の周りから頭上の上へ風の球体となり、その中では巻き込まれたハーピー達がもみくちゃの状態となっていた。
「解放!」
イザベルの言葉によって襲ってきたハーピー達を巻き込み球体状となっていた風の塊は大きく膨れ上がると破裂する。
そして風の塊が破裂したことにより、巻き込まれていたハーピー達はあちらこちらに転がっている大きな岩の方向に向かって勢いよく吹き飛ばされていき、その大きな岩に向かって衝突するとぐちゃっ!と何かが潰れたような音をさせていく。
魔物とはいえ人間の見た目をした頭が潰れ、ゴロゴロとそこらに転がっているのを見るとゴブリン達よりも気持ちが悪い。
「ハーピーの鉤爪や羽根はお金になるっすよ!」
「えぇ...あれ拾うのか...?あんまり拾いたくないんだけど」
「いいじゃないですか~気色悪いですけどお金になるのなら拾いましょうよ~」
と言われてもあの魔物自体、気色が悪いためあまり収納の指輪に入れたくない。
しかしそのまま放置するとこの辺りにはスライムがあまりいないため処理されず、アンデットになったり、疫病の元となったりするので放置するわけにもいかないだろう。
「しょうがない...拾いに行くか...」
渋々、死んでいるハーピー達を収納の指輪に仕舞い込もうと一歩前に足を踏み出すと空から風を切るような音とともに風魔法が飛んでくる。
「あぶなっ!あいつら勝てないと分かったら遠くから嫌がらせかよ」
「なんか性格悪い魔物ですね〜」
様子を見ていた数匹のハーピー達が遠くから嫌がらせのように風魔法を放ってくるので鬱陶しいことこの上ない。
脳の構造までは分からないが、見た目は人の頭と似たような作りとなっているため、なまじ賢いのだろう。
コウが渋い顔をしているとイザベルの魔法の範囲外ぎりぎりの場所から嘲笑うかのようにギャッギャッと鳴き、煽りながら飛んでいるのを見るとなんだか腹が立ち、腹いせに何度か氷矢を作り出して撃つも空を自由に飛び回る相手に当たるわけもない。
「フェニ!あの訳わからん魔物を仕留めろ!」
「キュイッ!」
苛立ちが溜まったコウは一泡吹かせるためフェニをハーピー達に向かわせるも危険を察知したのか蜘蛛の子が散るように四方八方へ逃げていってしまった。
こうしてあちらこちらで煽りながら飛んでいたハーピー達を追い払うことに成功したが、溜めさせられたこの苛立ちのぶつけどころを無くしたコウは深いため息をつきながらハーピー達の死骸を回収していくのであった...。
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